そこで、ドイツに続いて、今回は中国について述べてみます。
最近の中国と言えば、まっさきに「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」のことを思い出す方が多いと思います。
では、なぜ中国がAIIBを設立しようと考えたかと言えば、おそらく最も重要な目的は「人民元」の国際化と基軸通貨化を狙いたいからでしょう。
中国には大きな野望があります。言うまでもなく、それは中国をアメリカを凌駕する覇権国にすることです。その手段としては尖閣や西沙・南沙、ひいては沖縄やマリアナ海溝まで(いわゆる「9段線」)を中国領にして、太平洋を「俺たちの海」にすることです。
そんなことを言うと「そんなバカな」という反応をよくされるのですが、沖縄が中国領であるという主張は中国共産党の正規軍隊で、実質的な国軍である人民解放軍がすでに方針としましたから、何百年かかろうとも実現しようとするはずです(もちろん、中国共産党がそれまで存続していればの話ですが)。
もう1つが人民元の国際化=基軸通貨化です。領土拡大に比べれば自国通貨の基軸化ははるかにやりやすいでしょうが、もちろん相対的なことです。
人民元の国際化の動きは、2005年の人民元の切り上げ(=高くすること)から始まりました。
中国の通貨は共産党が管理しています。中国は現在、製造業を中心とした輸出国ですから、自国通貨は安いほうが有利です。それでも通貨切り上げをおこなったのは、1つにはアメリカなどから強い圧力もあったからです。
でも最も大きい理由は、人民元が「国際通貨」として認められておらず、使い勝手が悪かったことで、中国経済に不利になっているのをなんとかしたかったからでしょう
中国が人民元を基軸通貨にしたかったら、各国の銀行が人民元を現金か国債として大量に保有していなければなりません。中国は通貨安もあって莫大な貿易黒字を上げているので、人民元は払われてもあっという間に回収されることになり、各国の手元には残りません。
反対に、アメリカは貿易赤字国なので、各国にドルが回収されずにたまっています。もちろんドルは信用が高いので、そのまま手元に残し決済に使います。「手元に残す(残る)」ということがなければ、基軸通貨になれません。
そういうわけで、中国が本気で人民元を基軸通貨にしようと思えば、まずドルに対して安すぎる人民元を高くすることから始めざるをえません。
しかし、共産党の人民元の切り上げ方は緩やかで、大幅黒字の調整はさほど進みませんでした。いやむしろ、黒字を減らさないように気をつけながら切り上げていたといったほうが実態に近いかもしれません。
では、その場合、中国の人民元切り上げの狙いはどこにあったのでしょうか。おそらく人民元を援助政策に活用することにあったと私は考えています。
中国は価値の上がった人民元を使って、東南アジアやアフリカなど発展途上国へ大規模な援助を始めました。当時の日本の報道では「中国市場の拡大のため」と伝えられたのですが、目的はおそらくもう1つあります。いや、むしろこちらのほうが主目的だったと私は考えています。
それは、各国に人民元を残すためです。
援助によって人民元が外貨準備として積み上がっていけば、人民元は国際決済でも使用されるようになります。1つ1つの国の経済規模は小さくても、数が増えていけばそれなりの規模になっていきます。
そんなあるとき、世界にはアンラッキーですが、こと人民元に限ってはラッキーな出来事が起こります。「リーマンショック」です。
リーマンショックは2008年にアメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻に端を発します。アメリカの銀行はドル不足に陥り、資金確保のためにドルを自行に戻し始めました。そのため世界中でドル不足が起こって、資金がショートして、とくにヨーロッパでは致命的な打撃となりました。
ここで中国は価値が高くなった人民元を使って、ヨーロッパへ資金援助を始めます。ヨーロッパ諸国は喜んでこれを受け入れ、中国から借金をしました。
それまでの中国の援助は発展途上国か、せいぜい中規模以下の新興国に限られていましたが、ヨーロッパ危機を追い風に、ついに先進国にまで拡がりました。そのため、人民元はヨーロッパでも事実上の外貨準備として積み上がることになりました。
また、中国は国内でも途方もない財政出動をおこない、大量の資金を流しこみました。それが功を奏して中国の一人勝ちが続き、輸出が減ったぶんも国内で補い、出しても出しても追いつかないほど、中国国内にはドルや円やユーロが積み上がっていきました。
そもそも、戦後、マーシャルプランなど「援助」という形で自国通貨を国際化したのはアメリカです。そのモデルのとおりに中国は実行したまでです。
そして、人民元の国際化は中国政府の狙いどおりに大成功を収めました。
次の段階として中国は人民元の「基軸通貨化」を目指します。その第一手がアジアインフラ投資銀行(AIIB)です。
なぜこれが人民元の国際通貨化に寄与するかと言えば、1つには、道路や鉄道などのインフラは1回の額が大きく、しかも長期間にわたって資金が必要だからです。
また、危機で中国マネーに頼ったヨーロッパ諸国も、また、中国市場に輸出を頼んでいたドイツも、AIIBの参加をいち早く表明しました。これは、アメリカが頼りにならなくなったとともに、中国マネーが世界を席巻したことが大きいでしょう。
さらに、IMFやアジア開発銀行は典型的な「エリート集団」で、回収のプランを厳密に出さないと借りられません。そういったことが苦手だからこそ先進国になれないかったわけですから、いくら資金を借りたくても「なんでこんな面倒なことをやらなければならないんだ!」という不満はずっとくすぶっていました。中国はそこにも目を付けていたわけです。
アジアはこれから間違いなく発展し、経済規模は倍々ゲームで拡大します。インフラは作っても作っても追いつかない状態になるでしょう。反対に中国は日本以上に少子化=高齢化が進んでいるので、これからの発展は難しくなっていくのが確実です。
もちろん、アジア各国は中国の怖さを知っています。中国から借りてはみたものの、その後、それをネタに領土拡大などされたらたまったものじゃないと考えています。
そこで、中国は「中国の援助」でなく、「国際機関AIIBの援助」にするために、世界中の先進国を参加を呼びかけたのでしょう。
ただし、世界中の国が参加したとしても、そんな莫大な資金を持っているのは今のところ中国だけですから、実質的に「人民元」のばらまきです。しかも、初代代表は中国政府の要職の兼任ですから、まともにフィージビリティスタディ(プロジェクトの実現可能性診断調査)などやるつもりもありません。たんに人民元を長期間にわたってばらまいて、アジアから人民元の基軸通貨化を実現しようとしているだけです。
・・・と、ここまでが私の考える中国の「野望」の真相です。
では、日本は参加すべきかどうかですが、私はどちらもいいと思います。
専門職員もいない国際機関がまともに機能するはずもなく、またいくら参加国が増えようと「参加国の顔を揃えたいだけ」で実態が伴いませんから、今のところAIIBがIMFなみの機関になるとも考えられません。逆に、「AIIBが大きな機関になるかもしれない」というのほうのリスクを避けるため日本が参加してもいいでしょうし、本当にどっちでもいいと思います。
と言うのも、中国はこれから高齢化が進みまた国民の権利意識も高まるので、今のところの「世界の工場」の地位から凋落する可能性が高いからです。そうなると、「中国次第」のAIIBは年を経るごとにまともに機能しなくなるのは確実ですから、「発展」などありえないだろうと私には思えます。
ただ、IMFやアジア開発銀行はこれを奇貨に、これまでのエリート然としたやり方を反省すべきでしょう。バングラデシュのグラミン銀行の成功からもわかるように、援助の真の目的は生活者の不便を補うことでその人たちの仕事の環境を豊かにすることであって、規模を大きくして一部の富裕層だけを豊かにすることではないからです。

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