change the worldのもう1つの意味 | 真面目に脱線話@リンガランド英語塾

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最近、「自分を変える」という言葉を以前よりよく耳にするようになった。



私がこの言葉を意識するようになったきっかけは、なんと言っても『スタンフォードの自分を変える教室』(大和書房刊)という本だ。飛行機に乗る前に空港の書店に積んであり、なんとなく手にとって飛行機で読んだ。行動心理学の意志力研究で確かなところをきちんとまとめた、至って真面目な本だった。



その後、この本がベストセラーになったのだが、何と言ってもタイトルの訴求力のおかげではないだろうか。



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ところで、アメリカではよくchange the worldという言葉を目にする。もちろん「世界を変える」という意味で、最近は「世界を変える」という日本語の勇ましい響きとは違ったニュアンスで使うことがある。



たとえば、「change the worldするために、マイカー通勤を自転車通勤に変えた」といった使い方をする。



日本語に訳すと違和感があるが、この場合、「世界を変えるために(≒to make the present world something different/ to save the earth)」より、to make the world a better placeや、あるいはもっとこぢんまりとto make our places betterが近い。「少しでもいいから自分のいる場所にプラスになることを」ということだろう。



ただし、change the worldのために自分の生活行動を変えているので、結局、変えているのは自分である。世界にプラスになるように自分を変えることが、この場合のchange the worldである。



さて、先述の『自分を変える教室』の原題は、もちろん『Lecture About How to Change Yourself』ではない。『The Willpower Instinct』という「自分を変える」とはほど遠いタイトルである。



直訳すれば『意志力の本能』になる。





なぜ『意志力の本能』が『自分を変える教室』になるのかと聞いたとしたら、おそらくサンデル教授の例のタイトルをもじって、売れるように上手にタイトルづけしたとでも答えることになるだろう。売れたから言うわけではないが、このタイトルを付けた人は本当にセンスがあると感心すると。



ついでに言えば、1992年に大ヒットした映画『氷の微笑』の原題が『Basic Instinct』だった。直訳すれば『基本的本能』になる。これじゃあヒットしなかっただろう。



この映画はシャロン・ストーンの出世作で、彼女は日常生活の一環のように次々と殺人をおかす冷血な美女役である。男が見るとトラウマになりそうなくらい怖い話だ。この場合、「基本的な本能」=「殺人」ということだ。彼女にとって人を殺すことは、食べることや寝ることと同じような「生(なま)の欲求」=「本質的な欲求」であるといったことを表していたと考えられる。



そこから類推するに、『The Willpower Instinct』とは「生の意志力」=「意志力の本質」を表しているのではないだろうか。つまり、「あなたの意志力の本質」だ。しかも、この本は「意志力の本質をつかんで、あなたの意志力をうまく発揮できるようになろう」という趣旨だから、「自分を変える教室」は実は意外と近い。



こうやって見ていくと、日本の「自分を変える」がアメリカでは「意志力を高める」といった具体的なことになり、日本には普通にやられている「町内会」や「ごみの分別」など具体的にやっていることや、「世のため人のため」のようなよく使われる慣用表現が、アメリカに行くとchange the worldと大げさな抽象表現になってしまうのかもしれない。





なぜこのようなことになるのかと言えば、日本においては「自分を変える」が、アメリカにおいてはchange the worldが、まだ成熟しない考え方だからだろう。まだ新しい考え方だからまだ具体的な表現になりにくいというわけだ。



日本人は「世間様に迷惑を掛けない」ということを伝統的に重んじてきたので、実際にどうしたら迷惑を掛けないかを方法論として成熟させている。



それに対してアメリカは、その考え方がやっと最近根づいたので、change the worldといったふわふわした言い方になる。アメリカの場合、ボランティア活動など具体的に困った人を助ける活動が中心だったので、「世のため」と言われてもまだピンと来ない人が多いのではないかと想像している。



逆に言えば、日本人が「自分を変えたい」と思えば、そういったことをずっと考えてきたアメリカから学ぶのが手っ取り早いし、効果もある。上記の『スタンフォードの自分を変える教室』もそうだし、ベストセラーになった『ファスト&スロー』『習慣の力』『GIVE & TAKE―与える人ほど成功する時代』などもそういった文脈と積み重ねの中から生まれたものだろう。



そもそもアメリカで行動心理学がさかんなのは「自分を変える」ということを重視してきた土壌があるからだ。とくにwillpower(motivationやleadershipも含む)の1つの大学に専門家が必ず1人いると言われるほどさかんで、アメリカにおける「自分を変える」ことを常識に近い「良識」として考えてきたかがうかがえるわけである。



そんな中、私がおすすめしたのは何と言っても『世界のトップエリートが絶対に妥協しない小さな習慣』だ。この本を読んだときは、「自分を変える」という観点からは「来るところまで来たな」という感想を持った。



長くなったので、続きは次回に。



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