わからない単語が重要に思える理由 | 真面目に脱線話@リンガランド英語塾

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英語や芸能など、思いついたことを適当に書いていくという、そういうブログです。

今回はHow a Word on the Tip of Your Tongue Can Cloud Your Judgment(もうちょっとでわかりそうなときに判断を誤るわけ)という記事を読んでいきます。When a word feels right on the verge of access, it may bias your decisions(わかりかけているまさにその言葉が正しく思えても、判断を誤ることがある)というサブタイトルがついています(→外部記事リンク)。



筆者はコロラド州立大学教授のAnne M. Cleary教授(心理学博士・女性)です。ほかの記事を読んでもたいへん優秀な方のようで、この記事もたいへん興味深いものです。



ここではon the verge of Xがキー表現になっています。「Xをしかかっていて」という意味です。on the verge of thirtyなら「もうすぐ30歳で」、on the verge of tearsなら「今にも泣き出しそうで」という意味になります。



タイトルのon[at] the tip of one's tongueもこれと似た表現で、「舌の先端に」→「口から出そうになって」→「もうちょっとで言えそうになって」→「わかりかけて」ということです。



年をとるとこの経験が増えます。これを利用して、飲み会なので年齢の近い友人と「北朝鮮の女スパイ金賢姫の日本人名は?」「その夫役は?」「ゴルバチョフの前のソ連の書記長は?」「サハリンから全身やけどで日本に手術搬送された少年の名前は?」などと、なかなか思い出せないことを思い出すゲームをやったりします。





(一応、答えは、蜂谷真由美、蜂谷真一、チェルネンコ、コンスタンチン君です。なぜ君をつけるのか?)



語彙はさほど難しくないのですが、研究者に独特のわかりにくい表現がいくつかあり、決して読みやすい部類ではありません。ただ、趣旨は一貫しているので、骨子さえつかめればなんとか趣旨はとれると思います。さて、冒頭から。



Imagine that you witness a crime, and are later pressed to remember everything that you can about the event. You remember that the vehicle involved was a blue truck and that it had something written on the side. You cannot remember what was written on the side, and although the word eludes you, you feel as if the word is right there on the verge of access and it might come to you at any moment. You are having what is called a "tip-of-the-tongue" experience for the word; It feels as if it is right there on the tip of your tongue, about to be accessed, but hasn't quite made its way to your full awareness yet.

「あなたがある犯罪を目撃して、あとでその事件についてできる限りすべて思い出さなければならなくなったとします。現場にいた車は青いトラックで横に何か書いてあったという記憶がありますが、実際に何が書いてあったかは思い出せません。その言葉にひっかかるものがあったのにです。つまり、もうちょっとでその言葉が思い出せて、今にでもわかりそうに感じているわけです。あなたはいわゆる「まさに口から出かかっている」という言葉の状態にあります。まさに口先にあり、もうちょっとで出てくるのに、完全にわかるにまだいあっていないという状態です」



研究者や専門家には、物事を正確に書こうとして、このように同じことを何度も何度も言い換える癖のある人がけっこういます。ようするに、「思い出せそうで思い出せないもどかしい状態」です。



日本語ではあまりこういった書き方をする人は多くありません。ただ、英語を読む際は慣れるしかありません。



We have all had this experience at one time or another. Such tip-of-the-tongue experiences can be frustrating-the word seems like it is in our memory but is somehow just beyond our reach. And, unfortunately, the experience becomes more frequent as we age.

「誰もがこのことはいくどとなく経験しているでしょう。こういったもうちょっとでわかりそうという経験はいらいらの元になります。その言葉は知っているはずなのに、なかなか出てきません。また、残念なことに、年をとるごとにこの経験の頻度は増えていきます」




すでに述べたように、年を取ると「知っていると確信しているのに、言葉が出てこない」ということがよく起こります(たとえば、おととし女子柔道の代表監督を辞任した監督の名前は覚えていますか?→過去ログ)。





But imagine that you are pressed to remember anything about the word that you can possibly conjure up from memory. Was it light or dark? What did the font look like? Was the word big or small? Can you think of the word's first letter? Was it a long or a short word? Was it common or rare? Can you think of anything at all?

「ところで、あなたが記憶から呼び起こせそうな言葉について何か思い出さねばならないとしましょう。それは薄かったでしょうか、濃かったでしょうか。そのフォントはどういった感じだったでしょうか。頭文字は大文字だったでしょうか、小文字だったでしょうか。その言葉の最初の文字が思い出せるでしょうか。長い言葉だったでしょうか、短いものだったでしょうか。一般的な言葉だったでしょうか、珍しい言葉だったでしょうか。とにかく何か思い出せるものがあるでしょうか」



パラグラフの最初にbutを使うというのも、さほど珍しくなくなりました(日本語だとOKですが、英語では本来はNGとされていました)。英語のbutは英語の「しかし」より機能が限定されていたのですが、だいぶ拡がってきているのでしょう。訳も一工夫必要な場合もありそうです。



ところで、「記憶の曖昧さ」と心理学で測るのはわりと大変だったりします。というのはAについては「うろ覚え度」が1だとか、Bについては3だとかのように段階がつけにくいからです。そこで、「色」「大きさ」などある程度差が明確にしやすい対象を使うことがよくあります。



この研究の場合は文字のフォント(色も含む)です。



An abundance of research over the years has suggested that when in a tip-of-the-tongue state for a word, people often have access to some of the word's attributes (like the first letter of the word or what it sounds like). So it is possible that in the above scenario, you would be able to think of some things about the word even though you could not retrieve the word itself.

「数年間にわたる膨大な調査から見えてきたのは、言葉が見つかりそうな状況のときに、人々は(頭文字や言葉の響きなど)その言葉の属性のどこかにアクセスしていることが多いということです。だから、上記のシナリオでは、言葉そのものを引き出せないとしても、その言葉に関わる何かを思い出せている可能性があります」



つまり、対象そのものは思い出せなくても、その対象の特徴を思い出せている可能性があるということです。「パンダ」が思い出せなくて、「あの白くて目の周りが黒い熊みたいなやつ」とはわかっているなんて感じでしょうか。



Of course, you could also end up wrong in the bits and pieces that you think up (perhaps even hilariously wrong, as described in this blog post about witnessing a hit-and-run and then trying to remember what was written on the side of the bus involved).

「もちろん、自分がひねり出した寄せ集めの中で単なる間違いで終わってしまうということもあるでしょう(以前、ブログでも書いたように、ひき逃げをも目撃して、バスの横に書かれていたことを思い出そうしたときのように派手に間違うことすらあるでしょう)



bits and piecesは適当に寄せ集めてごちゃごちゃになったもののことです。この場合は、なんとか思い出せている対象の属性のことでしょう。



For example, have you ever felt certain during a tip-of-the-tongue state that you knew the first letter of the word, only to find out later that you were wrong? What leads to this feeling of knowing something about the unretrieved information, but being wrong about it?

「たとえば、頭文字はわかっているといったわかりかけの状態にあって、間違いないと思いこんでいたのに、結局は間違っていたとあとでわかるといった経験がこれまでなかったでしょうか。この思い出せない情報について何か知っている感じがするに、でも実は間違っているという状態に導くものは何でしょうか」



いろんなことを思い出してみたものの結局は間違っていた、「知っているつもりでいたけれど、実は知らなかった」という場合です。もしそんなことが起こるなら、その原因は何だろうというわけです。



では、ここからが本論です(長い!)。



In our lab, we recently asked if the very feeling of being in a tip-of-the-tongue state can cause people to erroneously make certain judgments about the characteristics of an inaccessible word. We wanted to know: Can a tip-of-the-tongue feeling bias people toward thinking that an unretrieved word has certain qualities or characteristics, even when it does not?

「私たちの研究室では、最近、このまさにわかりかけている気がする状態のために、思い出せなかった言葉の特徴について、人が間違った判断をするとことがあるかどうかを聞いてみました。わかりかけている気がすることによって、思い出せなかった言葉がある種の性質や特徴を持っていると誤った思いこみにゆがめることがあるのでしょうか」



最後の一文に、もう1つのキーフレーズan unretrieved wordが出てきます。unretrievedの元になるretrieveは「引き出す、取り戻す」の意味で、情報を「検索する」の意味でも使います。



英語学習者にとってその語彙が使えるものかどうかは、その語彙の検索時間(retrieval time)にかかっています。「あれ、あの単語なんだっけ?」と時間がかかれば、それは「使える語彙」ではありません。



つまり、unretrieved wordとは「検索したけど、ヒットしない言葉」のことです。





We found evidence that it can. In our study (recently published ahead of print in Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory and Cognition) we found that the tip-of-the-tongue feeling biased people toward thinking that the unretrieved word had attributes that would be characteristic of more easily accessible words. These judged attributes included font characteristics: When experiencing a tip-of-the-tongue state for a word that they could not retrieve from memory, people were biased to think that the word was recently seen in a darker, clearer font, even when it was not; they were also biased to think that it was recently seen in a larger font, even when it was not. Tip-of-the-tongue states also biased people toward thinking that the unretrieved word was a higher frequency word in the language, even when that wasn't the case.

「私たちはその可能性がある証拠となるものを見つけました。(『Experimental Psychology』誌の最新刊に先んじて掲載されたLearning, Memory and Cognitionという論文にある)私たちの研究では、わかりかけている気がすることによって、その思い出せなかった言葉が、すぐ思い出せる言葉にありそうな属性を持っていたという思いこみを促すことを発見したのです。こういった思いこみには、その言葉が書かれたフォントの特徴も含まれていました。思い出せない言葉がわかりかけているという状態になっているときに、その文字のフォントが実際より濃くはっきりしたフォントだったという思いこみに拍車を掛けました。さらには、見たばかりなのに実際より大きなフォントだったという思いこみに拍車を掛けました。また、わかりかけの状態のために、思い出せなかったその言葉が、実際よりよく使われる言葉であるという思いこみに拍車を掛けました」



私も塾で教えていたとき、「知らない単語はキーワードに見える。でも、たいていはそうじゃないから、気をつけよう」と繰り返して注意していました。



受験生が英語も読解問題をやっていると、英文の中に「この単語、見たことがあるけどわからない」ということがよく起こります。どれが重要単語に見えて、そこで引っかかってしまいがちです。



しかし、その知っているつもりの単語の意味をいざ調べると、知らない意味だったいうことがよく起こります。そのために時間をロスしがちです。



These biases that we discovered are such that the feeling of being in a tip-of-the-tongue state leads people to infer that the unretrieved information has qualities that tend to characterize items that are easier to access from memory. High frequency words are easier to think of than low frequency words and thus are more accessible, and we found that being in a tip-of-the-tongue state biased people toward thinking that the unretrieved word was likely to be higher in frequency. Likewise, words that are easier to see are also easier to access because it is easier to process them during reading, and we found that being in a tip-of-the-tongue state biased people toward thinking that the unretrieved word was last seen in either a darker, clearer font or a larger font.

「私たちが発見したこれらのバイアスは、わかりかけている気がするという気持ちのために人にこんな推測を導きます。思い出せない情報ほど、思い出しやすい要素があるはずだと特徴づけてしまう傾向があるということです。よく使う言葉はあまり使わない言葉より思い出しやすいので、記憶へのアクセスが簡単です。そして、わかりかけている気がする状態だと、思い出せなかった言葉がよく使う言葉であるといった思いこみに拍車を掛けるものであることを発見しました。同様に、よく見る言葉が思い出すのも簡単なものは、読んでいる最中に処理するのが簡単です。そして、わかりかけた状態にあると、引き出せなかった言葉は、濃くはっきりしたフォントか大きなフォントだったという思いこみに拍車を掛けるのです」



よく知っている言葉はその属性など考えずに処理できますが、知らない言葉は、「あれ、この言葉はよく知っているはずだ」と、属性まで強調してしまうということです。先に出した「わからない単語はキーワードに見える現象」もこのことから生じているのでしょう。





As far as why tip-of-the-tongue states lead to these biases, it may be because the feeling of being on the verge of accessing a word by itself implies that the unretrieved word is in a heightened state of accessibility relative to an unretrieved word that does not feel on the verge of access. This may lead people to infer from the feeling of being in a tip-of-the-tongue state that the unretrieved word has attributes that are characteristic of highly accessible items, such as high font clarity, high word frequency, or other qualities consistent with greater accessibility.

「わかりかけている気がする状態がこういったバイアスを導く理由としてここまででわかっているのは、その言葉自体がわかりそうだと感じることは、思い出せる気もしないようなわからない言葉に比べると、思い出せそうな状態が強調されるということを示していることになります。このことは、わかりかけている気になっていることを元にすれば、次の推論を導くことが可能です。それは、思い出せない言葉が持つ属性は、わかりやすいフォントであったり、使用頻度であったり、わかりやすさを高める他の性質などのように、わかりやすさをかなり高める要素に特徴づけられてしまう、ということです」




「知っているはずなのにわからない」と思うと、大事でないとかあまり使わない言葉だとと思うのではなく、反対に頻度も重要度も過大評価してしまうというわけです。



Overall, these findings suggest that the tip-of-the-tongue feeling is a biasing factor in people's decision-making during retrieval failure. Basically, when you fail to find the information in memory that you are looking for, having a feeling that it is on the tip of your tongue is something that you have to go on in making a decision, and it may be better than having nothing to go on. The downside of this is that you may infer things about the unretrieved information that are incorrect because the tip-of-the-tongue feeling can bias you toward inferring certain qualities or characteristics of the unretrieved information that are not necessarily accurate. So, the next time you have a feeling that something is on the tip of your tongue but not quite within your reach yet, be wary of making judgments about the information!

「まとめると、こういった発見から示唆されるのは、わかりかけている気がすることが、思い出せないときに人の意志決定におけるバイアスの要素になるということです。基本的には、検索中の記憶情報が探し当てられないときにわかりかけている気がするのは、意志決定において続けざるをえないことがわかりかけていると思いこむことであっても、続けるきっかけが何もないよりましなのかもしれません。その裏で、間違っているかもしれない情報について何かを推論しているかもしれません。それはわかりかけている気がすることが多い出せない情報の間違った性質や特徴を誤って推論するほうにつながっていることがあるからです。だから、次に何かがわかりかけているのにまだちゃんと思い出せそうにないという気がしたら、その情報を判断する場合は注意してください」



前のパラグラフで「知っているのに思い出せないと、その言葉を過大評価する」と述べられました。その結果、バイアスがかかってその言葉に関する認識が間違ってしまうというわけです。



ただ、そうやって過大評価するからこそ、「がんばって思い出そう」という気になるわけで、記憶を促進する働きはしているのだろうと最後に述べられています。



この記事を読んで、塾講師の時に「思い出せない単語はキーワードに見えるけど、そうじゃないことが多い」と言ったことはおそらく正しかったなんだとほっとした次第です。



僭越ながら大学受験生やTOEIC受験者へのアドバイスを1つ。



明らかに知っているとわかっている単語を除くと、「知っているはず」と思っているその単語の意味が、全く違った方向であることが多々あります。つまり、「知っているはずの単語」を思い出そうとすると時間のロスになることがよくあります。


でも、知らない単語が重要に思えたり気になったりするのは自然な人間心理です。そこで、時間の限られたテストでは、そういった単語は意識的に気にしない、気になるならなるべく時間を割かないようにするといいと思います。


また、逆に勉強に使える時間がたっぷりあるのであれば、その単語の意味を推測したり思い出そうとしたりすることは、記憶の定着に役立ちます。存分に気にしていいでしょう。



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