佐村河内守ゴースト問題について | 真面目に脱線話@リンガランド英語塾

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テレビを見ていて、「久しぶりに面白いなあ」と思った。例の佐村河内守氏のゴースト問題である。



私が見たのはゴーストライターをやっていた音楽講師の会見である。独断でそのときに感じたまま述べると、この方はとても倫理的で正直な人に見えた。その人が佐村河内氏がいかに悪い人間かをとつとつと語っていくのである。この事件の奥深い暗闇が垣間見えて、ぞくぞくしてしまった。



佐村河内氏のことを全く知らないので彼の音楽も自分語りも講評はできないが、大学講師の語っていることは真実だろうと感じる。



耳が聞こえず耳鳴りと闘いながら壮大な音楽を紡いできたとされる「現代のベートーベン」は、実は耳は聞こえており、音楽の才能はなく、実作業を大学講師に任せてきて強大なカリスマを演じてきた「大ペテン師」だったのだろう。





問題は大学講師がなぜそれほど献身的に佐村河内氏に尽くしてきたのかである。佐村河内氏本人に比べればわずかの見返りで、18年間、ただ一方的に尽くすだけだった。いったいどういうことか。



会見の印象では、「佐村河内氏に惚れていたから」というのが、とりあえずの私の回答である。



男性同士の恋愛関係があったとまでは思わないが、それでも大学講師側からの一方的に恋愛感情に近いものをはあったのではないか。それが終わったのは、大学講師に手に負えないほど佐村河内氏が本質的な「悪」だったからだろう。



それほどまで悪い男を愛することがあるのかと思う向きもあるかもしれないが、昔から言われるように悪い男ほどなぜかモテるものである。「なぜか」とつくのは、惚れた本人にしかその理由がわからないうえに、その本人ですら理由を明確に語れないからだ。



もちろん理由はある。



悪い男とは現実という型にはまらず、感じたとおり、思うがまま、願望に従って、あかたもそれが実現したかのように騙れる「自由な男」である。真面目な人たちが現実に汲汲している傍らで、悪い男は現実など見ないで自由に振る舞う。その型破りな奔放さが魅力になる。



とくに、幼い頃から型にはまることを求められ続けた女性たちにとって、「悪い男」は魅力的に見えるものである。「良い子」として育てられた女性たちにとって、長らく抑圧してきた「願望の自分」でもある。型にはまらず、罪悪感なく悪いことを平然とこなし、それでもたくさんの人から賞賛されるような男は、それだけでセクシーである。




だから大学講師が佐村河内氏に魅力を感じてもおかしいとは思わない。悪さゆえに「良い子」であった音楽講師は、彼に魅力を感じていたのだろうか。とくに佐村河内氏の場合、その外見的なワイルドさといくつもの「伝説」によって、その願望をいくつも叶えていった。それは型にはまった人たちには魔法のようにも見えてくる。





大学講師には自分の作った曲も、「佐村河内ブランド」になってから自分のものに思えなかったのかもしれない。実際、そこまで売れたのは佐村河内マジックによるもので、彼はマジックの一部を担わされたに過ぎない。真面目な彼は自分の作ったものがそれほど巨大になっていくことに、むしろ恍惚となっていたのではないか。



彼は佐村河内氏と一体となって世界から賞賛を受け続けたのである。それを共同作業と言ってもいいし、共犯関係と言ってもいい。恋愛関係ではないが、自分なしで佐村河内守という壮大な虚構が成立しないという意味で、大学講師にとって代作は彼と深くつながる手段だった。



芸術とは虚構である。普通の人なら型にはまったものでしか伝えられないものを、大きな虚構によって感動にまで押し上げることである。そう言った意味で、大学講師が作った音より、佐村河内守という人物そのものほうがかるかに芸術だった。



ただ、その芸術は倫理の枠を壊した悪の上に成り立つ共同幻想である。悪が隠蔽されつづけるかぎりは成立するが、それが露呈した時点ですべてが瓦解してしまう。



この事件を見て思ったのは、「自分が映画監督なら、これを題材にすぐに台本を書いて映画を撮ろうとするだろう」ということだ。それくらいこの事件は魅力に溢れている。



とくに魅力的なのは、彼にだまされたのが日本を代表する大マスコミや評論家であったことだ。佐村河内守という悪に嫌悪しながら、どこか痛快さも感じるのは、普段一般人に対して好き勝手やっているマスコミをいつも簡単に手球にとって自分の虚構の一装置にしてしまったためではないだろうか。





世間では「詐欺罪だ」などと騒がれているが、おそらく罪に問われることはないと思う。と言うのも、佐村河内守という偽りの巨人を作り上げたのは、今は彼をバッシングしている当のマスコミだからだ。彼が罪に問われれば、そのチンケな嘘を巨大なものに作り上げてしまったマスコミも同罪である。



わざわざ自分たちを自ら罰するように誘導することはないだろう。懲りない彼らはまた次の物語を探しているに違いない。



私が映画監督ならまよわずこの物語は映画化に奔走するだろう。佐村河内氏の役は佐々木蔵之介さんに、大学講師の役は滝藤賢一さんにやってもらいたいところだ。



私がメガホンをとるなら、この物語は「現代のベートーベン」という虚構の盛衰を描いた「現代の平家物語」を目指した「芸術作品」になるかもしれない。脚本書きますので、ぜひ(笑)。



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