今回は、この補足として倒置について、また私見を交えて述べてみたい。
とりあえず例文から。
(1a) I got a small box from her. Inside the box I found a small doll with a note.
「彼女が小さな箱をくれた。箱の中にはメモと一緒に小さな人形があった」
後ろの文(=Inside the box I…)では、Inside the boxという場所を示す副詞句が前に出ている。
これは文法で言う倒置ではないが、場所を示す副詞句は後ろに置くのが基本である。
これは「彼女が小さな箱をくれた」→「その箱の中には・・・」と、前の情報から1つに焦点を当てられるので、聞き手の思考の流れに合わせやすいからである。
前の文I got a small box from herには、a small box以外に I と got と from her という3つの要素がある。次の文がInside the boxで始まっていると、聞き手もそれに合わせてa small boxに注目するので、すんなりと次につながるわけである。
もちろん、次の文がInside the boxで始まっていなくても、焦点となる要素はa small boxだろうとあたりがつけられる。ようは話し手の「サービス精神」だと言っていいかもしれない。
もう1つ例を見てみよう。思い出を語っている文章からのリライトで、後ろの文が倒置になっている。
(2) All the boys and girls sat together behind the desks. In front of me sat a girl in a pink skirt.
「男子も女子もみんな机の後ろに座った。私の前には、ピンクのスカートの女の子が座った」
In front of meという場所の副詞句が前に置かれているのは(1)と同じである。ただし、me「私」は前文には出てきていない。
情報としてなくても、自分が実質的に「観察者」として登場している。だから、これも前に出てきた複数の要素から1つに焦点を当てたものである。とくにこの場合は「教室全体」→「自分の前」と、カメラをズームアップ(=zoom in)するように視点を絞りこんでいるイメージである。
このように、倒置には、前に関連づけ、どれかの要素を取り上げて焦点化するという機能があるのではないだろうか。
これは文法書に載っている典型的な「倒置」でも言える。
(3a) He threw me up against the wall. Never had I been treated so roughly.
「彼は私をぐいっと持ち上げ壁に押しつけた。それまでそんなふうに乱暴に扱われたことはなかった」
あとの文が否定語の倒置になっている。「否定語が前に出て、後ろが疑問文の語順になる」などと解説されているものである。
参考までに、後ろを本来の語順に戻してみよう。
(3b) He threw me up against the wall. I never had been treated so roughly.
2つの文のつながりが切れて、(3a)よりたんたんと説明しているような印象になる。
では、neverを倒置した類例を並べてみよう。
(4) It was a great moment. Never had I experienced such a sense of power.
「それはすばらしい瞬間だった。私はそんなふうに力強さを感じたことはなかった」
(5) She said good-bye to me. Never did I think we ended like that.
「彼女は私にさよならを言った。私たちがそんなふうに終わるとは思ってもみなかった」
(6) I will do my chore. Never do I neglect my chore.
「やるべきことをやろう。私がやるべきことを怠ることは絶対にないのだ」
(3a)と(4)(5)には明らかに共通したところがある。
(3a)は「そんなふうに扱われたことはなかった」→「そのように扱われたのは初めてだった」、(4)「そんなふうに感じたことはなかった」→「そう感じたのは初めてだった」、(5)「そうは思わなかった」→「そう思うのは初めてだった」と、その出来事が初めてであることを示している点である。
つまり、前に関連づけて「それが生まれて初めてだ」とあとから説明している形になっている点だ。
(6)の倒置はそれらとは違うものの、前に関連づけて「それは私が決して怠ることではない」とあとから説明している点はやはり同じである。
倒置に「前のものを焦点化する」という機能があれば、前に関連づけて、「そのときまで決してなかった」→「それが初めてだった」、「それが決していない」→「それは例外のないことである」の意味になるが当然だ。
ここまでを踏まえて、最後にthere構文についてちょっとだけ触れておきたい。
(7a) The magazine is on the table.
「例の雑誌はテーブルの上にある」
(8a) There are two magazines on the table.
「テーブルには2冊の雑誌がある」
どちらもbe動詞が「ある、存在する」の意味で、「どこにあるか」を述べた文だが、「何が」の意味になる主語の位置が違う。(7a)は先頭で、(8a)は動詞のあと。
この2つの「雑誌」は情報として見ると違っている。(7a)の「雑誌」はすでに話題になっている(=旧情報)のに対して、(8a)の「雑誌」はまだ話題になっていない(=新情報)。
すでに話題になっていてそのことに焦点化されるのであれば先頭にあるのが自然なことはわかる。それは(7b) The magazine you want to read is on the table.(あなたが読みたがっている雑誌はテーブルの上にある)などと書き足せばわかりやすい。
では、(8a)のthere構文はどう考えればいいのだろうか。それは、次の文を見るとすこしわかりやすいかもしれない。
(8b) Two magazines are on the table.
このように、いきなり「2冊の雑誌が・・・」と言われると、唐突な感じがするだろう。
この唐突さは、これまで話題になったことがないことをいきなり最初に言われたことに起因する。
(9) I find two magazines on the table./ You'll find two magazines on the table.
findを使うと主語はI/WeやYouが使えるので、唐突さは避けられる。
このように、英語では「最初に何を述べるか」はわりと重要で、その点を考慮しないで英語を書いていくと、英語話者には違和感のある文になることがある。前回の強調構文は使いたくなければ使わなくてもかわないと思うが、「英文の最初」はたしょうは意識すべきではないだろうか。
こういったことは「文法の次」の問題だが、だからこそ普段英語を読むときから意識して身につけたほうがいいだろう。


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とりあえず例文から。
(1a) I got a small box from her. Inside the box I found a small doll with a note.
「彼女が小さな箱をくれた。箱の中にはメモと一緒に小さな人形があった」
後ろの文(=Inside the box I…)では、Inside the boxという場所を示す副詞句が前に出ている。
これは文法で言う倒置ではないが、場所を示す副詞句は後ろに置くのが基本である。
だが、実際には場所を示す副詞句が先頭に置かれる文はよく目にする。
では、なぜInside the boxが前に置かれているのか。試しに普通の語順にしてみよう。
(1b) I got a small box from her. I found a small doll with a note inside the box.
最後までながめても大きな差は感じないかもしれないが、(1a)をInside the boxでいったん止めると、(1b)よりスムーズにつながる印象がある。
では、なぜInside the boxが前に置かれているのか。試しに普通の語順にしてみよう。
(1b) I got a small box from her. I found a small doll with a note inside the box.
最後までながめても大きな差は感じないかもしれないが、(1a)をInside the boxでいったん止めると、(1b)よりスムーズにつながる印象がある。
これは「彼女が小さな箱をくれた」→「その箱の中には・・・」と、前の情報から1つに焦点を当てられるので、聞き手の思考の流れに合わせやすいからである。
前の文I got a small box from herには、a small box以外に I と got と from her という3つの要素がある。次の文がInside the boxで始まっていると、聞き手もそれに合わせてa small boxに注目するので、すんなりと次につながるわけである。
もちろん、次の文がInside the boxで始まっていなくても、焦点となる要素はa small boxだろうとあたりがつけられる。ようは話し手の「サービス精神」だと言っていいかもしれない。
もう1つ例を見てみよう。思い出を語っている文章からのリライトで、後ろの文が倒置になっている。
(2) All the boys and girls sat together behind the desks. In front of me sat a girl in a pink skirt.
「男子も女子もみんな机の後ろに座った。私の前には、ピンクのスカートの女の子が座った」
In front of meという場所の副詞句が前に置かれているのは(1)と同じである。ただし、me「私」は前文には出てきていない。
情報としてなくても、自分が実質的に「観察者」として登場している。だから、これも前に出てきた複数の要素から1つに焦点を当てたものである。とくにこの場合は「教室全体」→「自分の前」と、カメラをズームアップ(=zoom in)するように視点を絞りこんでいるイメージである。
このように、倒置には、前に関連づけ、どれかの要素を取り上げて焦点化するという機能があるのではないだろうか。
これは文法書に載っている典型的な「倒置」でも言える。
(3a) He threw me up against the wall. Never had I been treated so roughly.
「彼は私をぐいっと持ち上げ壁に押しつけた。それまでそんなふうに乱暴に扱われたことはなかった」
あとの文が否定語の倒置になっている。「否定語が前に出て、後ろが疑問文の語順になる」などと解説されているものである。
参考までに、後ろを本来の語順に戻してみよう。
(3b) He threw me up against the wall. I never had been treated so roughly.
2つの文のつながりが切れて、(3a)よりたんたんと説明しているような印象になる。
では、neverを倒置した類例を並べてみよう。
(4) It was a great moment. Never had I experienced such a sense of power.
「それはすばらしい瞬間だった。私はそんなふうに力強さを感じたことはなかった」
(5) She said good-bye to me. Never did I think we ended like that.
「彼女は私にさよならを言った。私たちがそんなふうに終わるとは思ってもみなかった」
(6) I will do my chore. Never do I neglect my chore.
「やるべきことをやろう。私がやるべきことを怠ることは絶対にないのだ」
(3a)と(4)(5)には明らかに共通したところがある。
(3a)は「そんなふうに扱われたことはなかった」→「そのように扱われたのは初めてだった」、(4)「そんなふうに感じたことはなかった」→「そう感じたのは初めてだった」、(5)「そうは思わなかった」→「そう思うのは初めてだった」と、その出来事が初めてであることを示している点である。
つまり、前に関連づけて「それが生まれて初めてだ」とあとから説明している形になっている点だ。
(6)の倒置はそれらとは違うものの、前に関連づけて「それは私が決して怠ることではない」とあとから説明している点はやはり同じである。
倒置に「前のものを焦点化する」という機能があれば、前に関連づけて、「そのときまで決してなかった」→「それが初めてだった」、「それが決していない」→「それは例外のないことである」の意味になるが当然だ。
ここまでを踏まえて、最後にthere構文についてちょっとだけ触れておきたい。
(7a) The magazine is on the table.
「例の雑誌はテーブルの上にある」
(8a) There are two magazines on the table.
「テーブルには2冊の雑誌がある」
どちらもbe動詞が「ある、存在する」の意味で、「どこにあるか」を述べた文だが、「何が」の意味になる主語の位置が違う。(7a)は先頭で、(8a)は動詞のあと。
この2つの「雑誌」は情報として見ると違っている。(7a)の「雑誌」はすでに話題になっている(=旧情報)のに対して、(8a)の「雑誌」はまだ話題になっていない(=新情報)。
すでに話題になっていてそのことに焦点化されるのであれば先頭にあるのが自然なことはわかる。それは(7b) The magazine you want to read is on the table.(あなたが読みたがっている雑誌はテーブルの上にある)などと書き足せばわかりやすい。
では、(8a)のthere構文はどう考えればいいのだろうか。それは、次の文を見るとすこしわかりやすいかもしれない。
(8b) Two magazines are on the table.
このように、いきなり「2冊の雑誌が・・・」と言われると、唐突な感じがするだろう。
この唐突さは、これまで話題になったことがないことをいきなり最初に言われたことに起因する。
The magazine …なら、theがついていることからは聞き手は「あの例の雑誌だな。それがどうしたんだろう?」などと聞く準備に入れるが、(8b)はそういったことができず、聞き手に余計な負担をかけるのである。
通常、文の最初に来るのは「言われてわかること」である。できれば「これから述べることを、前に関連づけて焦点化する文」だとさらによい。(8b)はその逆だから、唐突に感じるのも当然である。
先にThere areと言うと、「これからXがYという場所に存在することについて述べる」というのを予告する効果が出る。このthereには具体的な意味はないが、「あるものがある場所に存在することを述べるぞ」というイントロになる。
ついでながら、私は次のように逃げることがある。
通常、文の最初に来るのは「言われてわかること」である。できれば「これから述べることを、前に関連づけて焦点化する文」だとさらによい。(8b)はその逆だから、唐突に感じるのも当然である。
先にThere areと言うと、「これからXがYという場所に存在することについて述べる」というのを予告する効果が出る。このthereには具体的な意味はないが、「あるものがある場所に存在することを述べるぞ」というイントロになる。
ついでながら、私は次のように逃げることがある。
(9) I find two magazines on the table./ You'll find two magazines on the table.
findを使うと主語はI/WeやYouが使えるので、唐突さは避けられる。
このように、英語では「最初に何を述べるか」はわりと重要で、その点を考慮しないで英語を書いていくと、英語話者には違和感のある文になることがある。前回の強調構文は使いたくなければ使わなくてもかわないと思うが、「英文の最初」はたしょうは意識すべきではないだろうか。
こういったことは「文法の次」の問題だが、だからこそ普段英語を読むときから意識して身につけたほうがいいだろう。

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