タイトルはSystematic Inventive Thinkingです。そのままでわかりますが、あえて説明的に訳せば「手順を踏んだ発明的思考」とでもなるでしょうか。サブタイトルはCreativity happens inside the box using five simple techniques.(クリエイティビティは5つの簡単なテクニックを使った枠の中で生まれる)となっています(→外部記事リンク)。
本ブログで扱ってきたクリエイティブ・シンキングのメソッドとは違ったアプローチをしています。
筆者は『Inside the Box: A Proven System of Creativity for Breakthrough Results』(共著)の著者でシンシナティ大学准教授のDrew Boyd氏です。著書と記事のサブタイトルになっているInside the Boxがキーワードのようです。
では、さっそく読んでみましょう。
The traditional view of creativity is that you need to think "outside the box" to be truly original and innovative. Start with the problem and then brainstorm without restraint. Go wild making analogies to things that have nothing to do with your product, service, or process. Stretch as far afield as possible and you'll come up with a breakthrough idea.
「クリエイティビティの伝統的な見解では、本当にオリジナルで革新的であるためには『枠の外』で考える必要があるとされている。まずその問題を出発点に、制限を設けないブレーンストーミングを考える。あなたが扱う製品やサービスやプロセスとは関係のないことへのアナロジー作りに取り組む。できるだけ遠くまで拡げて、ブレークスルーに達する着想を得るといったところだ」
これは基本的にクリエイティブ・シンキングの方法を述べたものです。日本ではクリエイティブ・シンキングの考え方自体がほとんど普及しておりませんが、本記事はクリエイティブ・シンキングがすでに常識になっている前提で書かれています。
慣れていないと「何の話?」と感じるでしょうが、アメリカなどで第一線に立っている人たちは「あれか」とわかります。本ブログを読んで下さっていて、すでに「あれだな」とわかった方は、すでにこの点で最先端に立っていると考えていただいてかまわないと思います。
いずれにしても、従来の考え方のクリエイティブ・シンキングでは、筆者の言うように「枠の中にはまったままだから独創的なアイデアが出ないのだ、枠の外に出よ」というのが基本的な姿勢です。
驚いたことに筆者はそれが逆だと主張します。
Our comprehensive study of the most successful innovations, and our practice with some of the most successful companies in the world, proves just the opposite. More innovation-and better and quicker innovation-happens when you (1) work inside your familiar world, (2) generate solutions independent of any specific problem, and (3) use just five simple techniques to generate those solutions-subtraction, unification, multiplication, dependency, and division.
「私たちが関わった最も成功したイノベーションの包括的な研究や世界で最も成功した会社に対する調査では、全く反対である。最も革新的な、つまりより良くより速やかな革新が起こるのは、(1) 慣れ親しんだ世界で働いているとき、(2) いかなる特定の問題とは独立した解決法が生じたとき、(3) こういった解決法を生み出すたった5つの簡単なテクニックを使ったときだ。そのテクニックとは引き算、統一化、かけ算、補完、割り引きの5つである」
筆者は「枠」の話をとりあえず置いておき、クリエイティブ・シンキングに必要な5つのテクニックを提示します。
These techniques form the basis of the innovation method called Systematic Inventive Thinking (SIT). In the twenty years since its inception, the method has been expanded to cover a wide range of innovation-related phenomena in a variety of contexts. The techniques are based on patterns used by mankind for thousands of years to create new solutions. These patterns are embedded into the products and services you see around you almost like the DNA of a product or service. SIT allows you to extract those patterns and reapply to other things.
「これらのテクニックがSystematic Inventive Thinking(SIT)と呼ばれるイノベーション法の基礎を形作る。それが生まれて20年後に、この方法論は様々な文脈においてイノベーションに関わる幅広い現象をカバーするまでに拡大している。このテクニックは新しい問題解決を作るために何千年も人類が使ってきたパターンに基づいている。これらのパターンはあなたの周りにある製品やサービスに埋め込まれて、それはまるで製品やサービスのDNAにそっくりである。SITによってこれらのパターンを引き出し、ほかのことに応用することも可能である」
実はこのテクニックは人類が普遍的に使ってきたものだと述べます。しかも、そのヒントはあなたが関わっている製品やサービスの中にまるでDNAのように組み込まれているのだとまで述べています。つまり、そのDNAを見つければいいだけだよと暗示しているわけです。
では、そのための5つのテクニックを1つ1つ見ていきましょう。
1.Subtraction(引き算)
革新的な製品やサービスには省くべきものがあります。とくにそれまでは必須だと考えられてきたものが該当します。たとえばソニーのウォークマンは従来の製品から「録音」を引き算しました。
2.Task Unification(作業の一体化)
革新的な製品やサービスには1つの構成要素の中に「一体化」すべき作業があります。とくに従来は無関係だと考えられていた作業が該当します。たとえば、クラウドによって大人数が作業を共有しているなどの例があります。
3. Multiplication(かけ算)
革新的な製品やサービスには全体を大きく変えるような要素が加えられていることがあります。それはもともと不要だとか重複するなどを考えられてきたものであることがよくあります。たとえば、写真撮影で赤目を防ぐ「ダブルフラッシュ」がそれに該当します。
4.Division(分割)
革新的な製品やサービスは、構成要素を分けられたものがある場合があります。それは従来は生産性があるとも効果があるとも考えられていなかったものである場合がよくあります。たとえば、冷蔵庫の引き出し部分だけを生かした、システムキッチンに組み込まれた冷蔵引き出し(cooling drawer)がそれに該当します。
5.Attribute Dependency(属性補完)
革新的な製品やサービスには2つの属性をお互いに補完したものが含まれることがあります。それは従来は無関係だと思われたものであることがよくあります。ある属性が変わると、別の属性が変わるといったものです。たとえば、まぶしくなると暗さが増すサングラスがそれに該当します。
以上の5つです。実例を出されると「なるほど」と感じますね。筆者はここには2つの鍵となる考え方があると述べます。
1つめは問題解決に関わる考えを根本的に変えるということです。
イノベーションを起こすには問題をよく分析し、その上で解決法を組み立てるべきだと考えている人がほとんどですが、筆者の方法では逆です。まず抽象的に解決法を考えて、その上で問題に戻るというやり方です。
これは心理学者のRonald Finke が1992年に提唱したFunction Follows Formという方法です。彼は思考法が「問題から解決法へ」と「解決法から問題へ」という2方向あると述べています。
2つめの鍵となる考え方はスタート地点についてのものです。これはThe Closed Worldと呼ばれていて、自分のまわりの現実世界に即したものです。
ブレーンストーミングやランダムな刺激を得るためのSCAMPER (→外部記事リンク)は「枠の外」に出るものですが、逆も真なり。最も驚くべきアイデアというのも、実は一番身近に転がっているものがヒントになります。筆者はこれをInside the Box(枠の中)と呼んでいます。
こうやってみていくと、筆者が単にこれまでのクリエイティブ・シンキングを批判しているのではなく、「枠の外を強調しているけど、中でいいじゃない」とたしなめている感じがします。
おそらく究極的にやろうと思っていることは両者とも同じだと感じです。どちらがわかりやすいか、どちらが使えるかという問題ではないかと思います。
この筆者、本当に頭がいいなあと感心しました。

Image(s): FreeDigitalPhotos.net



