光ファイバーなどの敷設を、簡単に「光インフラ」と呼ぶ。現在、日本の光インフラは9割が整備済みだが、これはたいした数字だと考えてよい。
ところが、実際に契約しているのは3割ちょっと。日本の全世帯の3分の1ほどである。なぜこれほど低いのだろうか?
理由の1つとして値段か高いことが上げられる。電話線を使ったADSLと比べるとほぼ倍近く料金がかかるので、「だったら、ADSLのままでいいや」と思う人が多くても不思議ではない。
そこで、原口前大臣は日本の光インフラの7割を所有するNTTに接続料を引き下げさせるために光インフラを一挙に進めた。
では、なぜ光インフラを進めると、接続料金が下がるのだろうか?
現在の光インフラは光ファイバーだけではないからである。実際は「光ファイバー→電話線」という状態にある。光インフラと電話線が共存しているので、NTTは光ファイバーの維持だけではなく、電話の維持を同時におこなわなければならず、二重に手間がかかってしまう。
もし光ファイバーだけになってしまえば、ネットも電話も1つの設備でできるのでコストを大幅に削減して、料金を下げることが可能になる。
ただし、光インフラを日本全体に広めるには、そのための工事をしなければならない。やるのはもちろん光インフラの中心にある東西NTTである。
概して、全世帯への普及では、最後の1割、最後の5%、最後の1%といったところが大変なものだ。NTTは重い腰を上げ、でも、長期的なメリットも考慮し、光インフラに邁進する覚悟を決める。
そこに待ったをかける男がいた。ご存じ、ソフトバンク総帥の孫正義氏である。
孫氏は光インフラの所有はNTTとは別会社にして、NTTやソフトバンクやKDDIはそこから同じ条件で借りられるようにしよう、工事費は三社で負担しようと提案した。
原口大臣は途中で孫氏と仲良くなって、途中でこの孫案の支持に回る。原口大臣=孫正義というチームが出来上がった。
ソフトバンク案は一見良さそうであるが、実はかなりの問題を含んでいる。
この案は実質的にNTTから光部門を切り離すことと同じである。つまり、NTTは貴重な人材を減らさなければならない。NTTは弱体化する。
次に、新会社が天文学的な赤字スタートになることだ。
新会社が実際に利益を生み始めるのは回線をレンタルし出してからになる。工事費のほか、会社を維持するための人件費などの出費も膨大だ。それまでお金が出ていく一方で、実際に利益が金利を上回るのはどれくらい先になるかわからない。そこまでその会社は大幅な赤字に耐えなければならない。
そして、これがもっとも根本的であるが、新会社を作るのには時間がかかる。光の道構想は2015年という年限があるのに、新会社を作っていたら貴重な時間を会社設立に費やさなければならない。おそらく1年以上のロスが出るだろう。別に分離しなくても、公正な競争になるように監視すればいいだけの話なので、わざわざ新会社を作るのは時間の無駄である。
どう考えても孫氏の案が通る目はない。だからこそ、孫氏は原口大臣に取り入って、強引に自分の案を通そうとしたのである。
言うまでもないが、孫氏は頭の良い人だ。ここで論理のすり替えをおこなう。それは「私の案のほうが料金が安くなる」と言うことである。
別会社であることと料金が安くなることは実際には関係ないのだが、孫氏はこれがあたかも直接リンクしているかのように論理をすり替えた。
続きます。
