その端緒となったのが、今年1月に自殺した15歳の女子高生フィービー・プリンス(Phoebe Prince)さんの事件である(→記事リンク)。
プリンスさんは、母親と姉妹たちでイギリス(アイルランド)からの移民としてマサチューセッツ州に住むことになり、プリンスさんはこの地の高校に通うことになった。ただし、父親は仕事のためにイギリスに残っている。
報道によると、アメリカに来る前からプリンスさんはもいじめの標的になっていたことがあり、いじめを受けやすい性格だった。もともと精神にいくつも問題を抱え、自殺未遂もしたことがあったという。
いじめのきっかけはよくある話だ。プリンスさんがフットボール部の人気のある上級生とデートをして、それをやっかんだ女子生徒が彼女をいじめた。
プリンスさんへのいじめは、日を追うごとにエスカレートしていく。最初はひどいあだ名(Irish slute)をつけられた程度だったが、やがてフェイスブックのコメント欄に罵詈雑言が書き込みされるようになった。
現実世界とネットの両方でいじめが続き、もともと精神的にもろかったプリンスさんはさらに追い詰められていく。なんと、彼女が自殺してもそれは続くのである。
最後のいじめは、プリンスさんが下校しているときに起こる。歩いているところを、車から空き缶を投げられ、ここまで耐えてきた彼女もついに力尽て、自宅に戻ってからクローゼットで首をくくって自殺する。痛ましいことに、遺体は12歳の妹に発見されてしまう。
いじめをやっていたとされるのは女子生徒ら6人。そのうちのひとりが「アイルランドから移民してきたばかりで、いじめても反撃できないと思った」と語ったという報道もある。プリンスさんが自殺したあとのフェイスブックのコメントにはひどいことが書き連ねられ、accomplished(任務完了さる)と書いた者もいたそうだ。
プリンスさんをいじめた者はすみやかに起訴され(このあたりが日本と違う)、彼女への強姦罪(ただし、マサチューセッツ州の法律で同意があっても18歳未満であれば強姦が成立する)で6人のうち2人の「大人」も逮捕されている(後者の逮捕は詳細がよくわからない)。
頼るべき夫がいないものの、母親もなんとかしようと、学校に2回対処を要請した。学校側もそれなりに動いたようではあるが、適切に処理できなかったようだ。この事件を受けて、マサチューセッツ州ではanti-bullying legislation(反いじめ法)を成立させ、州の学校ではいじめに対する教育をおこなうこととなった。
この事件のあと、いじめ自殺事件が毎月のように取り上げられることになった。もちろん、この事件がきっかけでいじめが起こっているのではなく、これまで表面化しなかったものが、この事件をきっかけに関心が持たれるようになったのだろう。この事件は最初の警鐘である。
「よそ者をいじめる」というと日本のいじめのような感じだが、この事件は都市部に近いマサチューセッツ州で起こっている。この事件は単なるいじめにとどまらず、移民問題や学校の対処の遅れなど様々な要素を含む。
今後、いじめ問題はさらに深刻化する可能性がある。対処療法だけで収拾するのは難しいだろう。あまりに根深い問題である。
