kyupinの日記 気が向けば更新 -874ページ目

テトラミド

一般名;塩酸ミアンセリン

テトラミドの剤型は10mg、30mg。血中半減期は18時間ぐらい。現在、テトラミドで治療されている患者さんはどのくらいいるのだろうか? SSRIの発売で処方数は相当に少なくなっていると思う。テトラミド、ルジオミールは4環系抗うつ剤と呼ばれ、いわゆる第2世代の抗うつ剤だった。当時、旧来の抗うつ剤と比べ口渇や尿閉などのコリン系の副作用が少なかった。しかし、H1受容体やα2受容体の遮断作用も持つことから、眠さの副作用がみられる。当時、トリプタノールやルジオミールに比べ、抗うつ効果が落ちるような感覚があるため、第一選択としてはあまり処方しなかった。しかし、テトラミドはその後発売されたもうちょっと効果がはっきりしない抗うつ剤(テシプールやレスリン) よりはまだ効果があった。テトラミドは60mg以下の用量で処方するように推奨されていたが、70~90mgくらいで処方するとけっこう手ごたえがあったのである。結局、テトラミドはこの用量の目安が敗因だったと言える。抗うつ剤は外来では用量を超えて処方したくはない。入院ならまだしも・・

一度、ルジオミールでけいれん発作が出て、なおかつその際に上腕を骨折した患者さんに対し、テトラミドに変更してその後経過が良かった記憶がある。まあこれはルジオミールでほぼ寛解していたので、テトラミドでも維持には問題がなかったともいえた。テトラミドはとても良い点をひとつだけ持っていた。それは緑内障の患者さんにも禁忌でないことである。抗うつ剤で緑内障に禁忌でない抗うつ剤は当時これしかなかった。緑内障のおばあさんにテトラミドで治療し軽快したことがある。

テトラミドは、従来型の抗うつ剤とちょっと変わったメカニズムで抗うつ効果を発揮する。テトラミドは、モノアミンの再取り込み作用を持たず、シナプス前α2受容体遮断作用を持つ。一般に、シナプスα2受容体はオート・レセプターと呼ばれ、これは神経終末からのノルアドレナリン放出を抑制しているため、その受容体を遮断することによりノルアドレナリン放出を促すのである。つまり再取り込みとは違った方法で、ノルアドレナリンを増加させる。薬物代謝酵素は、CYP2D6、CYP1A2が関与している。併用禁忌は、MAO阻害薬を投与中の患者のみ。テトラミドは鎮静的な抗うつ剤であり、一時、老人などのせん妄、不眠にわりと処方された時期があった。しかし、これも最近ではセロクエルなどにとって替わられたかもしれない。テトラミドでも、老人には少ない量でさえ副作用はわりと出るのである。  

⇒ ミルタザピンを参照

L-トリプトファン

アメリカでは薬局で処方箋なしに簡単にL-トリプトファンが買える。かなり以前から代替療法としてアメリカではL-トリプトファンが広く使われていた。ところがこの薬物には製造工程で不純物が混じっていてひどい健康被害をもたらした。遺伝子工学的に製造した際に極めて有害な不純物が混入したためだ。(問題を起こした企業は日本企業だった)


当初はL-トリプトファン自体に問題があると思われていたが、後に不純物が問題であってL-トリプトファンには有害作用はないとされた。


現在アメリカでは補助的にうつ病や不眠に用いられている。この薬物もSSRIと同様、セロトニン症候群を起す危険がある。プロザックなどのSSRIとの併用は禁忌とされている。このサプリメントだが、SSRIよりは効果が弱いので、どのような位置づけなのかな?と以前から思っていた。アメリカでも日本と同様、SSRIは普通の薬局では買えない。 医師の処方箋なしでは手に入らないのである。しかし普通の薬局で、L-トリプトファンはビタミン剤やセント・ジョーンズ・ワートと同じように簡単に手に入る。専門家の指導なしで服用できるサプリメントと位置づけられているのだろう。

(これは2003年頃にウエブにアップしたものをいくらか加筆したものです)


リスパダール(その2)

リスパダールは代謝物も抗精神病作用を持つ。(過去ログを参照) 

リスパダールの変化体(9OH-RIS)はチトクロームP450酵素2D6の基質でリスパダールから変化するといわれる。リスパダールと9OH-RISはともに抗精神病作用を持ち、2D6の阻害薬、パキシル、プロザック、ジェイゾロフトと併用した場合でも、実質的効果は変わらないといわれる。そんなこともあり、リスパダールは非定型抗精神病薬の中でも薬物相互作用が最も少ない薬物となっている。現在、持続性抗精神病作用のある9OH-RISのデポ剤が開発中で、将来的には日本でも発売されると思われる。(ハロマンスやフルデカシンのような薬物)


リスパダールの臨床上の用量が発売された後、下げられた理由は減量すると有用性が増す場合があるため。(これは減量しても効果がそう落ちないわりに副作用が減る可能性があると言うことらしい) したがって臨床での投与量は、初期の臨床試験からの推奨投与量より少なくなっている。

外来での電撃療法

今日、外来を担当していたが、いつも定期的に来院する患者さんが多かった上、電撃療法の患者さんが2名あった。 もともとうちの病院では電撃療法の選択肢はあるが、頻度的には多くない。 昨年末、電撃療法の機械が壊れてしばらく修理に出したことがあったが、その後、2月に1人実施しそれ以来だった。 1人はその時の人だったが、もう1人は新患で友人のクリニックからの紹介。 結局、2名だが1人はしたことがありほぼ問題がないと思われたが、もう1人は初めてなので最初に説明が必要だった。 処置室で1人終わって、その後まもなくしてもう1人が来た。最初の人には部屋を替わってもらうw


友人はもう本人に電撃療法のことを説明しているので、来た時点で細かい有害作用の話や治療のやり方などをするだけでよい。 しかし現実的には麻酔をかけないやり方でリスクはそれなりにあるので、初めての人は少しプレッシャーがかかる。 僕は麻酔下の電撃療法も、麻酔をかけない古典的な電撃療法もかなり経験がある。 現在、うちの市では電撃療法を実施しない病院がほとんどである。だからこそ、友人も僕に紹介するわけだが。 単科の精神病院、あるいはクリニックで、麻酔医が常勤するような環境はなかなかないので、現在でも電撃療法はトータルでは古典的な方法でされる方が多いと思われる。


今回の初診の人は若い人だったので、少しはプレッシャーが少なかった。若い人の方がやはりリスクは低い。 結局、本人に話して実施するからにはほとんどがうつ病圏内で疎通性には問題がないので説明しやすい。家族にも聞いてもらう。 もし、本人だけしか来院しない場合は(そんなことはありあえないが)、電撃療法は実施しない。 正直、新患で年齢が40台後半以後の人はしたくない。 麻酔下で行う電撃療法は古典的な方法より効果が低いのではないか?という意見があったが、個人的にはあまりかわらないと思う。 双方に一長一短があり、利便性を重視すれば古典的な方法だし、安全をつきつめるなら麻酔下なんだと思う。


今日はクソ忙しい中、午前中に2名、無事終了。2名とも午前中には帰宅された。普通の診察の患者さんが来てる中、電撃療法が2名なんて本当に久しぶりだった。 うつ病で電撃療法をするような状況というのは、薬物療法があまりうまくいっておらず、なおかつそれをしないと自殺の危険が大きい場合などである。 特に希死念慮には効果が高い。 あとは、うつ病性の昏迷または亜昏迷気味で動けない時。 あるいは、食事が全然摂れないときも効果的である。


僕はうつ病で電撃療法で効果がなかったなんてことはほとんど経験がなかったのだが、昨夏、生まれて初めて遭遇した。 その人は今どうしているかというと、けっこう元気なのである。本人は何年も働けなかったが現在は働いている。 復活したのはやっとこの春からだ。 うつ病圏の疾患は、最終的になんとかなることが多いのである。

精神疾患の障害年金(その6)

障害年金の申請にあたり、その人の病気の重さを証明するような「実績」みたいなものがあったほうが良い。なぜなら「日常生活能力の程度の低さ」を証明するようなものがないと、リアリティがないからだ。この実績というのは、いろいろなところにあるが、一番重要なのは入院歴だと思う。神経症圏内でさえ、入退院が多くのべの入院日数がかなり長い場合、その人の病状が極めて悪く「日常生活能力の程度も低い」ことが受け入れられやすい。もちろん外来治療のみで通る場合もあるので、入院歴は必要条件ではないのだけど。あと職歴なども書く欄があるので、このあたりも支援材料ではある。他に退院しても共同住居で長く生活しているとか。


過去に、一度だけ神経性食思不振症で申請したことがあった。細かいところは言えないが、僕の考えではその病状から受給できてもおかしくないと思った。一般に申請時には、初診した病院での初診時の所見やその後の治療歴の詳細(受診状況証明書という)が必要になる。その患者さんの初診病院の院長に、申請のため受診状況証明書を書いていただくようにお願いの電話をかけた。その院長先生は、ちょうど僕が医局に入った当時講師をやっていた人なので、良く知っていた。彼は「神経性食思不振症」ではまず無理ではないかと話していた。だいたいその院長は審査をするくらいの人なので、その人がそう言っているようでは相当に難しい。おまけに、当時、その患者さんは精神科には1回も入院歴がなかった。


それでも審査の結果、1級が通ったのである。僕は通らない可能性のほうが高いと思っていたが、通れば2級と思っていた。なぜ1級になったのか謎だ。このあたりは、どのようになっているのかわからない。重要な点は、神経性食思不振症は当時、既に市民権を得ており、病状が悪い人は相当に悪いことが周知されていたことが大きいと思う。(アスペルガー症候群などに比べて)