効果を実感しやすい向精神薬、実感しにくい向精神薬 | kyupinの日記 気が向けば更新

効果を実感しやすい向精神薬、実感しにくい向精神薬

向精神薬は治療の作用と副作用がある。できるだけ副作用が少なく治療効果が期待できる向精神薬が良い。向精神薬はこの目標に沿って開発されてきた歴史がある。

 

向精神薬は精神に作用することもあり、治療効果であれ、副作用であれ、服薬した本人にわかりやすい。それは効果を感じる座が脳だからであろう。

 

黎明期の向精神薬は、効果も副作用も粗削りだったため、現在の向精神薬より特に副作用は自覚しやすかった。効果については、例えば定型抗精神病薬の鎮静作用は現在の定型抗精神病薬より大きかった。しかしその分、副作用も大きかったのである。

 

歴史的に向精神薬の副作用は軽減され、服薬しやすい薬に変わってきている。以下は鏡像異性体(光学異性体)についての記事である。

 

 

以下は、まとまりのないざっくりした記載であるが、効果がわかりやすい薬とわかりにくい薬を挙げている。

 

早期に効果を実感しやすい向精神薬。

睡眠薬全般

睡眠薬は服用した日に効果が出るものが大半である。眠剤目的では処方されなくなったフェノバールなども、服薬当日には効果が出ていた。服薬後、速やかに効果が出ることは、ベンゾジアゼピンもそれ以外の眠剤もさほど差がない。副作用に差があるのである。もし眠剤を服薬し、1週間くらい経たないと効果が出なかったら実用にならない。

 

抗不安薬

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は服薬後30分ほどで効果が出現する。従って、患者さんの希望に沿うものである。ベンゾジアゼピンは抗不安作用が出ると同時に眠さや集中力の低下は生じるので、副作用も並行して発現していると言える。

 

なお、デパス(エチゾラム)は、現在も抗不安薬や眠剤として処方されているが、先発品とジェネリックでは血中濃度の立ち上がり方が異なり、ジェネリックの方が速かったりするためジェネリックの方を好む患者さんがいた。これは「抗不安作用はなるだけ早急に効果が出てほしい」と言うニーズが良く表れた話だと思う。

 

一方、抗不安作用を持つレクサプロなどのSSRIは、しばらく効果が出現しない。服薬し始めて2週間ほどで抗不安作用が安定してくると言ったところである。SSRIが有効な人は本人が気付かなかったとしても、周囲の人が聴けば、効果があることを自覚できる。SSRIの効果が遅いのはそういう仕様の薬で、大きな欠点とは言えない。SSRIは若干効果がわかりにくい向精神薬だと思う。効果の発現が緩やかだからである。

 

セレネースやジプレキサの筋注製剤

これは急速に幻覚妄想や興奮に対し処方される筋注製剤なので、30分から1時間ほどで効果が表れる。1~2時間経っても効果が現れず、ずっと暴れているような人は、薬が合わないと言うより用量が足りないケースの方が遥かに多い。

 

セレネースとジプレキサを比べると、セレネースが古い薬で、ジプレキサが新しい薬であるが、ジプレキサの方が副作用面で安全性が高い。しかし、ジプレキサは筋注後、効果が足りない時、2時間も空けないと追加筋注できないと添付文書に記載されている。しかも1日2回までである。

 

一方、添付文書ではセレネースは1~2A筋注できて、数時間空けるなどの記載もなく、しかも適宜増減可能なのでおそらく4Aくらいは筋注可能と思われる。これは添付文書にしては謎の記載だが、古い薬だからそのような記載になっているのだろう。

 

そのようなことから、ジプレキサを筋注しても身体的に危険なほど興奮が収まらない人では、2時間も暴れるのを放置できないため、2回目はセレネースかトロペロンを筋注せざるを得ない事態になる。これは精神医療の歴史的な進歩における、ある種のパラドックスだと思う。なぜなら新しい薬から始めているのに過去の薬に戻るからである。(この記載に関しては本人の薬の体感ではなく、周囲から見た他覚的効果発現について記載している)

 

コンサータ

コンサータは効果の発現が早い。しかし早い効果は副作用的なものが多い。例えば、動悸、発汗、振戦、眠さの減少などである。コンサータのために違和感を覚え、かえって集中力を欠く人がいるが、これは合わないと言うより副作用と言った方が良い。コンサータは服薬当初から気持ちがはっきりするので、効果が早い印象が患者さんにはある。

 

一方、ストラテラ(アトモキセチン)は、主治医が、「こういうことに気付きませんか?」と聴くと患者さんは「確かにそうですね」などと言い、効果を肯定してくれる。ストラテラは効果が抽象的なので、患者さんが言語化できないことも多い。朝に目覚めた時、頭がはっきりしているというような人は比較的早期に効果を実感できているといえる。しかし、これはADHDへの効果とは言えない。以下のリンクではストラテラ(アトモキセチン)とコンサータの効果の相違について記載している。

 

 

インチュニブも本人には抽象的で、周囲から確認できるタイプの効果である。例えばインチュニブにより頭痛が軽減する人は早いと思うであろう。インチュニブは血圧を下げる副作用があり、頭痛を軽減する人がいるのだと思う。インチュニブとカタプレスの相違は選択性の差であり、インチュニブで可能なら削除したかった薬理作用が塞翁が馬になっているのである。なお、インチュニブよりカタプレスの方が良いと言う人が本当にいる。

 

余談だが、現在カタプレスは供給ができず、手に入らなくなっている。カタプレスはあまり内科などで使われないらしく、ジェネリックもないかららしい。(永久に供給されないわけではない)

 

抗精神病薬全般

内服で処方される抗精神病薬は概ね効果が早い方だが、それでも数日はかかることが多い。これは言い換えると、数日で効果が安定すると言った感じである。効果が強いタイプの方が効果が早い傾向がある。僕は処方したその日に、その患者さんにその薬が合っているかどうかわかることが比較的多いが、これは何らかの他覚的変化が感じられるからであろう。これは抗精神病薬の効果発現が早いと言うことなんだろうと思う。安定的に効くかどうか、効果の規模、効果副作用のバランスなどは最低でも2週間くらい様子を診るべきであるが、入院だとそのような悠長なことを言っていると、日数がかかる一方なので、薬の早期の見切りもやむを得ない。

 

抗精神病薬は統合失調症の患者さんに処方する場合、洞察が困難な人では、他覚的に早期に何らかの良い効果が出ているとしても、どのように改善したか全く自覚できない人がいる。つまりこのケースでは、効果が早いかどうかを本人から聴取することは難しい。

 

バルプロ酸Na

バルプロ酸Naは、特に液剤などでは用量にもよるが初日から鎮静も可能である。バルプロ酸Naに限らず、液剤が錠剤より効果が早く見えるのはある種の謎だと思う。シクレストとは異なり、舌下から吸収されて効果が発現するわけではないからである。躁うつ病の治療コントロールについては、おそらく7日以内であろうが、様子を診るべきだと思う。

 

バルプロ酸Naを高齢者に処方した時、時々傾眠に至る人がいる。高齢者の興奮状態に対して傾眠にさせるためにバルプロ酸Naを処方をしてはいないので、傾眠が出現したらそれは治療効果ではなく、副作用と判断している。つまり、傾眠はバルプロ酸Naの減量ないし中止要件に入る。

 

早期に効果を実感しにくい向精神薬

SSRI(レクサプロ、デプロメール、ジェイゾロフト、パキシルなど)

SSRIは効果の発現に時間がかかるのことはよく知られている。精神科病院やクリニックで処方された時に、主治医からそのように説明を受けることが多い。概ね2週間くらいかかることが多いが、10日くらい経つと良い人は何らかの良い感覚があるようである。2週間くらい服用を続けると効果が安定的になる。

 

注意点として、SSRIは効果が表れるのは遅いが、吐き気などの副作用は速やかに出ることである。当初、どうしても吐き気を避けたい人はモサプリドが併用されるが、次第に嘔気に慣れてモサプリドが必要でなくなる人の方が多い。時々、モサプリドがどうしても必要な人がいると言ったところである。このようなことから、あるSSRIがその人に良いかどうかは副作用の強弱に関わらず、しばらく様子を診ないとわからない。

 

このような理由で、SSRIは調子の悪い日に頓服で服薬するタイプの薬ではない。僕はそのような服薬の仕方をする人がいたら中止するようにしている。処方する意味がないからである。

 

SNRI(サインバルタ、イフェクサー、トレドミンなど)

SNRIもSSRIと同様効果発現が遅い。しかし2週間処方した時、次回に受診した時、良い人は何らかの良い効果が出ていることが多い。それはリエゾンでも同様である。SSRIやSNRIは吐き気などの副作用のこともあり、少量から漸増するため、どうしても安定的に効果が出るまで時間がかかると言える。SNRIはうつ病や疼痛に処方されることが多いので、特に疼痛に関しては効果を患者さんが自覚しやすい。そんははずはないと思うが、トレドミン25㎎を疼痛性障害に処方したところ、その日にこれは良いと思った患者さんがいる。彼は既にサインバルタを服薬中だったので、なんらかの謎の相互作用があったのかもしれないと思った。

 

トリンテリックスやミルタザピン

これらもSSRIやSNRIと同様、効果発現まで時間がかかる。しかし、フィットする人には処方2週間目には何らかの良い効果が出ており、本人からもそれを聴くことも可能である。多くのタイプの抗うつ剤が、効果発現に時間がかかるのは、抗精神病薬のように単に遮断するような作用ではなく、その逆だからだと思う。実際は抗うつ剤も遮断することもあるのであろうが、脳内のレセプターレベルの構造の変化が必要なんだろう。だから時間がかかるのである。

 

なお、トリンテリックスは嘔気、ミルタザピンは眠さの副作用があるが、これらは早期に出現する。ミルタザピンの副作用の眠さは有効に利用されており、就前に服薬指示することで、他の眠剤が減量でき、人によれば中止も可能である。

 

リーマス

リーマスは、服薬当初は患者さんにはほとんど実感できない薬だと思われる。リーマスはそもそも何らかの鎮静効果が生じるまで、最低3週間、おそらく1か月近くかかるので、他覚的にはともかく、本人は疾患性(躁うつ病)もあり、なかなか効果が実感できないと思われる。ただし、改善してくれば統合失調症と異なり疎通性は保たれているため、どのような変化が生じたか、主治医との話し合いで十分検証できる薬だと思う。

 

(全てではないが、疲れたのでここで終わり)

 

参考