エストロゲンと精神疾患
エストロゲンは統合失調症の病状の性差に関係していると言われる。エストロゲンは胎児脳の組織化および活性化に関係しており、出生前に男女の脳の分化に影響を与えている。出生前の女児の脳は、エストロゲンにより男児の脳に比べ、ニューロンの髄鞘形成、神経結合の定着、脳機能の左右分化が早く起こっているという。つまり女児は男児に比べ出生時の脳の成熟度が高いのである。
男児は出生時の脳の成熟度が低いため、出産時の脳の外傷への脆弱性が高く、これが統合失調症の発病時期(女性より早期であること)や長期予後に影響を与えているらしい。つまり女性に比べ男性の方が統合失調症の長期予後が悪い生物学的要因の1つとして、エストロゲンの脳への関わりがあるのである。
こういうことを書くと、あたかも出産時の脳へのダメージが統合失調症の発病に大きな影響を与えているように思われるかもしれないが、統合失調症の発病にかかわる1つの推測として挙げられているに過ぎない。一般的には胎児期のインフルエンザ感染などが発病に関係している?などは、どのくらいのエビデンスがあるかどうか知らないが、よく言われていることなのである。(参考1)
エストロゲンは統合失調症に限らず、さまざまな精神疾患に影響を与えているように見える。エストロゲンのうちのE2(エストラジオール)であるが、これはエストロゲンの中で最も高い活性を持つ。
エストロゲンの種類
エストロン(E1)
エストラジオール(E2)
エストリオール(E3)
エストラジオールは思春期に劇的な高まりを見せるが、これが神経伝達に影響を与え、両性において素因のあるものは思春期に発病に至らしめることもある。男性の場合、エストラジオールは普段は女性の更年期程度レベルしかない。男性の場合、エストラジオールはテストステロンから作られるが、思春期にテストステロンの高まりから、エストラジオールの急激な上昇も見られ女性化乳房が生じたりする。思春期では男性もエストラジオールと無関係とは言えない。
エストラジオールの急激な変動は精神のホメオスタシスを変化させ、時に精神疾患の発病の契機になることがあるが、本質的には脳には保護的に働いている。エストラジオールは抗精神病作用を持っているからである。これは日常の種々の女性の精神病像の変化を説明しており、わりあい矛盾が少ない。
女性患者の場合、さまざまな精神疾患で月経前に精神症状が悪化することがあるが、これは排卵期にエストラジオールが高く月経前に下がることが影響しているのかもしれない。PMSに限らず、月経前に悪くなる人は多いのである。エストラジオールを抗精神病作用を持つ薬物の一つとみなせば、PMSが単に低用量のピルに限らず、抗不安薬、抗うつ剤、バッチフラワーでも改善しうることも理解できる。(参考2)
また、妊娠中は胎盤に由来するエストラジオールが大量に放出されているが、これが妊娠中の精神病状の安定に貢献しているように見える。妊娠時期は排卵期の日常で高い水準と比べても、エストラジオールは数倍~30倍程度に上昇している。しかし分娩後にこれほどに高まったエストラジオールが急激に下がるため、統合失調症などでは病状悪化を来たしやすいし、産褥期精神病の発病に契機にもなりうる。
女性では、いわゆる更年期に次第にエストラジオールが低下していくが、この時期の精神病状態を来たしやすいことと関係しているのかもしれない。女性では、この時期に非定型病状を呈する精神病が出現しやすいし、長期入院中の統合失調症の人たちでも、この時期に病状が悪化しレベルがさがる人も見受けられる。
補足
出生以前のエストラジオールの影響であるが、例えばアスペルガー症候群などはどうなんだろうか?と思う。アスペルガーは原因は不明とされているが、出生時の脳へのダメージもその発現の要素に挙げられている。アスペルガーが男性により多いことは、上に書いたことでも説明しうるからである。今は産科学のレベルが上がったので、例えば超低体重未熟児でも出生を乗り越えれば、健康に生活できるようになった。しかし、低体重で出産しているということは、普通児より極めて低い脳の成熟度で出生していることを意味している。近年は高齢出産と不妊症治療による双子以上の多胎児で出生するケースが昔より相対的に高い。これらはここ20年くらいのいまひとつはっきりしない発達障害の患者さんの増加にあるいは関係があるのかもしれない。また未熟児網膜症などの身体的障害は進歩が著しいが、こと脳に関しては産科的にはまだ克服されていないのかもしれない。
男児は出生時の脳の成熟度が低いため、出産時の脳の外傷への脆弱性が高く、これが統合失調症の発病時期(女性より早期であること)や長期予後に影響を与えているらしい。つまり女性に比べ男性の方が統合失調症の長期予後が悪い生物学的要因の1つとして、エストロゲンの脳への関わりがあるのである。
こういうことを書くと、あたかも出産時の脳へのダメージが統合失調症の発病に大きな影響を与えているように思われるかもしれないが、統合失調症の発病にかかわる1つの推測として挙げられているに過ぎない。一般的には胎児期のインフルエンザ感染などが発病に関係している?などは、どのくらいのエビデンスがあるかどうか知らないが、よく言われていることなのである。(参考1)
エストロゲンは統合失調症に限らず、さまざまな精神疾患に影響を与えているように見える。エストロゲンのうちのE2(エストラジオール)であるが、これはエストロゲンの中で最も高い活性を持つ。
エストロゲンの種類
エストロン(E1)
エストラジオール(E2)
エストリオール(E3)
エストラジオールは思春期に劇的な高まりを見せるが、これが神経伝達に影響を与え、両性において素因のあるものは思春期に発病に至らしめることもある。男性の場合、エストラジオールは普段は女性の更年期程度レベルしかない。男性の場合、エストラジオールはテストステロンから作られるが、思春期にテストステロンの高まりから、エストラジオールの急激な上昇も見られ女性化乳房が生じたりする。思春期では男性もエストラジオールと無関係とは言えない。
エストラジオールの急激な変動は精神のホメオスタシスを変化させ、時に精神疾患の発病の契機になることがあるが、本質的には脳には保護的に働いている。エストラジオールは抗精神病作用を持っているからである。これは日常の種々の女性の精神病像の変化を説明しており、わりあい矛盾が少ない。
女性患者の場合、さまざまな精神疾患で月経前に精神症状が悪化することがあるが、これは排卵期にエストラジオールが高く月経前に下がることが影響しているのかもしれない。PMSに限らず、月経前に悪くなる人は多いのである。エストラジオールを抗精神病作用を持つ薬物の一つとみなせば、PMSが単に低用量のピルに限らず、抗不安薬、抗うつ剤、バッチフラワーでも改善しうることも理解できる。(参考2)
また、妊娠中は胎盤に由来するエストラジオールが大量に放出されているが、これが妊娠中の精神病状の安定に貢献しているように見える。妊娠時期は排卵期の日常で高い水準と比べても、エストラジオールは数倍~30倍程度に上昇している。しかし分娩後にこれほどに高まったエストラジオールが急激に下がるため、統合失調症などでは病状悪化を来たしやすいし、産褥期精神病の発病に契機にもなりうる。
女性では、いわゆる更年期に次第にエストラジオールが低下していくが、この時期の精神病状態を来たしやすいことと関係しているのかもしれない。女性では、この時期に非定型病状を呈する精神病が出現しやすいし、長期入院中の統合失調症の人たちでも、この時期に病状が悪化しレベルがさがる人も見受けられる。
補足
出生以前のエストラジオールの影響であるが、例えばアスペルガー症候群などはどうなんだろうか?と思う。アスペルガーは原因は不明とされているが、出生時の脳へのダメージもその発現の要素に挙げられている。アスペルガーが男性により多いことは、上に書いたことでも説明しうるからである。今は産科学のレベルが上がったので、例えば超低体重未熟児でも出生を乗り越えれば、健康に生活できるようになった。しかし、低体重で出産しているということは、普通児より極めて低い脳の成熟度で出生していることを意味している。近年は高齢出産と不妊症治療による双子以上の多胎児で出生するケースが昔より相対的に高い。これらはここ20年くらいのいまひとつはっきりしない発達障害の患者さんの増加にあるいは関係があるのかもしれない。また未熟児網膜症などの身体的障害は進歩が著しいが、こと脳に関しては産科的にはまだ克服されていないのかもしれない。