2023年3月2日、サックス奏者で作曲家のウエイン・ショーターが89歳で亡くなった。
このことは一般新聞記事などでも広く取り上げられたので知っている人も多いでしょう。
ぼくが心より敬愛するサックス奏者の一人であり、ジャズに触れたことがある人なら必ずその名や演奏にも同じように触れたことがあるはず。
またハービー・ハンコック同様、日本の宗教団体の学会員でもあることでも有名だった。
一般的な経歴は他を参照していただくとして、ショーターのキャリアの中では自己の名を冠するグループだけでなく、60年代のアートブレイキー&ジャズメッセンジャーズ、60年代のマイルスデイビスのバンド、7~80年代のウェザーリポートなど、ジャズ系音楽史に絶大なる影響を与えてきたグループにも時代をまたいで名を連ねていることだけでもそのジャイアントぶりがわかる。
楽器演奏の求道者というよりはるかに大きな視野で常に世界観を意識した新しい音楽表現の挑戦者であり、それは生涯続いた。
もちろんその演奏は唯一無二であり、まずその一音聞いただけでわかる音色。
テナーもソプラノも基本的にオットーリンクのマウスピースを使用し、特にテナーはメタルにしたりラバーにしたりしながら愛用していた(最近は違うマウスピースのときも多かったようだけど)。
ぼくもオットーリンクのマウスピースを使用しているけど、ショーターの独特の音色は真似しようがない。
音色だけでなく細かなタンギングなど技術的な高度さもある中、そんなことよりもショーターの音楽が素晴らしいのはこの概念、「一曲一小節」。
すなわちフレーズの枝葉を取り上げてああだこうだという小さな話ではなく、曲・演奏全体を一つの作品として俯瞰する姿勢。
それが演奏に見事に落とし込まれている。
他のサックスの名手だとそのフレーズをコピーして練習したいと思うことが多いのだが、ショーターやチャールス・ロイドなどはそういう気を起こさせない超越した歌い方をする。
もちろんそれでも細かいところは研究に値するけど。
またこんなことも言っている。
これはまず原語のまま。
「When you go onstage,you have to put away all your Grammys...go out there in your pajamas and tell a story.」
そのままGoogle翻訳的に訳すと
「ステージに上がるときは、グラミー賞をすべて片付けなければなりません…パジャマ姿でステージに立ち、ストーリーを語ってください。」
グラミー賞もパジャマももちろんメタファーだけど、この言葉にショーターの愛すべき神髄があるように思える。
概念や哲学的な話はともかく、ショーターの曲は何とも呪術的な雰囲気が多い。
これが耳にまとわりついてきて、ぼくはいちいち虜になってしまう。
例えば初期のリーダー作にある「Moon Of Manakoora」。
または「Second Genesis」。
独特のメロディラインもすぐショーターだとわかる。
ソロデビューの頃、アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズの時のショーターの曲より「Lester left town」。
半音階を上手く使ったやはり耳にこびりつくメロディラインがたまらない。
この曲はスタン・ゲッツのバージョンもいいんだよな~。
実は一番好きな曲は、マイルスバンドの時のこの曲、「Nefertiti」。
メロディはずっと繰り返されるだけで、サックスやトランペットにアドリブソロパートもない。
まさに呪術的。
不思議なメロディとコード進行が脳内にしがみついて離れなかった。
ショーターは何度も日本に来ており、それこそぼくが生まれる前にジャズメッセンジャーズで来た時はぼくの親父がサンケイホールまで観に行ったそうだ。
ぼくも何度か生で観る機会を持つことができたのだが、一番の思い出は86年に本人名義のカルテットで日本に来たとき。
今は無き六本木ピットインで、チャージは確か4000円ぐらいで本人から2mぐらいの正面でかぶりつきの体験できた…今では考えられないチャージだ。当時でも安いと思った。
当然楽器の生音にも触れることができ、その音のダイナミクス、ピアニシモの時の繊細な表現力、そして繰り返すけど音色の魅力に完全にやられてしまった。
その時は一番有名といってよいこの曲「Footprints」も演奏。
このリンク先↑は「Adam's Apple」というアルバムの時の演奏だけど、また全然違うアプローチだったな~。
あ、このアルバム表題曲の「Adam's Apple」↓自体もとぼけた味わいのある何ともよいテイク。
話は前後するけど、84年にウェザーリポートで来日した時もホールでのコンサートに行くことができた。
ベースにジャコ・パストリアス、ドラムにピーター・アースキンが居た81年の日本公演には残念ながら行けなかったのだが、84年にはベースがビクター・ベイリーに、ドラムがオマー・ハキムになった新生バンドだった。
ちょうど「Domino Theory」というアルバムが出た頃。
その時のライブ映像が30分ほど、Youtubeにあった。
他にも1時間ぐらいのや45分ぐらいのや、映像は荒いけど色々あるみたい。
最初にやってる「D flat Waltz」は結構好きな曲。ザヴィヌルの曲だけど。
ウェザーリポートではジョー・ザヴィヌルの曲が多いが、ショーターの曲もたくさんやってる。
その中でショーターらしいのはやっぱりこれ「Elegant People」かな。
イントロ的な部分が長く、印象的なメロディは1分50秒過ぎにようやく出てくる構成もさすが。
…ああ、キリがない。
こんな感じでここ何日もショーターの芸術をあれこれ聴きなおしては、改めて心の師匠として勉強させていただいてました。
清濁平等に扱う真の美しさがあるショーターサウンド、永遠なれ。
ぼくもパジャマならぬ温泉浴衣とかで自分だけのストーリを語れるような存在になりたいですわ。
改めて、心より哀悼の意を表します。
追記:ラストアルバムは2018年に発表された3枚組アルバムの「EMANON」。
意欲的な室内管弦楽団との組曲とライブ音源。
全体のYoutubeは貼れないけど、興味をもった方は購入するか検索して聞いてみてください。
