中国株暴落の意味
https://tanakanews.com/150710market.htm
中国株が暴落している。
上海の平均株価は、6月中旬に高値の5千ポイント強をつけた後、6月末から急落し続け、現在3400ポイント前後まで、32%も下がった。中小企業の株が多い深センでは、高値から40%も下落した。
中国政府が下落防止の対策を打っても効かず、急落が続いている。
上海では急落の結果、上場株式の7割が取引停止になった。
中国政府は、マスコミに対して株の売りを推奨する記事を書くなと命じ、年金基金や国有企業、党幹部に対して上場企業の株を売ることを制限するなど、強硬策を始めている。
中国を仮想敵と定め
(観光業や小売業が中国人観光客の増加で破綻をまぬかれているのに)
嫌中プロパガンダがあふれる日本では
「中国はもうダメだ」
「ざまあみろ」
という感じの論調が席巻している。
たしかに、株価の3割暴落は衝撃的だ。
しかし歴史をふりかえると、中国は、以前にもっとすごい株式のバブル膨張と崩壊を経験したのに、実体経済の成長が止まっていない。
中国上海の平均株価は、2005年末の1千ポイント前後から07年10月の6千ポイントへと6倍に膨れ上がった後、バブルが崩壊し、1年間の急落によって株価が3分の1になり、08年末に2千ポイント前後まで下がった。
今回のバブルは、昨夏の2千ポイント台から、今年6月の5千ポイント台へと株価が2・5倍にふくらんだ後、2週間で3分の2になっている。
今回のバブルは、膨張の倍率が前回のバブルより小さい。
前回の中国の株バブル崩壊は、米国でサブプライム危機(07年夏)からリーマン倒産(08年秋)に至る債券バブルの崩壊が起きた時期と一致している。
米国の債券バブル崩壊が、中国の株バブル崩壊へと感染した。
今回、米国では(まだ)バブル崩壊が起きていない。
しかしこれは、通貨を過剰発行して債券や株を買ってテコ入れするQEなどのバブル膨張延命策を、米国や(対米従属の)日本がやっているからだ。
米日の債券や株のバブルは、実体経済のゼロ成長を無視してふくらみ続け、過去にない異常な高水準に達している。
中国と米国のバブルが連動して崩壊した前回の教訓から考えると、中国の株バブル崩壊が米国のバブル崩壊へと感染しても不思議でない。
感染下落を防ぐためなのか、中国株の暴落が続いた7月8日、ニューヨーク株式市場がシステムの不調を理由に4時間取引が停止した。
不調の原因の詳細は発表されていないが、同時期にウォールストリート・ジャーナルのウェブサイトもダウンしており、ハッカーの仕業の可能性もある。
ハッカーは当局の敵ばかりと限らない(米国最強のハッカーは国防総省の要員だ)。
この日、NYのダウ平均株価は1・5%下落したが、システムが正常に稼働していたらもっと下落していたかもしれない。
NY証券取引所は、システムを復旧する早道(バックアップを使ったリカバリ)をとらず、システムダウンを長引かせた。
バブル崩壊の感染を防ぐための意図的なシステムダウンだったなら、中国当局が国有企業に株の売却を禁止した方策に劣らない「株価の不正操作」ということになる。
米日の株価は、日銀などのQEによるテコ入れで、バブルが崩壊せず膨張し続けている。
QEは、不正な株価操作そのものだ。
リーマン危機後、部分崩壊したままの米金融システムを延命させるため、バブルに頼らざるを得なくなった。
米日の当局は、自分たちのバブルが危険な水準まで膨張していることを知っているはずだ。
中国は経済成長の原動力が金融でなく実体経済(輸出や内需用の製造業など)なので、中国のバブル崩壊は、実体経済に大した影響を与えない。
対照的に米日は(みせかけの)経済成長の証拠をQEなどによる金融バブル膨張の効果(株価上昇など)に頼っているので、バブル崩壊が実体経済の(見せかけの)成長を崩してしまう。
米日は、バブル崩壊の回避(延命)が最重要の戦略だ。
米国勢が中国の金融界などの内部に構築したエージェントが、今回の株バブル崩壊を誘発している可能性はある。
とはいえ、そもそもマスコミや国内金融界などを通じて昨年からの株バブル膨張を煽ったのは中国政府だ。
今年5月以来のバブルの最後の2カ月、小口の個人投資家つまり一般市民が、マスコミや証券会社の口車に乗って株式投資に参入し、今回の暴落で最も大損した。
中国政府が、米国にバブル崩壊を誘発されかねないと懸念するなら、国内マスコミや金融界によるバブル扇動を制止するのが筋だったが、そのような動きはなかった。
前回の株バブルの時、中国の経済成長は年率9%以上だった。
今回、成長率は7%前後に落ちている。
中国経済はそれだけ蘇生力が低下したことになるが、実質ゼロ成長の米日経済よりはましだ。
米日でなく中国のバブルが崩壊するのは、経済原則に基づくものでなく、国際政治的な策略として考えるべき動きだ。
しかしその一方で、中国の株バブル崩壊は、国際政治における中国の台頭を阻害するものでないのも事実だ。
中国は、前回の株バブル崩壊後(つまりリーマン危機後)に、国際政治における影響力の拡大を加速している。
今回のバブル崩壊が、前回のように1年続く場合、中国株は来年にかけてもっと下がることになるが、今年のAIIBやBRICS開発銀行などの設立を皮切りに、BRICSの経済面の主導役である中国は、来年にかけて国際影響力をさらに拡大することが確実だ。
前回のバブル崩壊と同様、今回も、中国のバブル崩壊と国際台頭が同時並行で進むことになる。
今後数年かけてBRICSが経済規模でG7を追い抜いていく流れは変わらない。
中国株のバブル崩壊、ギリシャ危機の継続と並んで、金地金の再下落や、原油安の再加速が起きている。
金地金は、信用(幻想)に頼らない実体的な価値を持っており、信用が崩れると紙切れでしかないドルや債券の究極のライバルだ。
米国勢は、ドルや債券の信用が崩れるまで、信用系の金融機能である先物を使って、今後も繰り返し金相場を下落させるだろう。
中国は、旧覇権国である英国が、新興覇権国である自国にすり寄ってきたのを利用して、ロンドンで値決め(談合)されている金地金の国際相場に対する影響力を拡大し、これまで米英銀行だけが値決めに参加して金相場を不正に引き下げてきた慣行をやめさせ、金相場の(正当な)上昇を引き起こそうとしている。
ロンドン金市場は今年3月に制度を大改革し、その時に中国の大手銀行が地金市場協会(LBMA)の値決め会員に入ると目されていたが、実際は中国勢がどこも入らなかった。
中国勢の参加はガセネタだったか、と懸念される事態になったが、6月中旬、LBMAが、中国の4大銀行の一つである中国銀行が6月22日から値決めに参加すると発表した。
その後、4大銀行の中の中国商工銀行も、値決め会員になることを検討していると発表し、中国勢が国際金相場の決定権の一部を握ることが確定的になった。
中国政府は今年中に、上海の金地金市場で、金相場の人民元建ての値決めシステムを稼働する。
人民元と金相場を連動し、金本位制のイメージに近づけようとしている。
短期的には中国自身、金相場を急いで引き上げようとしていない。
相場が安い間に中央銀行(中国人民銀行)の金備蓄を拡大し、人民元を支える力をつけようとしている。
そのため、中国銀行が値決めに参加した後、金相場はむしろ下落した。
中国銀行のロンドン金相場の値決めへの参加(金相場に対する中国の影響力拡大)の決定と、中国株の暴落開始が、同時期に起きていることは興味深い。
中国は、ドルのライバルである金地金の世界価格決定への支配力を増すことで、ドルや米国債を潰せる力を増したが、それと同時期に、何者か(米国勢?)が中国株のバブルを崩壊させ、中国を弱体化する策略を開始している。
これは、金地金という新たな武器を得た中国と、ドルや債券を防衛しようとする米国との、金融大戦の激化であると考えられる。
分析者の間からは、中国の株暴落によって中国人が株への投資に嫌気し、株でなく金地金に投資するようになるとの予測と、そうでないという見方の両方が出ている。
もし株暴落が中国人の地金投資を増やす結果になるなら、これは中国政府が人民元に金本位制のイメージを付加しようとしていることと同じ流れになる。
株の暴落は、長い目で見ると、民間を含めた中国の金備蓄の増大、金地金を使った経済覇権力の担保へと結びついていくかもしれない。
(だから今回のバブル扇動と崩壊が看過されたというのは考えすぎかもしれないが)
金相場と同時に、原油相場も下落を再開した。
一方、原油安の再加速は、前回の記事に書いたように、米国のシェール石油業界を潰したいサウジアラビアが、ロシアに接近したことと、たぶん関係している。
サウジは、ロシアに農業部門などで100億ドル規模の新規投資を行う計画だ。
ロシアは、経済制裁で欧米からの投資が入ってこなくなった分を、中国だけでなく、サウジにも補ってもらえるようになった。
サウジは、米国の石油産業を潰そうとしているだけでなく、米国のロシア敵視策を妨害するようになった。
もはやサウジは米国の同盟国でなく、中露イランと並ぶ米国の敵だ。
ロシアに対するサウジの接近は、将来的に、BRICS(もしくは上海協力機構)へのサウジの加盟につながるかもしれない。
BRICSや上海機構に対しては、サウジのライバルであるイランが、すでに加盟を希望している。
イランは、核問題の濡れ衣を国際的に解かれた後(早ければ間もなく)上海機構への加盟が認められる。
イランの台頭を看過できないサウジは、俺たちも入れろとロシアに求めそうだ。
この場合、サウジがイランへの敵視をやめることが、加盟の条件になる。
インドとパキスタンが、敵対をやめることを前提に、上海機構に加盟しようとしているのと同じ構図だ。
上海機構を主導する中露は、諸国間の敵対をやめさせようとしている。
印パや、スンニ(サウジ)対シーア(イラン)など、諸国間の敵対を扇動して自国の覇権を維持してきた米英と対照的だ。
対米従属に固執することで
米国を「おかみ」とする官僚機構が
隠然独裁を続けられる日本では、
米英が「善」で中露が「悪」であるとするマスコミのプロパガンダが根強いが、
そうした善悪観は歪曲された大間違いだ。
日本人は、早くそれに気づいた方が良い。
中露の肩を持つ私を中傷する前に、プロパガンダを軽信せず世界の流れをよく見ろと言いたい。