[常陸国鹿島郡] 一ノ宮 鹿島神宮 武甕槌命を祀る
*画像はWikiより
【古事記神話】本文
(~その95 国譲り編 11)
思兼神の会話の途中でぶったぎるという失態をおかしてしまいました。
さらに続いて、思兼神及び諸神は伊都之尾羽張神またはその子の武御雷神を降ろしては如何でしょうかと提案したのが
前回の記事。
その会話の途中からです。
【読み下し文】
且其の天尾羽張神は天安河の水を逆さに塞き上げ道を塞き居れば 故れ他し神は得行かじ 故れ別に天迦久神遣わし問ふ可しとまをしき 故れ爾に天迦久神を使はし天尾羽張神に問ふ時 答へて白さく 恐し仕へ奉らむ 然れども此道は僕の子 建御雷神を遣はす可きとまをして乃ち貢進りき 爾に天鳥船神を建御雷神に副へて遣はす
【大意】
「且つその
天尾羽張神(アメノオハバリノカミ)は、天安河の水を逆さまに塞き上げて道を塞いでいるので、他の神は行くことができません。だから天迦久神
(アメノカクノカミ)を遣わして問わねばなりません」と思兼神は申し上げました。そして天迦久神を使いに遣り
天尾羽張神に問うと、「恐れ多くもお仕え申し上げます。然れどもこの道は私の子の武御雷神を貢進致しましょう」とお答え申し上げました。そこで天鳥船神を副えて武御雷神を葦原中国に遣わしました。

浮世絵に描かれた建御雷神(岳亭春信「葛飾廿四将」)
*画像はWikiより
【補足】
冒頭に記したように、思兼神及び諸神の会話の途中からです。
→
伊都之尾羽張神実際に葦原中国へ派遣されたのはその子である
(紀は四世孫とする)建御雷神
(武甕槌命)。
生粋の天の邪鬼さんは、派遣された建御雷神
(武甕槌命)よりも、なぜ
伊都之尾羽張神(天尾羽張神)を2度も記しているのか、どうしてもそこに留意してしまいます。
以下、甚だ乏しいと自覚ある国語能力ながらも、最大限に駆使して解してみたいと思います。
確かに会話の受け答えをしてはいますが、これは「誓約(うけひ)」を行った際の神託ということと解することができると思います。
一方で子または四世孫とする建御雷神(武甕槌命)は、より人格化された存在に記されます。ですがこちらもまた刀そのものと解して良いのではないかと。
高天原の天孫族による葦原中国支配は、正当化されねばなりません。そして大国主神からの国譲りの物語は壮大なスケールのものでなくてはなりません。
記紀神話、とりわけ記にはそのための仕掛けがふんだんに盛り込まれているように思います。その仕掛けの一つが
伊都之尾羽張神の創出であるように思います。
創出とは言え、既に伝説の聖剣として、神器の一つとして、「岩陰祭祀」が行われていたものであろうと察します。
神名(刀名)から察するに…
「イツ」は「神威の盛んなこと」+「オ(尾・雄)」は「雄々しい」+「ハハ」は「大蛇」(個人的解釈による)。厳めしい言葉が連なるもの。
このあまりに厳めしい名を帯びた刀は、イザナミ神を殺した
火神を斬り殺した…という何とも壮絶なもの。
この刀を以て「国譲り」を為したと考えるべきかと考えます。つまりこの刀が武甕槌神に人格化し、「国譲り」を成功させたと。
*「草薙剣」(天叢雲剣) … 「三種神器」の一
*「天羽羽斬剣」(布都斯魂剣) … スサノオ神が八岐大蛇を退治した剣
*「布都御魂剣」 … 武甕槌神が葦原中国平定に用いた剣、神武東征時に軍を救った剣
「伊都之尾羽張」は「=武甕槌神=経津主神」と考えます。また経津主神は物部氏の始祖と考えます(実在しないため「神璽」)。
「天羽羽斬剣」(布都斯魂剣)と「布都御魂剣」は石上神宮に鎮められ、御祭神三座のうちの二座となっています。石上神宮は物部氏の総氏神。
つまり「三種神器」の一である「草薙剣」を除き、悉く物部氏が管掌し、かつ御祭神としていました。
ところが記紀神話創作時には物部氏は既に衰微しています。これを藤原氏がちゃっかり横取り…我が物としたと。即ち武甕槌神・経津主神は何れも祖神として春日大社に祀ってしまった。「伊都之尾羽張」も同じく。
そもそも「経津主神」は物部氏が古くからその名で崇めていたかもしれませんが、伊都之尾羽張や武甕槌神といった神名は記紀編纂時に創出したのではないかと思うのです。
[大和国添上郡] 一ノ宮 春日大社
◎「天迦久神(アメノカクノカミ)」が使いとして登場しています。この場面に登場するのみ、プロフィール等は一切記されません。
「鹿久
(カク)」に就いては、剣で撃つ「カク」の意、刀剣の「かがやく」意の「カカ」からの転訛、鹿児
(鹿の子)からの転訛等、諸説あるようです。
個人的思量としては、「鉄」に関連する「カグ」からの転訛ではないかと考えます。敢えて「鹿」の文字を宛てたのは藤原氏の仕業ではないかと。
「伊都之尾羽張神」の「ハバ(ハハ)」が「大蛇」のことであると「古語拾遺」は解きます。「大蛇」もまた「鉄」と関連するのでしょう。
伊都之尾羽張神が「天安河」の水を塞き上げていたと記されますが、「刀剣の鍛造に必要な水を引いていた」と解する説もあり、あらゆる点が「鉄」と関連するように思います。

今回はここまで。
遂に建御雷神が降ろされ、
いよいよ「国譲り神話」のクライマックスへと進んで行きます。
*誤字・脱字・誤記等無きよう努めますが、もし発見されました際はご指摘頂けますとさいわいです。
*一部の許可している方を除き写真・文章の無断使用や転載を禁止致します。リブログ等にてお願いします。