東京の奥沢。
夫婦で雑貨店をやっています、河野です。
普段、ムジパトでは
無印良品の服を中心にお話ししていますが、
その裏側で、僕たちはずっと変わらず
「さがしモノの旅」を続けています。
全国の作り手を訪ね、
話を聞き、空気を感じ、
「この人から、このモノを届けたい」
そう思えるかどうか。
今回の旅先は、大阪・生野区。
目的は、急な出会いからはじまった
ある靴の作り手に会うことでした。

さがしモノの旅
ウッドクロックをもとめて大阪に
出会いはいつも突然です。
今年の夏にカタカナマルシェで紹介したサングラス。
大阪の生野区でモノ作りをしている町工場です。
そのブランドの山岡さんに、
「ぜひ、紹介したい靴があるのです。同じ町でモノ作りをしている仲間なのです」
そう言われ、とんとん拍子に話が進み、
その2週間後に東京で打ち合わせをして、
その数週間後、大阪のアトリエに向かったのでした。
25年たっても、やっぱりかわいい。マレットのウッドクロッグ
「すごいですね」
話を聞いて、僕がそう言うと、
村山さんは、
「いや、全然すごくないです。
行きたかったから」と答えました。
大阪でウッドクロッグを作る「マレット」の村山さん。
作り方を学ぶために、スウェーデンの工房まで行ってしまった人です。
どうして、そこまでできるのだろう。
その答えは、19歳の頃の話にありました。
19歳の頃、ロンドンに語学留学していた村山さんは、ある靴屋で白いウッドクロッグに出会います。
「かわいい!!これください」
ひと目で気に入り、その場で履き替えて街へ。
好きだった60年代、70年代の服に合わせて歩いていると、
おしゃれな女性たちが声をかけてきたそうです。
「それ、かわいいね」
うれしくなって、「あそこのお店にあるよ」と教えていた村山さん。
まだ、自分が靴を作るようになるとは、思ってもいなかった頃のことです。
帰国後、お父さんの紹介で、大阪の靴メーカーに勤めることになりました。
少し働いてお金をためたら、また旅に出よう。
そんな気持ちで始めた仕事が、気づけば23年続いていました。
会社に眠っていた昔の靴の資料を、夢中で読みあさる。
好きな音楽や服から受け取ったものを、少しずつ企画に混ぜてみる。
すると、その靴が売れていく。
自分の「好き」が、誰かの「欲しい」になる。
その面白さに、引き込まれていったのだと思います。
転機は、勤めていた会社の廃業でした。
独立してからも、靴の企画やデザインの依頼は集まりました。でも、価格や素材、売り先に合わせて考える仕事は続きます。
自分が本当に作りたい靴は、何だろう。
村山さんは、靴学校にも通い始めました。
長年の企画の経験があっても、自分の手で作るとなれば、また別のこと。
型紙や木型の設計から、学び直したそうです。
そうして探し続ける中で、ふと、自分の足元を見ました。そこには、25年前に買ったウッドクロッグがありました。
「これは捨てられへんな」
時代が変わっても、久しぶりに見直しても、やっぱりかわいい。
コロナで世の中が大きく変わったときにも、
その一足への気持ちは変わりませんでした。
さっと履けて、どこか憎めない。
いつの時代にも、自分らしく履ける靴。
作りたいものは、ずっと自分のそばにあったのです。
ところが、作ろうと思っても、作り方が分かりません。木底は、どこから手に入れるのか。
誰に教わればいいのか。
調べ続けて、ようやく見つけたのが、
スウェーデンの老舗メーカーでした。
村山さんは、その相手に長い文章を送ります。
10代の頃から、この靴が好きだったこと。
長く靴の仕事をしてきたこと。
日本で作り、そのよさを伝えたいこと。
しばらくして、返事が届きました。
「そんなに好きなら、教えてあげるよ」
木底を送ってもらい、動画で作り方を教わる日々が始まります。
世界のいろいろな靴工場を見てきた村山さんも、
クロッグの作り方には驚いたそうです。
「まさか、こんな作り方なんや」
思わず「キャー!」と声が出た、と聞いて、
長年靴を作ってきた人が、そんなふうに喜べることを、僕はいいなと思いました。
好きなものの前では、
何年たっても夢中になれるのですね。
現地ではじめてわかった事
それでも、動画だけでは分からないことが残ります。
村山さんはスウェーデンへ行き、
工房で働かせてもらうことにしました。
そこで、ようやく作り方の肝をつかめたそうです。
教えてくれた師匠の工房では、
定番の形が約160年前から、大きく変わっていないそうです。
足し算も引き算もいらなくなった靴。
日々の暮らしで履かれながら、少しずつ使いやすく磨かれてきた形。
村山さんが惹かれた、あのかわいらしさの奥には、長い時間が育てた「用の美」がありました。
現地で学んだからといって、すべてが解決したわけではありません。
日本の革、日本の気候、自分の工房の機械。
それぞれに合わせて、調整を重ねていく必要があります。
うまくいかなければ、考えて、試して、また直す。
「まだまだ途中です」
村山さんは、そう話します。
かつて親族が文房具屋を営んでいた家。
長く暮らしを支えてきた場所で、
今は一足ずつ、クロッグを作っています。
村山さんにとって、クロッグは
「あえて、自分で選んで履く靴」
なのだそうです。
「自分が、これがいいから履く」
その言葉は、19歳のとき、白いクロッグを選んだ姿と重なります。
誰かに薦められたからでも、
仕事にしようと思ったからでもなく、
ただ、かわいかった。
その気持ちが長い年月を越えて、
大阪の小さな工房につながっていました。
Mallet ベルサ(ブラック)《10/24(土)11時販売スタート》42,000円(税込46,200円)
さがしモノの旅をしていると、
ものの向こう側に、
作り手の人生が見えることがあります。
マレットのウッドクロッグには、
村山さんが好きでい続けた時間と、
それを形にするために動いた時間が詰まっています。
25年たっても、やっぱりかわいい。
そんな一足に、僕たちも出会えたら、うれしいですね。

Mallet ウズ(ダークブラウン)《10/24(土)11時販売スタート》38,000円(税込41,800円)

Mallet ウズ(ブラック)《10/24(土)11時販売スタート》38,000円(税込41,800円)
最後に、
今回のPOP UP開催の決め手になった話を。
それは、靴マニアの妻のひと言でした。
クラシックな革靴が好きな妻が、
ウッドクロッグに足を入れた瞬間、顔つきが変わったのです。
「信じられないくらい、履きやすい!」
長い年月をかけて磨かれた形を、
足の方が先に分かったのかもしれません。
見て、ステキ。
履いて、びっくり。
ぜひ、足を入れて確かめに来てくださいね。
「Mallet ウッドクロッグ展」
〈日程〉2026年10月24日(土)-11月4日(水)11:00-19:00《10月27日(火)店休日》
〈場所〉カタカナ自由が丘店・カタカナオンラインストア
もっと知りたい!
河野夫婦とマレット村山さんの対談です。
長いけど、面白い!
お時間のある時にどうぞ。。
マレット 対談特集 ウッドクロックの誕生秘話
これからムジパトでは、
こんなふうに、ときどき
**「さがしモノの旅」**の話もお届けしていこうと思います。
それは、
僕たち河野夫婦が
・どんなモノに心が動くのか
・どんな作り手と話したいと思うのか
・何を大切にしてお店を続けているのか
そんなことを、
少しずつ感じてもらえたらうれしいからです。
ムジパトは、
ただ服を紹介する場所ではなく、
僕たち夫婦の「好き」と「選ぶ理由」がにじみ出る場所でありたい。
そんな気持ちで続けています。
さて、
明日はまた、いつものムジパト通常回。
安心の無印良品パトロールに戻ります。
旅の話は、また折を見て。
今日も最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

河野夫婦でした。
仲良し夫婦の無印良品パトロール
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