狂躁亭日乘・映画道草20151117 | おととひの世界

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   HITLER ;The Rise of  Evil

 ヒトラー、邪悪なる者の顕現

2003年  アメリカ カナダ 。
エミー賞 2部門受賞   179分  前編 後編
市販及びレンタルあり


アドルフ ヒトラー
      ロバート カーライル

ヒンデンブルク
ワイマール共和国 大統領
       ピーター オトゥール

現在手元に原本がありません。
すべて 頭の中にある記憶だけです。
なので セリフ その他は正確では
ないかもしれませんが
おおよその通りだと思います。

この物語には二次大戦の話は
入っていません。
この 20世紀の怪物的人物が
どのようにして生まれ
どのようにしてはぐくまれ
最終的に大権力者に
なってしまったのか?

新聞記者の目を通して
描き出すという手法になっています。
ロバート カーライルは
大変な熱演ですが

こういっちゃなんだけど
アドルフ・ヒトラーというよりは
なんとなく あの

勉強しまっせ!の人に、似ている
アジ演説をぶちながら

今にもやりだしそうに見える。

笑い出しそうになるのを
こらえながら、みていただきたい。

ヒンデンブルク大統領役で
あの名優 ピーター オトゥールが。
なかなかでしたよ。

いよいよ国会内でナチス党が
第一党になるか、という時に
大統領 ヒンデンブルク に
ヒトラーが子分をつれて

すると ヒンデンブルク大統領

  「ノオォォォォー!(とんでもない)

    お前のようなモノに首相指名の
    大命をくだせ、だと?

    神が 絶対に御許しにはならぬわ!
   
     そんなことをすれば死んだ後
     私が どうして全能なる神に
      顔むけなどできようか!
     笑止千万なり!

     ゲロウども! 恥を知れっ!」

ヒトラー

     「そうですか。どのみちあなたが
       後悔することになるというのに」
     
       「ただちに国会を解散します」

        「あのおいぼれ 犬め!
    すぐに吠えずらをかかせてやるぞ!」


オーストリア 、アルプスの山裾の
プラウナウという田舎。
地方公務員の父親、親子ほど
年が離れた母親、その間の子。

1889年4月20日生まれ。
かなり閉ざされた山里なので
ただでさえ近親結婚が多く
そのためによる問題がかなり
おきていたところです。

田舎ではありがちな 話ですよ。

しかも ヒトラーは
実の叔父と姪との間の子供です。

日本をふくめてかなりの国で
婚姻関係 が認められない
近親結婚です。

アドルフ ヒトラーのあの異様な
人格の偏りは、私などは
そのせいであろうと思っています。

表向き それを学術的に立証した
論文がないだけの話でね。

一人っ子で甘やかされて育った。
元々奇矯で目立ちたがりの性格。
12歳で軽蔑していた
小役人の父親が死んだ。

父親が偽善的人間であると
子供は悪い方にグレやすくなる。

ドイツあたりでは 神父の子供で
よくそういう報告があります。

美術学校 受験したものの
試験官を怒鳴りあげたりする
いかれた学生。何度も 浪人する。

文化的爛熟の頂点にあった頃の
音楽の都 ウィーンで、彼は
ルンペン生活を送っていた。

当時のウィーンは
ニューヨークやロンドン に
匹敵するコスモポリタンだった。
元々何度も トルコ人 に包囲された
ことがあった。オーストリア
ハンガリー帝国の都。

裏通りには異民族の楽師が
たくさんいたし
ウィーン国立歌劇場の監督は
ヒトラーがやってくる 少し前まで
ユダヤ人 の天才作曲家・指揮者
グスタフ マーラーがいた。

シュニッツラー、クリムト
ホフマンスタール。

ユダヤ系はたくさんいたし
パトロンや文化プロデューサーら
多くはユダヤ人だった。

ウィーン を本拠とした
ユダヤ系の鉄鋼王の息子が
ルートヴィヒ ウィトゲンシュタイン。
後にコンピューターを作ることになる
ノイマンもここで青春はすごしている。

19世紀末から20世紀初め
ウィーンで2度目のルネサンスが
起きていた。それを横目で
見ながら青春時代を
ルンペンとして過ごしていたのが
ヒトラーだったわけで。

彼の音楽的アイドルは
ワーグナーのローエングリンと
ジークフリートでした。

どちらもゲルマンの救世主です。
劇場の桟敷席で、夜になれば
音楽だけ浴びるように聴いていた。
ゲルマン民族至上主義と
反ユダヤ主義は
この街ではぐくまれた。

金も学歴もないので高等教育は
受けられない。だから図書館で
大半の時間を、ありとあらゆる
ざっぱくな知識の吸収に。
これが後の独裁者を作る。

第一次世界大戦 。
彼は ドイツ軍兵士として従軍。
たいていのヒトラー伝では
瞬足であったが故に斥候として重宝され
ボヘミアの伍長 止まりだったことに
なっている。

ところが 実はそうではなかった。

このドラマそのあたりの最新の
研究成果が きちんと入っている。

彼は勉強家だった。
それを参謀本部にみこまれ
兵士の中に共産主義者 のスパイが
いないかどうかを見張る
というのが本当の任務の
密告屋だった。

彼が立ち去ったところに
砲弾が落ちてくる。
機銃掃射があっても 彼だけが生き残る。
強運 伝説は当時からついてます。

その経験を通じて 彼は
自分に特別な任務があるものと
思い込むようになった。

ロシアでは革命が。
敗戦後のドイツでも軍隊の組織
非公然活動は続いた。ヒトラーは
相変わらず、うごの筍のように
出来ていた政治組織の見張りに
いそしんでいた。

その中に、トゥーレ協会 という
オカルト同好会から分かれた
政治組織があった。

後のドイツ国家社会主義労働者党。
ナツィオナール  
ゾツィア リスティシュ
アルバイター    
パルタイ
略して ナチス党。

ヒトラーはここに
旧参謀本部幹部より入党を命じられる。
党員番号007、冗談ではなく
あくまで 潜入スパイでした。

そこで 党首から
ビアホールでいっ席ぶってみろ
と言われる。その場の即席の演説で
彼は演説の才能に目覚める。
ミイラ取りがミイラになった。

元々内に秘めていた歪んだ憎しみ
あくなき暴力への衝動が
ここで初めて爆発した。

ここから あっという間に
党内の実権を握っていく。

その頃 ドイツは共産主義者が
幅をきかせていた。
それを軍隊帰りの愚連隊組織が
街中でけ散らすということを
ごく日常的にやっていた。

その首領だったのが
男色家としてもよく知られていた
元兵士エルンスト・レームという男。
その愚連隊は突撃隊SAと呼ばれ
組織はナチス 以前からあった。

初めはヒトラーから頭を下げて。

後にその組織が邪魔になると
ヒトラーは別の組織
親衛隊SSを組織、
号令一下で突撃隊を皆殺しにした。
このあたりは三島由紀夫の戯曲
「わが友ヒットラー」に
とてもリアルに描かれています。
このドラマも そのせんで。

ヒトラーが頭角をあらわし始めると
オーストリアの田舎の平民の
ヒトラーに対する
貴族出身の軍人からの嫉妬が
公然とあらわれ始めます。

そこで彼らは秘密会議を催し
ヒトラーを招集しない上で
緊急動議で彼を解任しようと図ります。


この動きに気づいた ヒトラー
絶体絶命の劣勢を挽回するため
なんと ミュンヘンのビアホールから
世にも稀な無謀なクーデターを。

これがいわゆるミュンヘン一揆です。

なぜ ミュンヘン一揆が起きたかに
ついての顛末、最新の歴史研究成果が
ちゃんと盛り込まれていました。

公然たるクーデターですから
普通の裁判であれば 死刑。

ところが この裁判が
ヒトラーのワンマンショーに
なってしまいます。

  「我が国籍を名乗れとは
       どういうことか?
    それは制度のことを言っているのか?
   
    それとも我が魂のことを
       我が血のことを言っているのか?

    目の前に、我らが兄弟の
    財産をうばい、娘たちを 凌辱し
    そして 笑いながら命を奪おうと
     しているけだものどもがいる。

     そのような時に
     奴らを倒すことが罪だと言うのか?

     私は逃げも隠れもしない。
     罪を認めろ と言うなら
     なんのためらいもなく認めよう。
   
     わが祖国の法によって
        潔く裁かれようではないか。

     私は、わが民族の財産を、
       生命を、そして何より

     誇り高きゲルマンの血の尊厳を
        命がけで守ろうとしたが故に
     法によって裁かれ有罪となるのだ!」

弁明が終わるとともに万雷の拍手です。
ドイツ全メディアが大きく報じました。
数ヶ月間 ランツベルク城に
監禁されるだけという
異常に寛大な措置で
この裁判は終わります。

そして 新聞記者、妻にこういいました。

「  彼の正体は 今日わかった。

     彼は本物の悪魔だ!!

   人間の性格や弱みを徹底的に
  研究するために、奴は
   一度人間として生まれて顕れたのだ。

   我々は一番鍵を渡しては
   ならないやつに
   鍵をわたしてしまったんだよ!!」

ランツベルク刑務所では
囚人どころか 王のような暮らし。
監守にあたる兵隊は
全員がヒトラー信者なのですから。


おつとめが終わった ヒトラー
留守の間に党内の実権を
にぎりつつあった
もともと左翼の
グレゴール シュトラッサー
及びの後の宣伝相
ヨーゼフ  ゲッペルスを
党本部で直接恫喝、
再び党内全権を握ります。

「私は行動するのみである。
   その結果 二つの未来が予想される。
   我々が死ぬか やつらが死ぬかである。
   もしも私が死んだときは
   血で染めた党旗で私の屍体をくるめ!
   
   勝利万歳!!(ジークハイル!)」

一同

「ジークハイル !!ジークハイル !!
   ジークハイル!!」


そして かつての上司だった
ルーデンドルフ将軍に引導を渡します。

 「お前が一度でも党の役に
      立ったことがあるのか!?
    まだその能力があるというなら
    自らを恥ずかしいと思え!!」

最初は議会の中に、
数人しか
党員はいなかった。ところが
少数意見を徹底的に尊重するように
できていた

当時のワイマール憲法のおかげで

徹底的に 議事妨害を繰り返し
そのたびに議会は解散。

最終的には一年間に4回
議会を解散するという
異常事態に陥ります。

ナチスは確かに暴力は使ったものの
あくまで合法的に選挙で
政権を取っているんです。

このあたりは数を頼んだ
クーデタで政権を取った
ムッソリーニとは
根本的にことなります。

最後に このドラマでは
ヒトラーの謎の女性関係について
詳しく描写されています。

ゲリ ラウバル という姪がいた。
実の娘同様に、そのうち愛人に。
やがてはヒトラーの束縛的愛情に
たえかねて、ヒトラーの拳銃で。

どうやら アドルフ ヒトラーという
男にとっての 人生最大の挫折は
このことだったようで。

ゲリ ラウバルの部屋は
残されたままにしていたという。
命日には必ず花をたむけに来たという。

この時の憔悴狼狽は大変なもので
しょげかえってもう政治を辞めると
本気で言い始め、

ゲーリンクやヒムラー、ゲッペルスを
おおいに慌てさせたそうです。

やめといてくれればよかったのにね。