字を書くのが楽しくなり、もっとお稽古したくなるペン字・書道教室の太田真采世です。
昨日、「春きたる」という作品の紹介をしました。
この作品を書いている紙(料紙)は継ぎ紙風の印刷料紙です。
仮名の作品は「料紙」に書くのが一般的ですが、この「料紙」ってご存知ない方も多いと思いますので、今日はそのお話をいたします。
独特な技法で染料や顔料で色付けしたり、文様を刷り込んだり、金・銀の箔加工などの装飾を施した紙を料紙といいます。

一言で料紙と言っても、染めたり塗ったり箔をのせたりと製法も多彩であり、色彩豊かで実に優美です。
また装飾の意味合いだけでなく、漢字を書く画仙紙などとは違い、ドーサを引いてにじみ止めの加工を施した紙となっています。
仮名は墨量の変化、線の太細、散らし書きの散らし方による粗密、余白の使い方により表現される美しさが特徴ですが、にじみ止めの加工がされているために、線の美しさが表現できるといっても良いでしょう。
また、仮名を書く場合、和歌の内容や季節により料紙の色や絵柄を変えたり、紙の模様の位置により散らし方を変えたりします。
私の所属する神戸笹波会の理事長代行の中室舟水先生が出版された「かな書へのいざない」にも「さまざまな料紙」について解説され、下記のように書かれています。
以下抜粋
「かな書は料紙とともにある、言い換えれば色彩とともにある表現世界とも申せましょう。
かな書の表現では、歌の内容や季節に合わせて、イメージに合うものを選んだり作ったりします。
~中略~
かな書は料紙とともにありますから、鑑賞する際も、料紙と書の調和、響きあいに注目しましょう。
見える世界が違ってきます。」
本当にさまざまな加工を施された料紙があります。

平安時代には和歌・物語などにふさわしい優雅で繊細な趣のある紙が求められました。
さまざまな意匠をこらした装飾料紙は、王朝貴族たちの感性を今に伝えるものです。
そして平安時代に書かれて現代にも素晴らしい仮名書として伝わっている「古筆」は、装飾された和紙に美しいかな文字で書かれており、「古筆」に使われている装飾された和紙をお手本として仮名料紙は作られています。
料紙に書かれている古い文献として有名なものに平家納経・寸松庵色紙・源氏物語絵巻などがあり、その美しさを1000年以上も保ちつづけているのは驚きですね。
さて、昨日の作品の継ぎ紙に話を戻します。

継ぎ紙とは、文字通り紙を継いで作られますが、継ぎ方により『破り継ぎ』『切り継ぎ』『重ね継ぎ』という種類があります。
それぞれ別の料紙をジグザクに切り、2ミリほどを重なるようにして、つなぎ合わせて1枚の料紙を作り上げるのですが、使用する紙の色の取り合わせ、配置、元の紙の絵柄との調和など、王朝貴族の美意識がうかがえます。
本当に継いで作った継ぎ紙は1枚6,000円~12,000円ほどで、なかなか手が出しにくい価格ですので、継いだように印刷されているのが印刷料紙と言われるものです。
印刷料紙でも雰囲気は十分楽しめますよ。
この作品では足元を落ち着かせるために、紙の継いだ部分を下に配置して使っていますが、これを逆さまにして使っても構わないのです。
そしてこの継いだ部分が上にきていると、散らし書きの散らし方(レイアウト)も変えることになります。
やはり色の入っている部分は重たい印象となりますから、そこに墨の入った字を配置する方がバランスが取れます。
昨日の作品は2つ目の文字の塊を下に配置して、上部の白い部分には文字を書かずに余白として残していますよね?
余白を広く見せ、文字の入っている部分との対比を出したいので、白い部分を空けてあるのです。
このように散らし書きは、紙とのバランスも考えて決めております。
いかがですか?
紙の色や模様により散らし書きの構図が決められていることは初耳でしたか?
平安時代に今で言うパッチワークのようなクラフトが紙に施されていたなんて驚きではないですか?
これを機に、平安の文化に興味を持っていただけたら幸いです。
こちらの教室では、こういうことも教えられる先生に仮名を習うことができますよ。