「ムカデ人間」にする? それともリドリー・スコット?
映画『ラスト・サバイバー』
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今回もU-NEXTポイントの有効期限が迫っていたため、ポイントを消化して映画館鑑賞へ行ってきました。
どこで観ようかと探していたところ、気になるニュースをキャッチ。
なんと横浜駅西口にある老舗映画館「相鉄ムービル」が、9月30日をもって閉館するとのこと。
それに伴い、8月28日から「ムービルグランドフィナーレ」という特別企画が始まり、37年間の感謝を込めて30作品もの名作・話題作が特別上映されるよう。
そのラインナップを見て驚いたのですが……
なんと、過去にこのブログでも取り上げたトラウマ映画、
『ムカデ人間』
が入っているではありませんか!
私は以前、配信ではそのシリーズ全てを鑑賞しております。もちろんブログもアップ済み。ただ劇場では鑑賞経験がないので
「あの狂気の世界を映画館の大スクリーンで観たら、どうなってしまうのか……」
という興味と、
「いや、劇場で観る勇気があるのか?」
という葛藤が(笑)。
当日まで『ムカデ人間』にするか真剣に迷ったのですが、最終的には巨匠リドリー・スコット監督の最新作、
『ラスト・サバイバー』
に落ち着きました。
いやぁ~ムカデ見ておけばよかったかな?
前置きが毎度のことながら長くなりましたが、さっそく感想にいってみましょう!
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⚠️ ここから先はネタバレを含みます。
未鑑賞の方はご注意ください。
■作品情報
2026年製作/119分/PG12/アメリカ
<原題>
The Dog Stars
<監督>
リドリー・スコット
<キャスト>
ジェイコブ・エロルディ
ジョシュ・ブローリン
マーガレット・クアリー
ガイ・ピアース
アリソン・ジャネイ ほか
■内容〜荒廃した終末世界を生きる〜
謎のパンデミックによって人類の大半が死滅し、文明が崩壊した世界。
生き残った人々は、わずかな資源を巡って奪い合い、殺し合う殺伐とした日々を送っていました。
コロラド州の飛行場を要塞化した拠点で暮らす、パイロットのヒッグ(ジェイコブ・エロルディ)と、元軍人のバングリー(ジョシュ・ブローリン)。
ふたりは共同戦線を張り、迫りくる襲撃者から身を守りながら、なんとか生き延びています。
ヒッグの心の支えは、愛犬ジャスパーの存在と、亡き妻の記憶。
そんなある日、ヒッグは愛機であるセスナの無線で、過去に一度だけ受信した謎の音声信号のことを思い返します。
もしかすると、
「どこかに感染を免れた、安全なコミュニティが存在するのではないか?」
世界の終わりに希望を見出したヒッグは、愛犬ジャスパーとともにセスナで未知なる空へと飛び立つ決意を固めるのですが……。
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■生き残るためには、誰も信用できない
この世界では、人間そのものが脅威です。
物資を求めて移動すれば、よそ者から襲撃される。
外へ出れば、凶暴な動物にも襲われる。
「人間がほとんどいなくなった世界なら、少しは平和になるのでは?」
そんなことはありません。
むしろ、生き残った人間たちは、
「殺すか、殺されるか」
という厳しい状況に置かれています。
そんな中、最愛のパートナーであった愛犬ジャスパーをある出来事で失い、深い失意の底にいたヒッグは、あるトラブルから山中へ不時着してしまいます。
そこで出会ったのが、人里離れた場所で暮らしていた父親と娘でした。 父親のポップスと、その娘シーマです。
最初は警戒しながらも、ヒッグは二人と行動をともにするようになります。
そこで、ヒッグの世界に少しずつ変化が生まれていきます。
これまでヒッグの支えだった愛犬や妻の記憶——失うことばかりだった彼の人生に、新たな人とのつながりが加わっていくのです。
■「モルモン教」と「メノナイト」——文明崩壊後の生き方
そして、物語の中で個人的にとても興味深かったのが「宗教」をめぐるやり取りです。
作中、元軍人のバングリーは、ヒッグがセスナで関わりを持つある生活共同体のことを
「あんなモルモン教徒どもに関わるな」
と嫌悪感を露わにして突き放します。
しかし、実際にヒッグがセスナで飛んで物資を届け、密かに交流していたのは、モルモン教ではなく「メノナイト」の共同体でした。
*(メノナイトに関して)
詳しいことを知らなかったので少し調べてみると
メノナイトはキリスト教の伝統的な一派で、モルモン教とは全く別の宗派です。

彼らはもともと電気や現代技術に深く依存せず、農業などを中心とした質素で自給自足的な共同生活を営んできた人々のようです。
ここに、映画の非常に皮肉で面白い対比が描かれています。
文明に依存していた人々が崩壊によって一気に困窮し、奪い合う狂気に陥った一方で、もともと文明に頼っていなかったメノナイトの人々は、世界が滅びても以前と大きく変わらない生活を静かに続けているのです。
銃と暴力で自衛し「誰も信用しない」バングリーの生き方と、助け合いと信仰によってコミュニティを維持するメノナイトの生き方。
この「正反対の価値観」の対比が、物語の後半でヒッグたちが選ぶ道とも深くつながっていきます。
■ 謎の無線の先にあった「グランド・ジャンクション」
『ブレードランナー』など名作を手掛けた巨匠リドリー・スコットが手掛けるディストピア作品。 一体どんな展開が待っているのか、興味津々で観ていました。
しかししかし…… 正直に言うと、中盤あたりまでは大きな起伏もなく
「う〜ん、どうしたの!?」
という感じ(笑)。
まじに今回は外れたかなと思っておりました。
ところが、物語が大きく動くのはヒッグが謎の無線の発信地へ向かってからです。
山奥の生活にも魔の手が伸び、襲撃される。
危機一髪で脱出したヒッグ、シーマとその父親が向かった先。それが、謎の無線の発信地、グランド・ジャンクションでした。
殺伐とした世界を見続けてきたヒッグにとって、そこは「希望の場所」のように見えました。
ところが、そこで目にした光景に驚きます。
これまでの荒廃した世界とは、まるで正反対。
そこの代表者はスチュワーデスの制服に身を固めている。
カラフルなバーとあふれるお酒。
優雅にゴルフの練習まで嗜む華やかな人々。
BGMに流れるのは『Fly Me to the Moon』。
この曲は個人的には好きな曲です^^
なんと、スチュワーデスの制服に身を固めた人物が口ずさむのですが、なんともいえない不気味さを醸し出していました。
あまりに浮世離れしたその光景……
頭に浮かんだのは「ブレードランナー?」の世界。
そして、映画『シャイニング』のあの豪華なホテルの中で、バーテンダーがいてパーティが開かれている場面。
華やかなのに、どこか異様で不気味な世界が同時に浮かびました。今回のグランド・ジャンクションにも、そんな強烈な違和感を覚えました。
■ しかし、甘い夢の終わりと「現実」
水もある。
食べ物もある。
人もいる。
荒廃した世界とは思えない、夢のような場所。
しかし…… もちろん、そんな都合のいい甘い話ではありませんでした。冷凍庫で保存されていた肉の数々は……ここでは恐ろしくて言えません(ネタバレにもなってしまいますしね)。
そこで明らかになるのは、大規模な復興コミュニティなど存在しないという事実と、謎の無線の正体です。
あの通信は現在進行形で救援を求めているものではなく、かつて発信された「過去の残り香」にすぎませんでした。
ヒッグが夢見ていた「失われた文明の復活」という淡い期待は打ち砕かれます。
■「おぉ~、ここからがリドリー・スコットだ!」……と思いきや?
「 ここからリドリー・スコットの真骨頂(怒涛のクライマックスや、ド派手な展開)が炸裂するのか!?」
ところが…… う~ん。
長くは続かなかったのです(笑)。
もちろん映像は素晴らしい。
荒廃した世界のロケーションも素晴らしい。
グランド・ジャンクションの異様な雰囲気もいい。
役者さんたちの演技も最高です。
でも、「ここから一気に来るぞ!」と期待したところで、物語は静かなヒューマンドラマのまま着地していき、思ったほどの爆発力がなかったのでした。
巨匠の作品だけに「もうひと波乱あるのでは」と期待してしまった分、ここはちょっと残念(物足りない)ポイントでした。
■そして、最後にヒッグが選んだもの
そして物語の最後。
ヒッグは、グランド・ジャンクションのような「特別な場所」に希望を見つけたわけではありません。
むしろ、彼がたどり着いたのは、
人間同士が助け合って暮らす共同体
でした。
そこにはメノナイトの人々もいます。
武器を持ち、自分たちだけで生き残ろうとするバングリー。
人とのつながりを求めるヒッグ。
そして、助け合いながら暮らすメノナイト。
それぞれの生き方が並べられています。
愛犬ジャスパーも、亡き妻も、もう戻ってきません。
それでもヒッグは、失ったものを抱えながら、新しい人とのつながりを選んでいきます。
ラストでは、ヒッグとシーマが空を見上げます。
そしてヒッグは、愛犬ジャスパーを思わせる星に、その名前をつけます。
ここで、原題の
「The Dog Stars」
にもつながってくるんですね。
失ったものを取り戻すことはできない。
でも、その記憶を胸に抱きながら、新しい人生を生きていく。
そんな静かなラストでした。
■ほくと的まとめ
それなりに良い作品なんだけど……何かが足りない。
キャストも良い。
映像も素晴らしい。
終末世界の描き方も印象に残ります。
でも、観終わって
「これは凄かった!」
とか
「これは心に残った!」
とまではならなかったんですよね。
あくまでも個人的な意見です^^;
もう少し、何か欲しかった……。
とはいえ、この作品が描いているのは、孤独の中でただ生き延びるサバイバルではありません。
傷つきながらも人とつながり、失ったものを抱えながら、それでも新しい希望を見つけていく。
そんな静かな人間ドラマなのだと思います。
派手な展開を期待すると、少し物足りなく感じるかもしれません。
個人的には、リドリー・スコットという監督への期待が大きすぎたのかもしれません(笑)
評価:5点満点中3.5
(画像すべてお借りしました)














