父が生んだのは、
怪物か、それとも息子か。
ギレルモ・デル・トロが描く『フランケンシュタイン』は、単なるモンスター映画ではない、創造と孤独をめぐるゴシック悲劇だった。
映画「フランケンシュタイン」
(2025) アメリカ/150分/配信:Netflix
<監督>
ギレルモ・デル・トロ
<キャスト>
オスカー・アイザック、
ジェイコブ・エロルディ、
ミア・ゴス、
クリストフ・ヴァルツ
(作品内容)
ギレルモ・デル・トロ監督が、メアリー・シェリーの古典小説『フランケンシュタイン』を新たな視点で実写映画化した作品です。
19世紀ヴィクトリア朝時代。
天才科学者ヴィクター・フランケンシュタイン(オスカー・アイザック)は、「死」を克服しようという野心から禁断の実験に挑みます。
彼は死体の身体を組み合わせ、生命を吹き込むことに成功します。しかし生まれた存在は、彼の想像を超える“怪物(ジェイコブ・エロルディ)”でした。
当初ヴィクターは成果に興奮しますが、その存在は理想とはほど遠く、やがて周囲から恐れられる存在となっていきます。
怪物は自分の存在理由、そして
「自分とは何者か」
を探しながら、創造主であるヴィクターへと迫っていきます。
二人の関係はやがて悲劇的な運命へと進んでいくのでした。
※この記事はアカデミー賞発表前に執筆したレビューです。公開時点で結果はすでに出ています。
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見ごたえ十分、そのうえで気になった点も
見ごたえのある作品でした。
アカデミー賞では9部門にノミネート。
この記事がアップされるころには結果も出ているはずですが、「どうなったのだろう」
と想像しながら書いていますのでご了承ください(笑)。
ちなみに3部門を受賞しました。
映像もストーリー展開もすばらしい作品でしたが、“ん?”……そのあたりは最後に触れることにします(笑)。
冒頭からひきつけられる話の展開
物語は、北極海を航行する船が瀕死の科学者ヴィクター・フランケンシュタインを救助する場面から始まります。

彼は自分が生み出した怪物に追われていることを語り始めます。
この怪物、とにかく強く、ライフルの弾も効きません。
ここから先は未鑑賞の方も多いかと思いますので、肝心なところはネタバレなしで進めますね。
二つのパートで描かれる物語
本作は大きく二つのパートで構成されています。
(第1部 科学者ヴィクターの物語)
前半は、天才科学者ヴィクター・フランケンシュタインの物語。

親子の関係なども描きつつ、若き科学者ヴィクターは
「死を克服し生命を創造する」
という禁断の研究に取り憑かれる様子を描いています。
そしてついに死体から生命を生み出すことに成功します。
しかし誕生した存在の姿に恐怖し、自らの創造物を拒絶してしまうのです。
(第2部 怪物の物語)
後半では怪物の視点から物語が語られます。
人間に受け入れられたいと願いながらも、その姿ゆえに拒絶され続ける怪物。

やがて孤独と怒りを抱き、創造主ヴィクターへの復讐を誓います。
その復讐はヴィクターだけでなく、弟ウィリアムの婚約者であり、ヴィクターにとって特別な存在であったエリザベス(ミア・ゴス)にも及ぶことになります。
こうして物語は、創造主と被造物の悲劇的な対立へと進んでいきます。
モンスター映画ではなく「ゴシック悲劇」
フランケンシュタインと聞くと、単なるモンスター映画と思われるかもしれません。
しかしこの物語は、暗く不気味な雰囲気の中で人間の罪や狂気、運命による破滅を描く ゴシック悲劇 と言える作品です。
ヴィクターの視点から始まった物語が、やがて怪物の視点へと移ることで、物語は切なく深いドラマへと変化します。
ラストでは、思わず胸を打たれる展開が待っています。ウルっとくる場面はありますが、ウルウルまでにはいきませんでした(笑)。
本作で描かれるテーマは
- 創造主と被造物の倒錯した親子関係
- 愛と虐待のねじれ
- ヴィクターの傲慢と後悔
- 怪物の孤独と愛への渇望
まさに “愛されなかった者の復讐と救済” の物語です。
ミア・ゴスの存在感
作品を観ていて
「この人見覚えがある」
と思ったキャストがいました。
エリザベスを演じるミア・ゴスは、以前取り上げたラース・フォン・トリアー監督作品、
映画『ニンフォマニアック』では主人公ジョーが“後継者としてスカウトする少女”を印象的に演じていました。

その作品から12年の時が経過していますが、雰囲気はそのまま。今回も確かな存在感を示しており、作品のドラマ性を引き立てています。癖になる女優さんですね。
個人的に気になった点
さて、冒頭で触れた“ん?”の部分ですが、ここで回収しておきます(笑)。
フランケンシュタインの怪物と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは1931年版のボリス・カーロフのモンスターではないでしょうか。
ほくと調べ(笑)によると、ほとんどの人がこのモンスターを思い浮かべる……いや、間違いなく思い浮かべるはず!
ボリス・カーロフのモンスターの印象が強いだけに、今回の怪物は整いすぎている印象を受けてしまったのです。
綺麗すぎるのですよ。
「当時の技術でここまで美しくモンスターを作れるのか?(今の技術でも作れるはずはないと思いますが(苦笑))」
と、少し違和感もありました。

まぁ見方を変えれば、今回の怪物は知性的で描かれているし、奇麗すぎるからと言って今作の内容に影響があるわけではありませんけどね。
モンスター役のジェイコブ・エロルディは熱演していますが、個人的にはその部分がどうも気になって気になって^^;
とはいえ、こうした点を踏まえても本作は十分に見ごたえのある作品でした。
ほくと的総評
物語として非常によくできていて、創造主と被造物の関係を描いたドラマとして印象に残る作品でした。
単なるモンスター映画ではなく、人間の傲慢さや孤独、そして愛を求める心を描いた重厚なゴシック悲劇に仕上がっていました。

特に後半、怪物の視点から語られる物語は切なく、盲目の老人とのふれあいからラストに向けての展開には思わずホロリとさせられました。

クラシック文学を原作としていますが、現代の観客にも
「創造することの責任」
や
「人間とは何か」
を問いかける映画です。
怪物映画としてではなく、深いドラマとして味わっていただきたい一本。気になる方はぜひご覧になってみてください。
5点満点中3.8
(画像すべてお借りしました)











