英国の有名医学誌LANCETの電子版の論文を紹介します。
n-3系多価不飽和脂肪酸(PUFA)が、不整脈を含むアテローム性心血管疾患に好ましい影響を与えると以前より報告がありましたが、では、心不全患者の死亡を抑制できるのでしょうか。
イタリアで先に行ったGISSI-Prevenzione試験は、心筋梗塞後にn-3系多価不飽和脂肪酸を投与すると患者の死亡率が下がることを示しました。死亡率の低下は主に心臓突然死の減少に起因していました。一方、心不全患者に対するn-3系多価不飽和脂肪酸の効果については、これまで、大規模研究による評価が行われていませんでした。
そこで研究グループは、大規模な二重盲検のプラセボ対照無作為化試験GISSI-HFを設計、イタリア全土で行うことにしました。
2002年8月6日から2005年2月28日までに、イタリア国内の326カ所の心臓専門医療機関と31カ所の内科医療機関において、18歳以上の慢性心不全の患者を登録し、これらの患者を、無作為にn-3系多価不飽和脂肪酸 1g/日群(3529人)またはプラセボ群(3517人)に割り付けました。n-3系多価不飽和脂肪酸には、EPAとDHAが1:1.2の割合で含まれていました。
追跡は2008年3月31日まで行われた。
その結果、血漿トリグリセリド値は、投与群でわずかに低下が認められました(ベースラインの中央値が1.42mmol/L、1年後が1.36mmol/L、3年後は1.34mmol/L)。一方、プラセボ群では変化は見られませんでした。なお、試験期間を通じてHDLコレステロール値、LDLコレステロール値に両群間の差はありませんでした。
全死因死亡は投与群955人(27%)、プラセボ群1014人(29%)で、前年の心不全による入院歴、ペースメーカー使用歴、大動脈狭窄の既往で調整したた結果でも投与群で有意に低いでした。全死因死亡または心血管イベントによる入院は、介入群1981人(57%)、偽薬群2053人(59%)で、それも投与群で有意なリスク低減が示されました。
以上の結果は、n-3系多価不飽和脂肪酸が、標準的な心不全治療を受けている広範な慢性心不全患者の死亡と心血管イベントを幾分か抑制できる、簡便で安全な治療であることを示唆しました。
論文の原題
Effect of n-3 polyunsaturated fatty acids in patients with chronic heart failure (the GISSI-HF trial): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial