中学受験国語

読解力向上委員会

第4回


前回までは……




読解五可養の力

1. 他者の発信している情報を適切に理解する力

【求められるスキル】客観性 情報整理


2. 他者が置かれている状況を理解する力

【求められるスキル】背景把握力 文脈把握力


3. 他者の言動の理由を推察し、心情を把握する力

【求められるスキル】想像力、共感力、論理的思考力


4. 他者からの問いかけを適切に理解すること

【求められるスキル】設問分析力、要求把握力問題文


5. 自ら考えを他者が理解しやすいように述べる力


第一回でお話させてもらった5つの力です。

中学受験の国語は「相互理解」の力を測ることをゴールに作られています。相手を理解し、自分を理解されるための力です。

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さて、中学受験国語で、合格の可能性を大きく左右するのが記述問題です。
長文読解で知識を問う問題が解けても、記述で失点してしまうと、総合点での巻き返しは難しくなります。

この講座では、前回定義した「5つの力」のうち、最も実践的で点数に直結する以下の2点に焦点を当てます。
 * 他者からの問いかけを適切に理解すること(4の力)
 * 自ら考えを他者が理解しやすいように述べる力(5の力)
これらは、採点者という「他者」とのコミュニケーション能力そのものです。

1. 設問の意図を正確に捉える力(4の力)

記述問題で最も避けたい失敗は、「問いと答えがズレている」ことです。生徒さんがどれだけ本文を深く読めていても、設問が求める要求を理解できていなければ、点数は入ってきません。

A. 設問の「要求」を分類する
設問を前にしたら、まず「この設問は、何を求めている問いかな?」と問いかけましょう。主な要求は、以下の4つに分類できます。

 * 理由「〜なのはなぜか、説明しなさい。」
因果関係の特定(きっかけと結果)が必要です。

 * 内容「この段落の要旨をまとめなさい。」
要約力、客観性が問われます。

 * 心情「主人公はどのような気持ちか。」
 本文の根拠に基づいた心情の言語化が求められます。

 * 対比:「AとBの違いを説明しなさい。」
比較対象の正確な理解と、差異の明確化が必要です。


B. 設問の「条件」を遵守する
設問には、解答の成否に直結する「約束事(条件)」が隠れています。これを見落とさないように徹底させましょう。

 * 字数制限:「〜字以内で」という指示は、制限の8割以上を書くことを目標とします。少なすぎる字数は、「必要な要素が足りていない」と見なされることが多いからです。

 * 要素指定:「〜という言葉を使って」や「二つの理由を挙げ」など、必須要素は必ずマーキングさせます。

 * 語尾指定:「〜したからだ」「〜ということ」など、問いに合わせた適切な語尾で文章を締めくくる訓練をさせます。

 指導の問いかけ例:
「この設問の約束事(条件)はどこにある?文字数?使うべき言葉?」


2. 他者が理解しやすいように述べる技術(5の力)
記述の解答は、「採点者に向けたプレゼンテーション」です。
採点者が読みやすく、正解要素を迷わず見つけられる文章を書く技術は、訓練によって必ず身につけられます。

A. 記述の「型」を身につける
特に、最も出題頻度の高い理由説明には、解答を組み立てるための「型」を徹底させましょう。解答は、以下のパーツ(要素)を論理的に組み立てることで完成します。

 * パーツ1:原因・根拠:「なぜそう言えるのか?」の根拠を、本文から探します。(例:「〜という状況だから」「〜と思ったから」)

 * パーツ2:変化・感情:根拠から生じた心情や判断を表現します。(例:「〜と感じ」「〜と考え」)

 * パーツ3:結論・目的:設問が問う最終的な結果や行動の目的を示します。(例:「〜するために」「〜するのだ」)

解答を書いた後、生徒自身に「過不足なく」書けているかを、このパーツごとに自己チェックさせる訓練は非常に有効です。


曇り空の日。雨が降ってないのに傘を持って出かけた理由は

①雨が降りそうな天気で(原因)

②雨に濡れるのは嫌なので(感情判断)

③必要だと思ったから(結果)

という答え方が基本の型になります。


今回の場合は字数に応じて②または③のどちらかを削ることはできます。

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B. 論理性を高める技術
短い字数の中で論理性を担保するために、以下の点に注意を払わせます。

 * 接続詞の活用:「なぜなら」「しかし」「その結果」など、文と文の関係を明確にする接続詞を効果的に使います。

 * 主語・述語の明確化:「誰が」「どうした」を明確にし、文の構造を安定させます。特に、「私が感動した理由は、その本が素晴らしかった。」のような主語のねじれを修正させましょう。

 * 一文の長さ:情報を詰め込みすぎず、一文は長くても50〜60字程度に収めることを指導し、冗長な文章を避けます。

3.  採点者に「正解」を伝える技術
採点者は限られた時間で大量の答案を処理しています。私たちは、生徒に「採点者に優しく、すぐ点数を与えたくなる解答」を目指すよう指導します。

 * キーワードの配置:解答の核となるキーワードを、文章の前半や末尾に配置するなど、目を引く工夫を教えます。

 * 装飾の排除:個人的な感想や、本文に書かれていない解釈は、減点対象になり得ます。常に「本文が全ての根拠である」という原則を強調しましょう。

次のステップ
これで、「相互理解において他者を思いやる姿勢」という完成形を達成するための5つの力全てについて、具体的な指導の視点を提供できました。

次回の講座では、物語文・説明文を問わず、国語の土台となる「語彙力」と「論理的思考力」を総合的に鍛える方法、すなわち「5つの力を統合的に活用する訓練法」について、総括的な指導法としてまとめてまいります。