何度もこう言わなければいけない。
何度言っても、「先に手を出したのはハマスでしょ」という。
この思考でいる限り、一歩も認識は深まっていかないので、
機会を捕まえては、このことを色んなところで繰り返しているところです。
なので、IWJでも、このことを強調しました。〜
早尾貴紀教授
シオニストは、100年も前から、「入植(パレスチナの土地を強奪)」と「移送(パレスチナ人を追放)」を掲げ、
ベングリオンは、パレスチナの「8割の土地」を奪い、先住民を「移送(追放)」することを計画していた…
IWJ 東京経済大学の早尾貴紀教授インタビュー
早尾教授は、パレスチナ・イスラエル問題や社会思想史が専門で、『希望のディアスポラーー移民・難民をめぐる政治史』(春秋社、2020年)『パレスチナ/イスラエル論』(有志舎、2020年)などのご著書がある。
イスラエルの歴史家イラン・パペ著『イスラエルの民族浄化』(法政大学出版局、2017年)や、ホロコーストサバイバー2世の在米ユダヤ人政治経済学者サラ・ロイ著『ホロコーストからガザへーーパレスチナの政治経済学』(青土社、2009年)などを共訳。
● Ilan Pappé
https://ja.wikipedia.org/wiki/イラン・パッペ
イスラエルの歴史家、政治活動家。エクセター大学教授。
『パレスチナの民族浄化 : イスラエル建国の暴力』(2017)イラン・パペ著、田浪亜央江・早尾貴紀訳
●Sara Roy
主著『The Gaza Strip ガザストリップ』
https://en.wikipedia.org/wiki/Sara_Roy
1955年アメリカ生まれ。政治経済学。ハーバード大学中東研究所上級研究員。パレスチナ、とくにイスラエルによるガザ地区の占領問題の政治経済学的研究で世界的に知られる。

そもそも「オスロ合意」は、和平という看板を掲げながら、実際には、パレスチナの独立を実現するための内実を全く持っていなかった。
将来的に検討するといいながら、その将来が無限に先送りされるような構造になっていたのは、オスロ合意がそもそもそういう意図で設計されていたのではないか。
サラ・ロイなどは、そのように分析している。
パレスチナが独立国家として西岸地区とガザの全域を統治することはあり得なかった。
イスラエルが一切タッチしない形で入植地を放棄するということは一切約束されていないし、可能性はなかった。暗殺されたラビンも、そう思っていた。
しかし、二国の共存、和平を唱えたイスラエル首相ラビンは、自国の極右に殺される。
イスラエルには、そういう対立があった。
実は、この対立は100年前からあった。
ジャボチンスキーという非常に強硬な「全土を武力で奪る」という人と、ベン・グリオンという労働党の元になるシオニズム左派のイスラエル建国後初代首相となる人は、異なるようで、根は同じなのである。
彼らの考えは、どちらも「最大限にアラブ人の土地を奪う」ことを目標とし、「どういうスピード感で、どういう方法で奪うか」が異なるだけ。
ゼエヴ・ジャボチンスキー
https://ja.wikipedia.org/wiki/ゼエヴ・ジャボチンスキー
シオニストの指導者で修正主義シオニズムのエツェルを率いた。また、オデッサで自衛組織を創設、指導者となった。
ダヴィド・ベン=グリオン
イスラエルの政治家。首相(初代・第3代)を務めた。ナチスの弾圧によって多くのユダヤ系難民がパレスチナへ押し寄せる様になると、これを規制しようとするイギリス当局と折衝して難民受け入れに尽力した。
1947年に国際連合がパレスチナ分割を決議するとメナヘム・ベギンら率いるイルグンなど過激強硬派のテロや反発を抑えながら、独立への準備を進め1948年5月14日にイスラエルの独立を宣言した。
2023年の現在の状況で、改めて、イラン・パペの「パレスチナの民族浄化」を読むと、いかにシオニストがパレスチナ全土を狙い、アラブ、パレスチナ人を邪魔な存在として一掃しようという意図を強く明確に持って実行しようとしていたのかが分かる。
そして、今のガザ攻撃もシオニストの強い意図と行動のプロセスのひとつであることがよく分かった。

イラン・パペに言わせれば、「ナクバ」という言葉の意味の「厄災」も「破局」もあまりにも客観的で中立的であり、あえて、”「民族浄化 エスニッククレンジング」という強い政策意図を持った行為である”というべきであるとする。

すでに1917年の時点で、西欧の植民地主義を内面化したシオニストは、パレスチナの植民地化する方法は「入植(土地を強奪する)」と「移送(パレスチナ人を追放する)」であると言っていた。
1930年代には、ベングリオンも「パレスチナの8割の土地をユダヤ人国家にする」と言った。
ジャボティンスキーのような強硬派は「パレスチナ全土100%をイギリスなど当てにせずに実力行使で獲れ」と主張し、ハガナー(国防軍)から離脱してイルグンという組織を作り、そこの活動家としてメナヘム・ベギンなどが名を馳せる。
それに対して、左派ベングリオンは穏健派なのかというとそれは違う。
ベングリオンは、「武力と機会(チャンス)」が重要だとした。「武力を使うチャンスを”長いスパンで” 見極めろ」という考えだった。
いきなり100%を獲れるはずはない。まず、8割獲れ。入植地を点で結べば8割になる」と言った。
ベングリオンは、まさに有言実行した。
この8割というのが、現状のイスラエルとほぼ一致する。
ベングリオンは、国際情勢を見極め「機会を待つ人」という顔と「実力行使を厭わない」顔の二面を持っていた。
1947年、シオニストらは国連に「パレスチナの8割の土地」を要求した。
国連は54%という土地を示し、エルサレム、ベツレヘムは国際管理するとした。
1949年時点の休戦時点で、78%を奪った。実に8割奪ってしまった。


・2007年にハマス政権をガザ地区に押し込めた後は、「反開発」からさらに「Unviable 生存不可能」な状況の創出をする。
この場合、もちろん「餓死者が出てはまずい」「全員虐殺などしてはまずい」。
つまり、「どこまで空爆で破壊しても良いか」「どこまで物流を止めて兵糧攻めにすれば良いか」。
どこまでやれるのか?ということを見ながら、ガザを生存不可能な状況にしていくと、「PLO自治政府は、西岸地区がガザのようにはなりたくない」と思わせる脅しになる。
また、「国際社会が人道援助をするだろう」そうすれば、最低限の生活におとしめることができる。
「生存不可能」だからと、人道援助をする国際社会というのは、国連、アメリカ、エジプト。金を出すのは、日本、EU、湾岸諸国。

圧倒的に非対称な死者数。 「20倍返し」
今回の2023年の戦争では、「イスラエルの死者数1000人以上」出ているのに対して、「20倍返し」の「パレスチナ側の死者数20000人」くらいのことは考えているだろう。
現在、パレスチナ側の死者数は、10000人を超えている。
つまり、まだ止めない。
イスラエルは、バランスを計っている。
「国際社会がどれくらいまで容認するのか?」とか
「どこまで殺害などの恐怖が住民に対する恐怖として効果をもつか?」
「自分の政権基盤として、強い政権というものをどれだけ自国民にアピールできるか?」
などを計算している。
「10.7」を取り上げ、「先にやったのはハマスだ」と大虐殺を正当化しているが、上図の通り、どう見ても先にやったのはハマスではない。
「10.7」は、全くスタートラインではない。

某・国際人道NGOの国際人道法の研究者が、
「人道的に言えば、ガザの南部の国境を開放して、
住民を外(エジプト側)に出すのが一番いいのではないか。
それをもしガザ住民が自ら望むのであれば!」などと言った。
早尾教授は、唖然とし、反論した。
「そういうふうに追い込まれて生き延びるために、
出ざるを得ない、避難せざるを得ない状況を作って、
そして、”自らの意思で避難した”というのは、
イスラエルの思う壺ですよ!」と。
「もちろん人道的な対応は必要かもしれないけれど、
原則論をまず言わなきゃいけない。
イスラエルがやっていることが不当で、
イスラエルがガザ地区にこういう形で関与することを
止めさせることが、まずありきの話。
”まず逃さなきゃ”では、2度と戻れなくなりますよ。」と。

「2023年のナクバ」でガザ北部からガザ南部に追われた人々がたどり着いた南部も、被人道的な環境だった。インフラが破壊され、病院も破壊され、衛生環境も悪い。
衛生環境が壊滅的で、チフスなど伝染病が蔓延するだろうと言われている。
ならば、
「そのような場所から、外に(エジプトに)出た方が良い」という発想が狂っている。
岡真理先生が勉強会で、非常に印象的なことを言っていた。
「ナチスのホロコーストの時は、
私たちはリアルタイムで目撃していたわけではないが、
ところが、今、全世界が公開でジェノサイドを見せつけられている。
それを是認するのですか?」