大島渚監督が、今年1月にこの世を去られました。
1996年に突然襲った脳内出血の病い。
そして、奇跡的に回復し
新選組を男色の視点から描いた『御法度』を撮り、
これが監督を務めた最後の映画となりました。
監督・大島渚、主演・ビートたけし、音楽・坂本龍一・・
あの『戦メリ』の顔揃えでしたね。
『戦メリ』『御法度』、舞台は違えど、どちらも、「戦場」が舞台の映画でした。。
戦場では、男性社会の有様が凝縮して立ち現われ、
そこに、平時には、薄らぼんやりとしか見えないものが、
炙り出されるものなのかもしれません。
大義のために、殺し合った男の世界・・戦場。
しかし、
先頃・・日本政府は、少子化による隊員不足に備える必要性から、
前線で戦う 「近接戦闘」の可能性のある部隊に、
「女性」を配属することを検討している・・のだと云う。。
このニュースを読んで、
ついに、国は、本来、命を「産み育む」性に、
「戦い殺す」ことを求めようとしているのか・・と、
空恐ろしい思いがしました。いったい、何を守るための防衛か???
ともあれ、『戦メリ』や『御法度』で、描かれたのは、
かつての戦乱の中にいた男たちだけの世界の物語です。。
この異常な状況下、戦うことだけに突き進む・・そのための「結束」、「男の絆」は、
「ホモソーシャル」の鎖という形を取って、
より強くきつく巻かれていたようです。。
ホモソーシャル (Homosocial) とは・・
ホモフォビア(同性愛嫌悪)とミソジニー(女性嫌悪)を基本的な特徴とする、
男性同士の強い連帯関係のこと。
それ自体同性愛的なものでありながら、男性同性愛者を排除し、
異性愛者同士で閉鎖的な関係を築く。・・ということ。
ホモソーシャルによって家父長制的なヒエラルキーが構成される。
戦争の極限状態で彼らは「兵器」に徹することができるのか?
兵士としてホモソーシャル的に統制され、敵対し、憎しみ合い、殺し合うことを
強いられた者らは、それだけに徹して生きられるのか?
それぞれの異なった宗教観、道徳観、組織論を背景に、
圧力釜の中で、むき出しの「死」と、根源から湧き上がる「愛」が一騎討ちとなる。
人間は、異なった者を本当に憎んでいるのか?
異なった者にどのような感情を抱くのか?
人間は、敵を殺せても、「愛すること」を殺せるのか?
捕虜収容所の日本兵と捕虜という主従関係の中で
主人から奴隷への秘めたる憧憬、欲望・・痛点を貫く甘い痺れ・・
「男色」という性愛の視点から切り込み、
監督が人間の本質に迫って問う気迫を感じます。。
生き埋めにされたセリアズ(Dボウイ)の死の直前、
ヨノイがセリアズの頭髪を刈り取り、敬礼をする、というシーン・・
「涙と共に種を捲くものは喜びと共に刈り取る」聖書・詩編。
聖句の「種捲くもの」とは、キリスト者。また、キリストそのもの。
神自身が、何千年にもわたって恵みと祝福の種を蒔き続け、
雨を降らせ、刈り取る。。
乾き果てたボウイのブロンドが、刈り取られる麦の穂のようだ。。。
ヨノイは礼と愛をもって、セリアズの信仰する神の儀式に則り、手厚く葬ったのだ。
6:00~ボウイ処刑シーン セリアズ&ヨノイ
時は移り、日本は敗戦。事態は逆転し、捕虜となったハラ。
頭を丸め数珠を身に着け、仏道に帰依したかのようなかつての鬼軍曹ハラの
処刑の日を前に、彼の元を訪れたローレンス。
すでに死を受け入れているハラと、ローレンスは、戦場でのクリスマスの一夜の思い出を語り合い、心を通わす。
ローレンスは、最後にハラへの友情を込めて、
自身の宗教的な言葉で〝God bless you"と別れを告げ、
ハラは、童子のような面差しで、もう二度と共に過ごすことのないクリスマス、
かつての敵国の神を祝い、
彼の愛に応える〝Merry Christmas Mr.Lawrence!!!″と。。。
タケシ処刑直前 ハラ&ローレンス
今夜は、映画『戦メリ』のための坂本教授のアルバム
「Merry Christmas Mr.Lawrence」の中から
「メリー・クリスマス ミスターローレンス」のトラックに
デヴィッド・シルヴィアンが作詞作曲した歌を乗せた
『禁じられた色彩 Forbidden Colours』を訳してみます。
このタイトルはデヴィッド・シルヴィアンがファンだったと言う三島由紀夫の
作品、「禁色(英題=Forbidden Colours」から引用されています。
因みに・・
三島の「禁色」に出てくるゲイ・バー・ルドンは、現在の銀座五丁目近辺に
実在した「ブランスウィック」をモデルで、
このゲイバーにボーイとして勤めていた実在の美少年に三島は、
憧れを抱いていたと言われ、このボーイが小説の主人公・南悠一のモデルであったと言われています。
そして、この店には、実際にかつて、丸山明宏(美輪さま)がボーイとして働いていたという事実があるのです~・・・*.。o○☆
余談でした~*.。o○☆Forbidden Colours
The wounds on your hands never seem to heal
I thought all I needed was to believe
あなたの両手の傷は決して癒えそうにはない
必要なのは信じることだけだと僕は思っていた
Here am I, a lifetime away from you
The blood of Christ, or the beat of my heart
My love wears forbidden colours
My life believes (in you once again)
ここに僕はいるのか? あなたから離れ去った生涯に
キリストの血 あるいは ぼくの心臓の鼓動
ぼくの愛は禁じられた色彩を纏っている
ぼくの命は信じる(もう一度 あなたを)
Senseless years thunder by
Millions are willing to give their lives for you
Does nothing live on?
無意味な歳月が雷鳴の如く過ぎ
何百万もの人々があなたの為に厭いもせず命を捧げる
生き長らえるものは何もないのか?
Learning to cope with feelings aroused in me
My hands in the soil, buried inside of myself
My love wears forbidden colours
My life believes (in you once again)
自分の中に湧き上る感情に折り合いをつけるために学び
土の中の僕の両手は自分自身の内側を葬り去る
ぼくの愛は禁じられた色彩を纏っている
ぼくの命は信じる(もう一度 あなたを)
I'll go walking in circles
While doubting the very ground beneath me
Trying to show unquestioning faith in everything
僕は 円の中を歩き回る
自分のすぐ下の地面さえ信じられずに
すべてになんの疑いもない真正の信仰を示そうとして
Here am I, a lifetime away from you
The blood of Christ, or a change of heart
My love wears forbidden colours
My life believes (in you once again)
ここに僕はいるのか? あなたから離れ去った生涯
キリストの血 あるいは ぼくの心臓の鼓動
ぼくの愛は禁断の色に染まる
ぼくの命は信じる(もう一度 あなたを)
My love wears forbidden colours
My life believes (in you once again)
ぼくの愛は禁じられた色彩を纏っている
ぼくの命は信じる(もう一度 あなたを)
** ** **
*この詩の「you」は、キリストを指すと思われます。
救い主であるイエス・キリストが人類をその罪から救うために、
身代わりになり、茨の冠を着せられ、両手を釘で打たれ、十字架で磔となった。
キリスト教会は伝統的に、同性愛を性的逸脱とみなし罪とし、
教会は、神の言葉を代弁する組織であることを自認するが、
いかにも荘厳な衣の下は、ただの人間にすぎないのだ。
キリストは、「赤」い血を流し、全ての信仰者の罪を贖ったのだ。
しかし、ある権力によって、表に禁じられた罪の「色」を着せられた男の
内側には、「愛」そのもの、「命」そのものが息づいている。
それは、神に愛され、神自身が捲いた種子なのだ。
そう信じ、新たに神の御許に帰る男の歌。。
そんな風に感じました。
仏教徒として死を待つタケシ演じるハラ軍曹も、
呼び名だけが違う、神の元で、やはり、童子(種子)になったのだ。。
私は、そう思う。