Jデップがジプシーの青年を演じる「The Man Who Cried(邦題)耳に残るは君の歌声」。映画の邦題は原題からかけ離れているようだが、これは、劇中でも流れるビゼーのオペラ「真珠採り」で歌われるアリア"Je crois entendre encore"(訳すと・・今でもまだ聞こえるような気がする)を、邦題にそのまま使用したようだ。この映像は、主人公フィゲレ(小鳥の意)役のクリスティーナリッチが、
「Sunday is gloomy(邦題)暗い日曜日」を歌うシーンである。
ハンガリー語の原題ではSzomorú vasárnap 悲しい日曜日となるのだそうだ。
「Sunday is gloomy」、この歌には、浦沢直樹の『パイナップルARMY』の中でもエピソードとして引用しているが、心が凍るような現象、都市伝説があったとされる。世界中で本作を聴き、数百人(内、157名はハンガリー人とされている)が自殺したと言われている。
ヤーヴォル・ラースロー作詞、シェレッシュ・レジェー作曲により、1933年にハンガリーで発表された歌である。ブタペストのラースローが経営するレストランで、レジェーはピアニストとして活動していた。この歌は、当初は、ナチス・ドイツによる軍事侵攻の危機が迫る時代に紡がれた、ごく私的な歌であったという。
映画の中で歌われた部分(太字)だけ、訳しておきます。
*ナチス・ドイツ/参照)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%81%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84#.E7.AC.AC.E4.BA.8C.E6.AC.A1.E4.B8.96.E7.95.8C.E5.A4.A7.E6.88.A6
<Sunday is gloomy>
Sunday is gloomy,
My hours are slumberless
Dearest the shadows
I live with are numberless
Little white flowers
Will never awaken you
Not where the black coaches
Sorrow has taken you
Angels have no thoughts
Of ever returning you
Wouldn't they be angry
If I thought of joining you?Gloomy Sunday
日曜日は憂鬱
私と共に生きるいとしい影は数え切れない
小さな白い花々が貴方をけして目覚めさせることはない
貴方を連れ去った悲しみの暗い列車では
天使たちは貴方をけして還すつもりはないらしい
もし私が、貴方についていくと考えたら天使たちは怒るだろうか
Gloomy is sunday,
With shadows I spend it all
My heart and I
Have decided to end it all
Soon there'll be candles
And prayers that are said I know
But let them not weep
Let them know that I'm glad to go
Death is no dream
For in death I'm caressin' you
With the last breath of my soul
I'll be blessin' you
Gloomy Sunday
Dreaming, I was only dreaming
I wake and I find you asleep
In the deep of my heart here
Darling I hope
That my dream never haunted you
My heart is tellin' you
How much I wanted you
Gloomy Sunday
夢を 私はただ夢を見ていたのだ
私は目覚め、ここに私の心の深くで眠る貴方を見つけた
愛しい人 私の夢が貴方を悩ませないことを願う
私の心は貴方に語りかけている
どれほどあなたを求めたか
憂鬱な日曜日
さて、今日は、この歌がメインテーマではないのです。「耳に残るは君の歌声」のクリスティーナリッチが、「Gloomy Sunday」を歌うシーン。
実は、これは、吹きかえられている。
実際に歌っているのは、Iva Bittová(イヴァ・ビトヴァ)という、
チェコ出身のアーティストである。歌い、演じるロマ・ヴァイオリンの奏者であり、その独創的で奔放なパフォーマンスは、圧倒的だ。
ロマは、ユダヤ人と同じく強制収容所に送られ、犠牲者は30万人から50万人という。
ユダヤ人に比して、戦後長い間、保証を受けることができず、無視されてきた存在でもあるのだ。
彼女は、チェコのアヴァンギャルド(前衛)と称されるが、彼女の自出や背景を考えれば、前衛と言うよりも、その魂の表現として、「Gloomy Sunday」の時代を超えて生き次ぐ、一人の女性アーティスト。「Gloomy Sunday」の因縁めいた都市伝説など吹っ飛ぶ生命力に満ちていて、とてもナチュラルな血の自由を感じる。
ロマの少年しかし、ロマとはいったいどういう人々のことをいうのだろう?
シューマンの「流浪の民」やサラサーテの「チゴイネルワイゼン」、またブラームスの「ハンガリー舞曲」、リストの「ハンガリアン・ラプソディ」、ラヴェルの「ボレロ」・・ジプシー(ロマ)の旋律が、大好きなのだが・・
その歴史は、よくわからない。謎である。
民族、部族という枠では括れないものらしい。
ヨーロッパ各地を流浪する人々のことなのか?
「ジプシー」gypsyは、英語の「エジプシャン」が訛って「ジプシー」になったということで、エジプトから来た人という意味にもとれる。ドイツでは「ロマ」「ツゴイネル」。フランスでは「ジタン」「ジンガロ」「ボヘミアン」「タタール」などと呼ばれてきた。多様過ぎる。
いずれにしても彼らは、よそ者扱いされ差別を受け、安定した家屋、職業、教育も得ることが難しく、家財を積んで一群が相互扶助しながら、世界中を移動し続ける人々だったのだ。その過半数が、ヨーロッパ、その多くは東ヨーロッパにいる。
ジプシーの原郷については、ハンガリーという説もあるようだが、言語学による考察からインド(北インド・ロマに系)が起源ではないかという説が有力なようだ。しかし、その一群には、独特の文化が存在することは確かなようだ。
彼らの音楽は、彼らとともに、世界を旅する。
ジンガロ以前、『ジンガロ』というバルタバス(フランス政府が彼に特別に提供した、ヴェルサイユにある国立乗馬スペクタクルアカデミーの学長にも就任。ジンガロは、専用劇場を持ち、エルメスが協賛。)率いる、馬術、音楽、舞踊によるフランスの舞台芸術集団のパフォーマンスを見る機会があった。『ジンガロ』という名前は、結成当時の一座の主役だった馬の名前からとったものだと聞いていたが、「ジプシー」という意味のフランス呼びだったということがわかった。彼ら自身は、各国で蔑称として使われた様々な呼び名が存在する中、自らのことを「ロマ」と呼ぶ(中近東では「ドマ」らしいが)。これは、真の「人間」という意味なのだそうだ。
「人間」イヴァ・ビトヴァの音楽、パフォーマンスに触れると、人とは、こんなにも表情豊かなものだったかと、呆気にとられてしまう。マイケルの本能の奇声に負けず劣らず、野趣溢れる剥き出しの「人間」を見る気がする。面白すぎて凄すぎて選べない。
とりあえず、抑え目なのを4つ。どうぞ


■イヴァ・ビトヴァ(Iva Bittová, 1958年7月22日 - )
チェコ出身の音楽家。アバンギャルドな「ロマ」のヴァイオリニスト、歌手、作曲家。
モラヴィア北部のブルンタール郡(当時はチェコスロバキア)生まれ。父親は南スロバキア出身の有名なロマのミュージシャン。1970年代中頃、女優として何本かのチェコ映画に出演した後、1980年代初期から、ヴァイオリニスト兼歌手としての活動をメインとする。1986年からレコーディングをはじめ、1990年頃には、そのユニークな歌唱、演奏テクニックが、国際的に認められるようになる。2003年に、Zena役で出演した映画『ジェラリ』(=Zelary (Czech Republicジェラリ村、チェコ共和国))は、第76回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。
お面なし↓のイヴァの方が、返ってスゴイかもしれない

http://www.youtube.com/watch?v=hzoI5R5slvE&feature=BFa&list=PL0F66EB21C5FBE32A&lf=results_video
ついでに、チェコ・プラハでのマイケルのヒストリーツアーの動画もどうぞ

共産圏下から開放されて間もない、チェコのファンの隠し撮りらしき、素人映像に臨場感ありです!モンキーフィンガーマイケルのCome Together~~!
Come Together - Prague 1996 - Different Amateur Video