(前回の続き)

 

やらなければならないことに

どんどん気力も時間も奪われていくのに

そのどれもがやりたくないことで

そんな選択しかできない自分に

心底絶望した

 

 

 

私にとって優先順位は何なのだろうか

息子が上位のはずなのに

どうしてこんなに距離を置いているのか

どうして息子を後回しにして

仕事だの大学だのに追われているのか

 

 

 

やりたくないことで埋まっている毎日

そうして疲れている母親の様子を

長い時間、家の中で見せられる息子

 

 

不登校という状況だけでも

不安でいっぱいのはずなのに

何かに追われているような母親に

彼が自分の気持ちを

打ち明けられるはずがなかった

 

 

そりゃそうだ

話を聞いてもらえる

自分のことを見てくれる

そんな安心感は感じられず

 

 

余裕がなさそうで

いつも焦っているようで

つまらなそうで疲れている母親

 

 

敏感な息子は

私が思う以上に

それをよく感じ取っていた

 

 

「話しても受け止めてくれるかな」という不安

「言っても無駄かもしれない」という諦めが

彼の気力をも奪ってしまったと思う

 

 

 

ある日、息子は言った

「ママが仕事も大学もなかった時、

僕とたくさん遊んでくれた。すごく楽しかった。

あの時に帰りたいって思ってしまう」

 

 

 

もう他人への言い訳みたいな体裁はやめよう

そんなものは息子と比べ物にならないほど

どうでもいいことだ

何が大切なのかを今、見直さないと

この現実は変わらないと思った

 

 

 

まずはウンザリしながらも

十数年やっていた仕事を辞め

身体を動かす仕事に転職をした

 

 

通信制大学も

国家資格取得コースから外れて

少しでも関心のある講義を選びながら

卒業することを目標に変えた

 

 

背負っていた体裁という重りを

二つ降ろしただけで

毎日私を追いかけてきた暗い影が

すうっと淡く薄くなった

 

 

 

私の様子が変わると

息子の反応もじわじわと変わってくる

 

 

勉強の遅れについて不安を話してくれたり

私に対して思っていることも

どんどん話してくれるようになった

 

 

息子は泣いてしまうくらいの気持ちを

私に見せてくれる日も増えた

 

 

 

そうやって息子の胸の内がわかってくると

私も少しずつ彼を受け止めることができる

不安に共感して

落ち着いたら

何が出来るかを話し合うことができる

 

 

ほんとうに少しずつ少しずつだけど

でもそれはちゃんと

関係として積み重なっていった

 

 

そうやって話し合って

タブレット学習をしようと決めてから

2年経った今

私の声掛けなしでも

息子は継続的に勉強をしている

 

 

 

今の息子は

世界史や国々の関係性について興味津々で

驚くほどのスピードで知識を増やしている

 

「面白いからどんどん調べちゃう」

そう言って得た知識を

毎日、私に教えてくれる

 

 

 

心も身体も成長している息子の

不登校という状況の理解

過去の振り返り

未来への不安

時には泣き言や愚痴や苛立ち

そして学んだことのアウトプット

 

そういったことを話せる相手として

今の私がいる

 

 

 

私の容量を自分で見直したら

要らないものを抱えてギチギチだった

抱えていたものを手放して

空いた場所に息子との関係が入ってきた

 

 

やっと一番大切なものを入れられた

 

 

少なくとも

通信制大学という選択をしなければ

もっと早く息子との関係を築けたと思う

 

 

今ならこの選択はしない

でもあの時の私はまだ

その選択をしてしまう母親だった

 

 

 

「母親が自分の人生を生きれば、

子どもも動き出す」

なんてよく言われているけど

やみくもに

好きなようにしたらいいって話ではなく

 

 

自分の優先順位を見つめ直し

自分が大切に思うものを再確認して

自分と向き合う過程を踏まないと

意味がないということを実感した

 

 

子どもを不登校にしたことを

散々、自責したけれど

 

 

不登校になった後も

子どもの時間を奪ってきた自分を

吐きそうなほどに認めている

 

 

今日の息子との約束は

ジェンガして

卵かけご飯専用の卵と醤油でランチすること

 

約束は守ることにしている

少しずつ少しずつでいい