

被害が拡大した背景にはアカウントを提供した学生らの存在がある。
「小銭が稼げるよ」――。捜査関係者によると、福岡大(福岡市)運動部の学生はこう呼びかけ、ペイディのアカウントの提供を募っていた。
「募集役」を担ったこの学生が、アカウント情報の提供の見返りとして提示した報酬は1万~2万円で、提供した側の金銭負担はないとの約束だったという。応じた学生はアカウントを作成し、SNSなどでアカウント情報を「募集役」らに伝えていた。

「小遣い稼ぎ」のうわさとともに、アカウントの提供は学生らの間でねずみ算式に広がり、福岡大では、数十人の学生がアカウントを提供した。提供した後に募集する側に回り、報酬の一部をピンハネしていた学生がいたほか、摘発された男の中に三重県の知人がいた人物がいたため、同県の大学生にも提供者が出た。
福岡県警は提供した学生らは両県で計約100人に上るとみている。学生らの多くはアイフォーンの代金が自身に請求されてだまされたことに気づいたという。
事件で摘発された男(28)の公判で1月、アカウントを提供したある学生の供述調書が読み上げられた。「バイト代を、買ってもいないスマホの支払いに充て続けないといけなかった。どこにも怒りをぶつけられず悔しい」
起訴された3人のうち会社役員を除く男2人は起訴事実を認め、福岡地裁が執行猶予付きの有罪判決を言い渡し、確定した。「募集役」の学生ら2人は、同詐欺ほう助容疑で書類送検され、ともに不起訴となった。一方、県警が主犯格とみる会社役員は「なりすましは認めるが、支払い意思はあった」と主張し、同地裁で審理が続いている。
福岡大では今春入学の新入生らに対し、アカウントなどの個人情報の売買をしないようチラシ配布などで注意を促す予定。同大学生課は「学生が事件に巻き込まれないようにしたい」とする。
ペイディの運営会社は「アカウントの提供は規約違反。提供した情報を基に他人に買い物をされても、本人の支払いは免除されない。アカウントを他人に教えないよう注意してほしい」としている。
アカウント提供「危険と認識を」
サイバー犯罪に詳しい森井昌克・神戸大名誉教授(情報通信工学)は「オンラインショップなどで金銭の支払いができる決済サービスが広がる中、サービスにログインするアカウント情報の重要性が理解されていない。インターネット空間ではアカウントは『自分自身』。他人への提供は、経済的な被害や、犯罪への加担につながり得る危険な行為だと認識すべきだ」と話している。
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