バランスを取ってるから。
『ボーッと観る会』、夜の部。
開始前の雑談タイム。
歯科衛生士のSさん。
「そうそう、質問していいですか?」
はい、何ですか?
「上あごの歯の裏なんですが。」
はい、そこが?
「触られると、くすぐったがるんです。」
えっ、そんなところが?
「はい、はぐきの付け根あたりなんですが。」
私は経験ありませんね。
「それが・・・。」
それが?
「男性だけなんです。」
あら。
「ああ、男性すべてではないですよ。」
ほー。
「5%ぐらいでしょうか。」
少なめですね。
「けど、すべて男性なんです。」
へー。
「なぜだと思います?」
えっ、なぜって。
わかりませんよ~。
「不思議でしょ~。」
ホントに。
とは言え、考えてみるチャンス。
せっかく訊いてくれたんだから。
わきの下とか、くすぐったいよね。
もちろん、敏感な部位。
感覚神経が集中してるし。
同時に、危険な部位でも。
筋肉の鎧もないし。
刃物で刺されたら、すぐに内臓に。
触られると、過度に緊張しやすい。
攻撃されないかと。
身構えちゃうから。
だから、自分でも触ってもくすぐったくない。
上あごの歯の裏の歯茎かあ~。
解剖学的にどうなんだろうね。
けど、無防備な状態であることには変わりなし。
口を開けたままだし。
攻撃されたら、ひとたまりもない。
しかも、男性だけって。
それも、すべてではない。
となると・・・。
あのー、Sさん。
「はい?」
歯の治療の際ですが。
やっぱり男性のほうがコワがりますか?
「ああ、それは間違いないですね。」
ですよね。
女性のほうが痛みには強いと言いますし。
思考がフル回転してね。
恐怖の妄想、広げやすいのも男性。
「唇に触れたら、わかります。」
「かたさが違うんです。」
へー、それで緊張がわかるんだ。
「あと足先を見ても。」
足先?
「歯を磨くわずかな振動で。」
振動で?
「足先まで揺れるのは、リラックスしてる証拠です。」
なるほど。
緊張してたら、振動は足先まで伝わりませんよね。
まさに、身を強張らせてしまうんですね。
「そう言えば、そうかもしれません。」
「くすぐったがる人は、緊張してる男性ばかりかも。」
おー、有力な状況証拠。
となると。やっぱり
ゆるむ
ためかな。
「ゆるむ?」
ええ、過度な緊張ってね。
カラダにとっても負担です。
筋肉が収縮するとね。
血管も圧迫され、血流が阻害されますし。
心拍数もあがって、呼吸も浅く速く。
「たしかに。」
だから、一刻も早く、逃れたい。
けど、本人は恐怖のまっただなか。
理性で命令したところで。
本能には届かない。
「すると?」
強制的に緊張を解く必要があるでしょ。
「ああ、それで。」
笑うんです。
くすぐったがらせて。
滅多に触れられない部位。
しかも、めちゃ無防備な体勢。
緊張がさらに強く。
「くすぐったい」という信号。
強制的に脳が出すことでね。
笑って緊張をゆるめるんです。
「ほー、おもしろい観方ですね。」
「エビデンスなし」です。
テキトーですよ。
けど、この仮説って、他にも応用できますよね。
「たとえば?」
ほら、シリアスな場面があるでしょ。
みんなが眉間にシワを寄せて困ってたり。
「ええ。」
そんな時でも、ヘラヘラしてる人っていません?
「います、います。」
「以前、そんな人、いました。」
不謹慎だな。
何を笑ってるんだよって。
「リーダーに叱られてました。」
「その人のミスが原因みたいなもんでしたから。」
あら、張本人ですか。
そりゃ、叱られますよね。
けど、その人は、自覚ないはずなんです。
ヘラヘラ笑ってる。
「なるほど、さっきの仮説ですか。」
そう、本能的にね。
過緊張を解いて心身のバランスをはかろうと。
そのために、ヘラヘラして、ゆるませてるんです。
その人自身にとっては、
心身のバランスを取る自然な振舞い。
けど、シリアスな場では、
「フツーに叱られますね。」
ええ、そういうことかと。
本能的反応だから。
理性でどうこうできないんですよ。
「なるほど。納得です。」
仮説です。
けど、考えるの、楽しかったです。
「ああ、そう言えば、もうひとつ。」
何なに?
「そのくすっぐたがる男性なんですが。」
・・・へー、それはおもしろい。
きっとあなたの周りにもいるはず。
続きは、明日です。
今日は、ここまで。