スーパードクターがでてきたり、事件を解決したり、そんな医療ドラマは現実感がない。患者が淡々となくなり、淡々と対応していく。医師や看護師の診療とはそんなものである。そんな話をえがいて、視聴率がとれるのだろうか。とれないかもしれないけど、これが現実である。こういう現実の医療者の姿勢をみながら、その世界にはいっていったほうがいい。スーパードクターなんて病院にはいないのだから。
診療科によってかなり違うが、内科医や外科の日常はこんなものだろう。
自分はずっと耳鼻科医なので、患者を看取ることは少なかった。年に1~2人ぐらいだろうか。
最初の研修は大学病院。そこではがん患者をみつづけた。手術と処置を繰り返し、治っていく人などあまりいなかった。最期をみとるターミナルケアのような病棟だった。複数主治医制で、数人の医師が、数人の患者を受け持つ。患者に何かあれば、すべての医師がよびだされる。患者がなくなれば、指導医も研修医もすべて呼び出される。
頭頸部がんをみている外の病院でも、がん患者は多かった。がん専門の指導医のもと、一緒に研修医の自分が患者を受け持った。
末期患者をうけもっていて、もう時期亡くなることは予想ができた。ある朝、病棟に行くと、その患者のベッドがきれいに片付けられて、患者がいなくなっている。「患者がどうなったんですか?」と聞くのが怖かった。指導医に聞くと、昨晩なくなったと言っていた。「真夜中だったんで、呼び出したら悪いかと思って、自分で対応しておいた。」指導医はよかれと思ってそうしたのだろうけど、少しショックだった。自分がいてもいなくても同じだと思われたことが。いても自分ができることはなにもないのだけど、自分の無力さを知らされることになった。早く一人前の医師になりたい。
患者は最期に病院で息をひきとる。そこにいるのは、自分ら医療者である。亡くなる患者をどう看取るかは重要な任務なのだが、一人ひとりの死をいつまでもひきづったりもしない。亡くなってきれいになったベッドにはまた新しい患者がすぐに入ってくるのだから。
