今の若手の耳鼻科医は処置をしなくなったので、耳管通気をしたことがないそうだ。耳管通気とは、鼻から管をいれて、耳に空気を通す処置のことである。耳鼻科医になると、耳管通気のやり方を教わり、患者を通して練習したものだが、今の若手はそのような処置はまったくしなくなったようだ。
耳鼻科の勤務医は診断や手術を主な仕事にしており、処置を熱心にする耳鼻科開業医を非常に馬鹿にしていた。
それにもかかわらず、開業したとたんに処置をせっせとして、若い頃に言っていたこととまったく逆のことをしはじめる。処置はするけど、診断はしない。それが耳鼻科開業医の王道になる。
耳鳴がすると、せっせと耳管通気を行う。空気が入ったから耳鳴が治るとは思えないので、意味がないことをやっているもんだとあきれていた。
しかし、開業医に言わせると、治らなくても一生懸命耳管通気をやれば、「自分のために一生懸命やってくれてありがとう」と感謝するようになり、耳鳴はよくなるのだと言っていた。半分は無理やりの洗脳だけど、患者はそれで満足するようになるわけだ。
開業医は診断も治療もできないけど、せっせと処置をする。それが開業医の理想的姿勢。今もそう考えている耳鼻科開業医は多い。処置をすることが耳鼻科開業医の使命だと思っている。
僕自身は、処置しかしない耳鼻科医をおかしいと思っているので、ほとんどの処置をしない。唯一やる処置は、Bスポット治療ぐらいだ。これは本当に効くので積極的にやるが、他の処置はやる意味がほとんどないと思っている。それでも開業医が行うのは、処置をたくさんすれば、診察料が高くなるからにほかならない。治らなくても、診察料が高くなるからやるというところが多いのだ。Bスポット療法が広がらないのは、治るんだけど診察料があがらないためだ。逆にBスポット治療をやらないほうが診察料が高くなるシステムなので、誰もやらないはずである。治るかどうかではなく、もうかるかどうかに視点がいってしまうからだ。
自分の処置のしないのは、病院勤務医の頃とほとんど変わらない。一貫して、意味ない処置はしないと言い続けている。普通の医師は、病院勤務医のときと、開業してからは180度姿勢がかわってしまう。