ひとつは、Marvin Gaye(マ-ヴィン・ゲイ)の「What's Going On(ホワッツ・ゴーイン・オン)」
そして、もうひとつが、Carole King(キャロル・キング)の「Tapestry(邦題:つづれおり)」
革新的というのは、主にサウンド面での斬新さなのですが、
この二枚、詩作内容的には非常に対照的で、マ-ヴィン・ゲイのほうはかなり強い調子で、
反戦や公害問題、そして、この時代にして早くも環境・エコの問題に言及するという
社会批判性を強く持つアルバムなのです。しかし一方、キャロル・キングのほうは、
全体として、恐ろしいほどに私小説的で、自分と周辺の事(勿論フィクションも)や
自分の恋愛の事だけについて語っています。
当時のアメリカは、長引くベトナム戦争の終盤であり、出兵した兵士の家族や知人が多くいて、
また帰還兵(中には死傷者も)も多かったろうと思います。
肉体的にも精神的にも、目に見えない疲弊感が恐らく強く社会を覆っていただろうと思います。
今にして思えば、アポロ計画というのは、そんな国民の気持ちを無理やりに鼓舞し、
国民の、政府に対する批判をうまくかわそうと画策した政治的誘導であったような気もしますね。
さてそんな中、淡々と「プライベートな世界」についてのみ語るキャロル・キングの歌声に、
当時の多くのアメリカ人は戦争を忘れ、きっと大いに癒されたのだろうと感じます。
このアルバムの大ヒットは、そうした時代背景への妙なフィットがあったのでしょう。
このアルバムの代表曲が「It's Too Late(イッツ・トゥ・レイト)」
サビ部分はとても有名で、認知度はおそらく極めて高いでしょうね。
そして、この曲の詩作内容も、自分と恋人の別れの顛末のようなこと。
自分の中で何かが壊れてしまった、だからもうひきかえせない。
そう、もうIt's too lateなのよ、という内容で極めて私的です。
でもこの曲、うがった見方をすると、非常に遠まわしにベトナム戦争のことを
やんわりと批判しているのかもしれませんね。
休戦なんてしようとしても、もうIt's too lateなのよ、というような感じで。
ま、これは考え過ぎですね。
キャロル・キングというと、70年代の人というイメージがありますが、
実はこの人、もっともっと古いキャリアの人で、歌手としては58年デビュー。
なんとビートルズの63年のデビューアルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」の中の
「Chains(チェインズ)」という曲の共同作曲者なのです。
ゴフィン=キングというソングライティングコンビ(代表作はロコモーション)で、
ゴフィンというのは、キャロルの旦那さんのジェリー・ゴフィンという人。
そう、キャロル・キングはビートルズよりキャリアの古いアーティストなのです。
私は「Chains」というこのビートルズの曲が「ゴフィン=キング」という人達の作曲なのだな、
ということを先に知っていたのですが、のちにこの「It's Too Late」でキャロル・キングの
ことを知って、キングというのはキャロル・キングのことだったのかと驚いたことを覚えています。
そう、「この人、女だったんだぁ」という驚きです。名前がキングですから、
キング牧師やB.Bキングのような、要はドン・キング(当時は知らなかったが)のような、
いかにもいかつい黒人男性かなと思っていたのでした。
白人系の女性ロックアーティストとしては最古参の一人でしょうね。
今年でキャリア55年。なんとも凄いです
第26回「Happy Xmas」(1971)/John Lennon
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