何者かでありたかった10年-「田舎の紳士服店のモデルの妻」の巻 | カフェときどき読書
- 田舎の紳士服店のモデルの妻 (文春文庫)/文藝春秋

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先日読んだ、
宮下奈都さんの「羊と鋼の森」がとてもよかったので
ほかのも読んでみたいなと思って
次に手に取ったのがこの作品。
これがまた、自分的に大ヒット。
喫茶店で一気読みしちゃいました。
東京から夫の故郷に移り住むことになった梨々子。
田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、
恋に胸を騒がせ、変わっていく子どもたちの成長に驚き-
30歳から40歳、「何者でもない」等身大の女性の10年間を
2年刻みの定点観測のように丁寧に描き出した物語。
わたしも、来年で40歳。
専業主婦ではなかったけれど
仕事をしていたけれど
妻ではない、母ではない、ただの会社員ではない、
生きる理由のある、必要とされる、特別な自分のはずなんだ
いつか何者かになれるんだと信じたかった、
あがいてきた10年と、ちょうど重なる。
がばっと大きくひっくり返るようなことはなく
淡々と過ぎていく、「普通」の日々。
その日常生活の中で時々沸き起こる、
さざ波のような感情の揺れの描写がリアルで
うまいなー、わかるなー、と思う。
読んでいてヒリヒリして、涙出そうになるところもあった。
どっこい、生きている、
何者でもない「普通の私」。
それでいいんだと、
10年たって、わたしも見えてきた気がする。
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多くの「妻」と「母」の足下を
灯台のように静かに照らす、
この小説は光だ。
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本の帯に書かれていたこの言葉が
読み終わって、胸にしみた。

