★ フラッシュバック、なぜあなたは向き合えないのか
妻のフラッシュバックに向き合えない
シタ側の方と話していると
時々「診察」に似ているなと思うことがあります
たとえば
身体の調子が悪くて病院に行く
自分でも、どこか悪いことは分かっている
放っておいてはいけないことも分かっている
だから病院にも行った
治したいとも思っている
でも、いざ先生を目の前にして
「この数値がこうなっています」
「前回よりここが変化しています」
「この数値から考えると、こういう可能性もあります」
と具体的な説明が始まると、急に怖くなる
なぜなら、数字は逃げてくれないからです
自分が見たくなかった現実を
具体的な数字として突きつけられる
だから怖くなって
「先生、悪いのは分かりました」
「説明はもういいです」
「それより、早く治る薬を出してください」
と言いたくなる
治したくないわけではありません
むしろ、治したい
だから病院にも来ている
でも、 治したいことと
自分の身体に何が起きているのかを知ることに
耐えられることは、別なんです
私は、不倫後の夫婦にも
似たことが起きているように感じます
妻がフラッシュバックして
「あの時のことを思い出した」
「あの日、あなたはこう言ったよね」
「あの時のLINEを思い出す」
「今でも、あの場所を見ると苦しくなる」
そんな話をする
夫も、自分が悪いことは分かっている
妻が苦しんでいることも分かっている
自分の不倫によって妻がこうなったことも分かっている
だから
「そうだよね」
「不安になるよね」
「俺がやったことだから」
「本当にごめん」と答える
謝ることが悪いわけではありません
妻の苦しみを否定するより、ずっといいです
ただ、ここで一つ見なければいけないことがあります
その「ごめん」は
妻の話を聞いた先に出てきた「ごめん」なのか
それとも、これ以上、妻の話を聞かなくても済むための「ごめん」になっていないか
ということです
これは診察室で
「先生、悪いのは分かっていますから、詳しい説明はいいです。治る薬だけください」
と言っているのと同じことが
夫婦の間でも起きることがあります
「君が不安なのは分かってる」
「俺のせいなのも分かってる」
「本当に申し訳ないと思ってる」
「だから、これからどうすれば安心してもらえる?」
一見すると、とても前向きです
でも妻は、まだ「これから」の話をしていない
今、自分の中で何が起きているのか
あの時、何を見たのか
何を信じられなくなったのか
何を失ったのか
なぜ今日になって、突然あの日のことが蘇ってきたのか
妻は、その話をしている
なのに夫は「分かった」「ごめん」「これから気をつける」
と、結論へ向かってしまう
だから妻は「分かってない」 となる
夫からすると不思議です
謝っている
否定もしていない
自分が悪かったとも認めている
逃げてもいないつもりです
それなのに、なぜ「分かっていない」と言われるのか
それはもしかすると
妻の苦しみを認めることと
妻が見ている現実を見ることを、同じにしているからなのかもしれません
「妻が苦しいこと」は認められる
でも「妻は何を見て、何を感じ、何を失ったのか」
という具体的なところに入っていくのは怖い
そこに入れば、自分がしたことがもっと具体的になるからです
妻のフラッシュバックは
夫を苦しめるために起きているわけではありません
妻の中で、まだ終わっていない現実が突然蘇っている
だから本当に向き合うというのは
フラッシュバックを早く止めることでも
正しい言葉を返すことでも
妻を安心させる方法をすぐ探すことでもないのだと思います
まずは
「何を思い出したの?」
「その時、何が一番苦しかった?」
と、その人が今見ているものを一緒に見ること
怖くても、すぐに薬を求めないことです
治療は必要です
これからの行動も必要です
安心を作っていくことも必要です
でも、その前に診察があります
自分たちの間に、いったい何が起きたのか
妻の中に、今も何が残っているのか
そこを知らないまま
「どうすれば早く良くなりますか」
だけを求めても
妻からすれば
「私の傷を治したいんじゃなくて
この苦しい時間を早く終わらせたいだけじゃないの?
と感じてしまうこともあります
「治したい。でも
診断結果は聞きたくない
そして「やり直したい
でも妻が見ている現実は聞きたくない
この二つは、案外よく似ています
妻のフラッシュバックに向き合うというのは
「また始まった」と耐えることではありません
「俺が悪かった」と謝って終わらせることでもありません
妻が今、何を見ているのか
その現実から、自分も目を逸らさないこと
そこから初めて、夫婦の「治療」が始まるのだと思います
いとうゆうじでした
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