もともと、この曲はピアノ曲集で、ラヴェルの30歳のときの作品です。
5曲のピアノ曲から成り立つピアノ組曲として親しまれるものです。
しかし、それぞれが独立した表題曲であるのが特徴で、
それぞれ関連性はないようです。
全曲のタイトルを例として挙げると「蛾」「悲しき鳥たち」「大海原の小舟」
「道化師の朝の歌」「鐘の谷」
というタイトルがつけられています。
ラヴェルというと、どうしても「よるのガスパール」などといった超絶的な技巧の持ち主であるということが真っ先に思い出しますが、表情豊かなのも特徴で、
「水の戯れ」や「マ・メール・ロワ」、「左手のための協奏曲」、「ソナチネ」
「古風なメヌエット」、「ラヴァルス」、「ボレロ」などじつに表情豊かなそれぞれの顔を見せてくれます。しかもどれも色彩感豊かで、ファンタジーに溢れています。
■大海原の小舟
今回の曲は、ラヴェル自身の編曲によるもので
オーケストラ版はめったに聞くことができない比較的めずらしいバージョンというると思います。
「大海原の小舟」はとくにピアノ版のほうが優れていますが、オーケストラ版も負けじと言わんばかりのすばらしい描写を見せてくれます。
ラヴェルならではの夥しいまでのちりばめられたグリッサンドやトレモロでより壮大なものに仕上げています。
迫力あふれたクライマックスではトレモロやグリッサンドの大波が押し寄せます。
「しなやかなリズムで」という表示はいかにもラヴェルらしい指示です。
augmentsはラヴェルならではの表現で輝きを増して、という意味です。
■道化師の朝の歌
これはリストの「メフィストワルツ第一番、村の居酒屋での踊り」を彷彿とされるもので、ラヴェルがピアノでは間違いなく技巧を意識して書いたものと思われます。
最難関である二重グリッサンドがあまりにも難関として演奏不可とさえ言われる曲です。
歯切れのよい、ピッチカート(弦を指で弾く方法)の演奏が、
タンバリンを打ち鳴らしながら、
道化師が元気に踊り狂う様が想像できる曲ですが、ラストの華やかさはラヴェルならではの見事なものがあります。
ピアノ版にかなり忠実に書かれているのが特徴です。
気まぐれで荒々しくスケルツォ、カプリッチョ的な曲ですが、
トッカータ的な要素もある曲で、
ピアノ版では早いテンポの仲での連打音が難しい曲でもあります。
■動画で最初に演奏されるのは、「悲しき鳥たち」という曲ですが、
神秘的な雰囲気の曲で、フルートの悲しく繰り返し響く音が鳥のさえずる声を表現しているかのように聞こえます。
こちらはそれほどピアノ版では演奏的には難しくない曲ですが、
大変描写性のある曲で、神秘的な雰囲気に引き込まれていく曲です。
最後は森の奥へと誘うかのように引き込むようにして悲しげに消えていきます。
「遠くで」という指示があるのがそれを物語っています。