愛知県
むか~し。。
ある夏の夕暮れ、ひとりの旅役者が道を急いでおりました。
仲間に遅れて瀬戸の方から山道を抜けて名古屋の方へ出ようとしていましたが・・
すっかり日が暮れて、提灯の灯を頼りに歩いていました
行けども行けども山道を抜け出すことが出来ません。
どうも山道で迷ったらしかった。
弱ったのう・・・・とばかりにまずは一服でも・・・と一服していると
その時ふと見ると、少し離れた所に一軒の明りが見えました。
「なんでこんなところに家が?」
と不思議に思ったよりも「ありがたい」という気持ちが先に立ち、善は急げということで、
旅役者はこれ幸いとばかりに明りを頼りに崖の上の家に急ぎました。
「ごめんください。どなたかいらっしゃいますか。ごめんくだされ。」
すると急に入口がさっと開きました。
奥の部屋には薄気味のわるい小さな老婆が一人ぽつんと座っておりました。
老婆は、山奥で一人暮らしで寂しいと話しお茶をいれようかといい、
旅人をもてなし招き入れました。
そしてそれっきり奥の部屋にいってしまいました。
しばらく待ったが中々老婆は出てきません。
どれくらい時間がたったか・・・・
ふと奥の障子のほうからパチパチと火が燃える音がしました。
突然障子がパチっという火花のたびに明るくなり、
恐ろしい口が裂けた山姥の影が映ったのでした。
「ヒャッ!!や、やまんばだ!」
旅役者は恐怖のあまり、逃げ出そうとしてみたがどの入口も開きません。
「ヒッヒッヒ、わしの正体を知ったのかえ。だが・・・助かるすべもあるで。」
山姥は老婆の姿のままで再び現れ、
「ところでお前さん、何かやってみせてくれんかの?」と頼みました。
旅役者は恐ろしさのあまり、
ここで何かしないと生きて帰れないと思い怖い思いを我慢して
「わしは化けるのが得意じゃが」と答えました
それを聞いた老婆は喜んで、ぜひ化けてみせてくれと言いました
旅役者はもうこうなったらと覚悟を決めました
つい立ての向こうで商売道具の入った包みを取り出します。
次々とへんげしていく芸達者ぶりに山姥は手を叩いての大喜び。
歌までうたってみせたので山姥はご機嫌。
やがて空が白々としてきて、旅役者の芸も尽きた。
山姥は、「わしの正体を知り怖かったであろう。だが、芸達者であった。」
という言葉を言い残すと、さっと満足げに姿を消してしまいました。
あたりを見回すと、家もなにもかも消えておりました。
旅役者はしばらくその場にぼんやりしていました。
さて名古屋はどちらだろうと立ち上がった時、
「旅のお方、さあこちらへおいで」という優しい声が聞こえてきました。
その声があまりに優しかったので、旅役者はその声の言う方へ歩いていきました。
それはあの山姥の声でした。
「こっちじゃこっちじゃよ」と優しい超えは案内してくれます。
やがて旅人の往来する広い街道へ出ました。
そして「名古屋へ行くにはこの道をまっすぐ南にお行き…」と聞こえると、
それっきり山姥の声は聞こえなくなりました。
旅役者は安心して名古屋への道を急ぐことが出来たということです。。
「芸は身を助ける」ということじゃな。