大湾節子さんの著書『幻の旅路』の

「第3章 1980年、第三回目の旅」
9月15日~11月25日 71日間 七ヶ国
イギリス→オランダ→フランス→スペイン→モナコ

→イタリア→ギリシャ→イタリア→モナコ→

フランス→オランダ→フランス→イギリス
の読後感の続きです。

幻の旅路

本書からの引用はブログの引用機能を使って表記します。

なお、引用文中、(略)はブログ筆者による省略です。

 

私の読後感を大湾さんがご自身のブログ「『幻の旅路』大湾節子のブログ」に、カラー写真を添えて転載してくださいました。添えられた写真によって、ご著書のイメージが膨らみます。

大湾さんのブログはこちらです。

 

 

114頁

レアル宮殿で

 

大湾さんは出逢った若い女の子ペトラとともにレアル宮殿を訪れます。

そこで、ロシアのレニングラードから来たという好青年に出会います。青年は大湾さんとペトラに小熊のバッチをくれました。

 

ユーモア一杯の美しい青年と立ち話をしたのは、ほんの十分かそこらだったが、国籍も年齢もこえて三人の心が触れあった貴重な瞬間だった。宮殿の門に消えていくとき、私たちの方を振り返って何度も手を振ってくれた。


大湾さんは今回の旅からロス・アンジェルスに帰ったとき、ガラス飾りケースに小熊のバッチを収めました。こういう出会いが旅の醍醐味なのでしょうね。綺麗な思い出とは本当によいものだと思います。

 

大湾さんとペトラ嬢は、 順番待ちして、ようやく観光客で混み合うレアル宮殿に入ります。

 

高価なコレクションが納められた豪華絢爛な部屋を次々に案内される。ガイド嬢は誇らしげに、そしてとうとうとその価値を説明している。ワァーすごいと単純に感嘆しているのはアメリカ人の観光客。ここでもペトラは彼等と全く違う反応を示した。

 

アメリカ人の観光客が示した反応が、一般的な観光客の反応だと思います。

レアル宮殿に入る前、ペトラ嬢は大湾さんに、スペインではほんの少し前まで女性の地位が低かったことを説明しています。思慮深い、真面目なドイツ人の女の子です。そして、レアル宮殿でもペトラ嬢は・・・・・・

 

「こういう宝物を見ると我慢できない。スペインではいまでも何百万人の親子がその日の食べ物を確保するために必死になって生活しているのに、こんな想像もつかない世界が存在している。

(略)

スペインでは莫大な財産を一家族(ブログ筆者註/王族のこと)が持っていて、路上には貧しい人が溢れている。こんなコレクションを少しでも売って、そのお金を恵まれない人々の福祉にあてたらいい」と、思いがけないことを提案した。

 

大湾さんの文章によれば、ペトラは「若い女の子」ですから十代ではないか、と、推察します。おそらく、ペトラ嬢は彼女の人生の中で、それがスペインにいた間だけであったとしても、様々に見聞を広めてきたのだと思いました。

 

大湾さんは言います。

 

ペトラは毎日不公平な現実を目撃している。純粋で正義感が強い彼女は高価な国宝を見て感激するより、怒りの方が出てきてしまうのだ。

 

豪華な調度品を見て、単純に驚いたり喜んだりすることは普通の反応ですから、咎められる筋合いのものではないわけです。しかし、若いペトラ嬢は異なった反応をした。そこが、大湾さんにとっては新鮮に映ったのでしょう。

 

ガイドが「これは××女王が三歳のときの肖像画です」と説明するのを聞いて、ペトラが耳元で囁く。「あれで三歳ですって。第一、ポーズから衣装にしろ、なんて大人っぽくて不自然なんでしょう。自分たち一族がどんなに権力があるかを誇示しているのよ」。彼女の素直な遠慮のない意見を聞いて、こんな見方もあるのかとおかしくなった。

 

このペトラの台詞には笑いました。ペトラは極めて真面目な子なんですね。

私は、今、まさに日本で、毎日のようにテレビのワイドショーを賑わせている、都知事の顔つきと言動をペトラに見せて、感想を聞きたいものだ、と、思いました(笑)。

 

大湾さんは、宮殿から出て、半日つき合ってくれたペトラと別れます。そして、大湾さんは、翌年ドイツに行った際、ニュルンベルクの彼女のアパートを訪ねましたが、残念なことに会えなかったとのことです。

 

(つづく)