大湾節子さんの著書『幻の旅路』の

「第3章 1980年、第三回目の旅」
9月15日~11月25日 71日間 七ヶ国
イギリス→オランダ→フランス→スペイン→モナコ

→イタリア→ギリシャ→イタリア→モナコ→

フランス→オランダ→フランス→イギリス
の読後感の続きです。

幻の旅路

本書からの引用はブログの引用機能を使って表記します。

なお、引用文中、(略)はブログ筆者による省略です。

 

私の読後感を大湾さんがご自身のブログ「『幻の旅路』大湾節子のブログ」に、カラー写真を添えて転載してくださいました。添えられた写真によって、ご著書のイメージが膨らみます。

大湾さんのブログはこちらです。

 

 

今回は、ラ・ロシェルという駅で、大湾さんが、映画『ダイ・ハード』のブルース・ウィルス張りの冒険活劇(?)を演じたのです。私はハラハラドキドキ、あるいは拍手しながら、あるいは笑いながら、読み進めました。

 

臨場感を表現したいため、『幻の旅路』の本文からの引用が多くなりましたが、ご了承ください。

 

100頁

ラ・ロシェルの海辺の風景

10月4日 ラ・ロシェル→ボルドー

 

写真 1985.08,18

「ノルウェーの美しい港町バーゲン、展望台から湾と対岸を望む」

 

ノルウェーといえば「フィヨルド」という言葉を思い出します。地理の授業が好きではなかった私でも覚えている言葉です。

ウィキペディアで確認すると

フィヨルド(ノルウェー語等:fjord、異称:峡湾、峡江)とは、氷河による浸食作用によって形成された複雑な地形の湾・入り江のこと。 ノルウェー語による通俗語を元とした地理学用語である。 湾の入り口から奥まで、湾の幅があまり変わらず、非常に細長い形状の湾を形成する。

中学生の頃、「氷河ってすごいな!」と驚いたことを思い出しました。

 

この場所で景色を見ていた大湾さんは、遠くから見られている視線を感じ、案の定、大湾さんに視線を注いでいた一人の男性からドライブに誘われます。幸い、その男性は「悪い奴」ではなかったようです。それにしても、大湾さんはモテますね!

 

102頁

ラ・ロシェルの駅で

 

スペイン行きの列車は夜八時発。辺りはもう真っ暗。駅の構内に十人ほど映画の関係者が列車を待っている。

(略)

監督さんらしい。雑誌を買って、ズボンのポケットからお金を出すのさえ様になっている。カッコいいなぁーと、思わず声が出てしまう。私もかつて映画を勉強し、いつかあんな製作スタッフの一人になりたいと夢見ていたことがあった。でもそれはもう遠い昔のことだ。

 

そもそも大湾さんは、映画や写真という、映像の世界で仕事をしたい、と、思っていたようですね。駅で出会った監督さんに憧れる気持ちがわかります。

 

さて、実は、ここからが大変だったのです。

 

 パリ行きの列車が入ってくる。その列車が出た後、構内は急にひっそりとする。次の列車を待っているのは私一人だけ。

(略)

 反対側のホームに渡る。驚いたことに、こちらのホームは真っ暗で、一等の車両がどこに停まるのか全く見当がつかない。列車がホームに入ってきた。柄の悪い二等の客が窓から顔を出してこちらを見ている。一等はもっと後ろの方らしい。慌てて列車の後尾へ走るが、貨物列車が何台も間につながっていて、肝心の車両が中々見えない。スーツケースが重くかさばって、膝の横にバンバンとぶつかって走りにくいことこの上ない。

 必死に走って、やっと一等の客車を見つける。列車の最後尾だった。ドアに手をかけ、えい! と力一杯開けようとしたが、どうしたわけか開かない。押しても引いてもびくともしない。こんなところで時間を費やしていられない。

 

こういう時って、本当に焦りますよね。もうすでにハラハラドキドキです。身体の中からアドレナリンが噴き出すようですよね。

しかし、ここからの大湾さんの行動が「ブルース・ウィリス」だったのです!!

 

 次の車両のドアに向かって突進する。えーい! これは開いた。ステップに足をかけた途端、スーと、何か動き出す。一瞬状況がつかめない。何だろうと思ったが、いま乗ったばかりの列車が動き出したのだ。停車時間はほんの一、二分で、何の合図もなしに、スーと動き出してしまった。私のスーツケースは、まだ砂利のホームの上にぽつんと置かれたままだというのに。

 

おそらく、次の文章は、大湾さんご自身もお書きになっているとおり、数秒の間の出来事だったかと思いますが、大湾さんが、当時の出来事とご自身の自問自答を克明に記してくださっているので、切羽詰まった緊張感が生々しく伝わってきます。

 

 完全にパニック状態に陥る。どうしようか? 自分だけ次の駅までいって戻って来ようか。しかし反対方向の列車がいつ出るだろうか。田舎の駅だから、明朝まで列車がないかもしれない。それともここで降りてホテルを捜すか。いや、駅からの長い道のりをこんな夜遅く一人では到底歩けない。それなら、あのスーツケースはそのままホームに放っておこうかとまで考える。いやいや、とんでもない。重くて重くて、あれほど恨みに感じたスーツケースでも、あれがなければ旅は続けられない。第一、私の唯一の旅の同伴者ではないか。と、ほんの数秒の間に頭が目まぐるしいくらい急回転して、ゆっくりだが既に走り出している列車から思い切って飛び降り、一目散にスーツケースのところにかけ戻る。

 

一瞬の判断がその後の展開を大きく左右するのですね!

 

 スーツケースを両手で高く掲げ、通過しかけている最後の車両の開いているドアを目がけて投げ込む。ガタンと床に落ちる音が聞こえた。次は私の体だ。この際、格好なんか構ってられない。入口の支柱につかまり、腹這い気味に体を床につけ、転がり込むようにして滑り込む。

 

まさに、映画『ダイ・ハード』の世界ですね!!

 

私は先日、大湾さんのブログのリンクを辿って、大湾さんがテレビ局の取材に応じている長編の2つの動画(You Tube)を視聴しました。

私に比べればよほど早口で、テキパキと司会者の問いに即答する大湾さんを見て、「誰かに似ている!」と思いました。その時は誰に似ているのか思い出せませんでしたが、今、ブログを書いていて思い出しました。

 

当時の大湾さんは、私が知っている数少ない日本の女優さんの中で、志穂美悦子しほみえつこさんに似ている、と、思い出しました。志穂美さんはジャパンアクションクラブ(JAC)の出身ですから、切れ味鋭い演技のできる美貌の女優さんでした。大湾さんは才色兼備の女性だなぁ、と、納得しました。

 

 ホーッ! と大きな溜息が漏れる。さすがに服はひどく汚れてしまったが、何とか荷物も体も無事に乗り込むことができた。人間、いざとなれば普通なら絶対できないことを、とっさの機転でやれるもので、後から落ち着いて考えたら危ないことこの上なくてぞっとした。

 

誰にでもできることではない、と、思いました。若さゆえの、気力・体力・身体能力を持ち合わせた結果、いや、それだけではなく、大湾さんご自身の性分が原動力になっていたのだ、と、思います。

 

 日本では駅のホームでもデパートのエスカレーター乗り場でも、お客様第一で「足元にお気をつけ下さい」とか「お忘れ物のないようにお降り下さい」と過保護なくらい手取り足取り注意してくれる。ヨーロッパでは「列車がホームに入ります」とか「間もなく発車いたします」といった発着の知らせは一切ない。

 

この辺が、来日する外国人観光客が気に入る「おもてなし」、「日本らしさ」につながっているのでしょうね。

 

 

 

 

(つづく)