前回のブログは、手まりつきに関する貞心尼の問いかけと、良寛和尚の返答について、明磧先生の解題を書きました。今日のブログは、その続きで、明磧先生は良寛和尚の五言詩を紹介なさいました。
以下の五言詩には振仮名があるとはいえ、よほどの素養がないと読めません。それでも、漢字一つ一つの意味を考えると、なんとなく分かったような気になりますが明快には分かりません。幸い、五言詩の後に明磧先生が大意を示してくださっています。
太字と下線はブログ筆者によります。
--ここから
青陽 二月の初め
物色 稍(よう)やく新鮮なり
此(こ)の時 鉢盂(はつう)を持し
得として 市鄽(してん)に遊ぶ
児童 忽(たちま)ち我を見
欣然(きんぜん)として 相将(ひき)いて来(きた)る
我を要す 寺門の前
我を携えて 歩(ほ)遅々たり
盂(はち)を 白石の上に放ち
嚢(のう)を 緑樹の枝に掛く
于此(ここ)に 百草を闘わせ
于此に 毬児(きゅうじ)を打つ
我打てば 渠(かれ)且(しば)らく歌い
我歌えば 渠之(これ)を打つ
打ち去り 又打ち来り
時節の 移るを知らず
行人(こうじん) 我を顧みて笑う
何に因ってか 其(そ)れ 斯(か)くの如きと
低頭して 伊(これ)に応えず
道(い)い得るとも 也(また)何(いか)に似せん
箇中の意を 知らんと要(ねが)わば
元来 只 這(これ) 是(これ)のみ
この五言詩の終り六行を読みなおしてみても、やはり良寛さんは、「わしが、夢中になって手まりをついていると、通りかかった大人たちが、あきれ顔でわしを見て笑い、なぜそんなことをして遊ぶのかと尋ねるのじゃが、わしは頭を垂れて答えないのだ。というのは、それは返答の仕様のない事だし、よしんば無理に答えてみたところで、何にもならないことじゃ。それでも、強いてわしの真意を知りたいというなら、そらご覧の通りじゃ。わしが、手まりがつきたいだけなのじゃよ」と言っているのであって、良寛さん自身も、なぜ自分が子どもたちと草相撲をしたり、手まりつきをして遊ぶのかということがわからなかったし、また、その理由を考えてみようともしなかったようです。
ところが、その謎(なぞ)を解く二つの文献があるのです。
--ここまで
上のとおり、明磧先生の解題において、良寛和尚自身も「(なぜこれほど手まりをついて遊びたくなるのか)わしが、手まりをつきたいだけ」なのだと話しています。
理をもって分かろうとしても分からないことなのかもしれません。
かつて私はブログで次のように書きました。
--ここから
長年、修行を積んで禅の悟りを得た良寛和尚は、実父の死に際し、蔵王権現の心を知って、さらに一段高い悟りを得、円周上を動く点が360度回って元に戻るごとく、穢れなき童(わらべ)のような心に「還っ」たのでしょう。
--ここまで
良寛和尚の手まりつきの謎についても、現在の私は、このように考えています。
しかし、明磧先生が、今日の引用の最後に「ところが、その謎(なぞ)を解く二つの文献がある」と述べられています。これは期待できますね!
次回のブログに続きます。
《辞書を読む》
『国語大辞典』(小学館1988)及び『新漢語林 二版』(大修館書店2013)
ごごんし【五言詩】
=ごごん(五言)
ごごん【五言】
(「言」はことば。漢字一字は、一語を表わすところから)一句が五字からできている漢詩の句。また、その詩、あるいはその詩体。五言詩。
せいよう(‥ヤウ)【青陽】
(五行説で「青」は春にあたるところから)
1 春の異称。初春にいう場合が多い。《季・春》
2 春の陽光。
3 春の景色。
ぶっしょく【物色】
1 物の色。また、景色や風物。
※2~5(略)
稍やくの「稍」⇒やや【稍・漸】
〔副〕(副詞「や(弥)」を重ねてできた語)
1 ある物事が少しずつ進むさまを表す語。徐々に。次第に。順を追って。だんだん。*天理本金剛般若経集験記平安初期点「念誦すること稍(ヤヤ)勤むるに」
※2~3(略)
う【盂】
〔接尾〕鉢、椀、またそのような形をしたものを数えるのに用いる。「一盂の水」
鄽 部首:邑(阝)
部首内画数:15画
総画数:18画
1-9284|―|6650
《音訓》テン
廛と同字。
廛 部首:广
部首内画数:12画
総画数:15画
5505|9C44|―
《音訓》テン・デン先chán
【異体字】
鄽同字
【異体字】
壥俗字
①みせ。店舗。「廛肆(テンシ)」
②周代、店から取った税金。店舗税。
③すまい。やしき。一家が住まいする二畝半(ニホハン)(四・五五アール)の宅地。
于 部首:二
部首内画数:1画
総画数:3画
4818|98B0|―
《音訓》ウ虞yú
《音訓》ク
【異体字】
本字
①ここ-に。お-いて。
※以下(略)
きんぜん【欣然】
〔形動タリ〕よろこぶさま。
こうじん(カウ‥)【行人】
Ⅰ
1 道を行く人。また、旅をしている人。
2 使者。
3 賓客の接待をつかさどる官の中国風の呼び名。
4 出征兵士。
Ⅱ 小説。夏目漱石作。大正元年~二年発表。互いに相手を理解しえない夫婦生活を通して、主人公の孤独な魂の苦悩を描く。
這 部首:辵(辶・)
部首内画数:7画
総画数:11画
3971|9487|―
《音訓》ゲン・ゴン願yàn
《音訓》シャ馬zhè,zhèi
【異体字】
俗字
【異体字】
俗字
むかえる(迎)。
これ。こ-の。
は-う(はふ)。
はらばう。
虫がはって歩く。
蔓(つる)などがまつわりつたって行く。
これ・ちか
這這(ほうほう)・這田(ほうだ)・這柏槇(はいびゃくしん)
形声。辶(辵)+言。
以下の五言詩には振仮名があるとはいえ、よほどの素養がないと読めません。それでも、漢字一つ一つの意味を考えると、なんとなく分かったような気になりますが明快には分かりません。幸い、五言詩の後に明磧先生が大意を示してくださっています。
太字と下線はブログ筆者によります。
--ここから
青陽 二月の初め
物色 稍(よう)やく新鮮なり
此(こ)の時 鉢盂(はつう)を持し
得として 市鄽(してん)に遊ぶ
児童 忽(たちま)ち我を見
欣然(きんぜん)として 相将(ひき)いて来(きた)る
我を要す 寺門の前
我を携えて 歩(ほ)遅々たり
盂(はち)を 白石の上に放ち
嚢(のう)を 緑樹の枝に掛く
于此(ここ)に 百草を闘わせ
于此に 毬児(きゅうじ)を打つ
我打てば 渠(かれ)且(しば)らく歌い
我歌えば 渠之(これ)を打つ
打ち去り 又打ち来り
時節の 移るを知らず
行人(こうじん) 我を顧みて笑う
何に因ってか 其(そ)れ 斯(か)くの如きと
低頭して 伊(これ)に応えず
道(い)い得るとも 也(また)何(いか)に似せん
箇中の意を 知らんと要(ねが)わば
元来 只 這(これ) 是(これ)のみ
この五言詩の終り六行を読みなおしてみても、やはり良寛さんは、「わしが、夢中になって手まりをついていると、通りかかった大人たちが、あきれ顔でわしを見て笑い、なぜそんなことをして遊ぶのかと尋ねるのじゃが、わしは頭を垂れて答えないのだ。というのは、それは返答の仕様のない事だし、よしんば無理に答えてみたところで、何にもならないことじゃ。それでも、強いてわしの真意を知りたいというなら、そらご覧の通りじゃ。わしが、手まりがつきたいだけなのじゃよ」と言っているのであって、良寛さん自身も、なぜ自分が子どもたちと草相撲をしたり、手まりつきをして遊ぶのかということがわからなかったし、また、その理由を考えてみようともしなかったようです。
ところが、その謎(なぞ)を解く二つの文献があるのです。
--ここまで
上のとおり、明磧先生の解題において、良寛和尚自身も「(なぜこれほど手まりをついて遊びたくなるのか)わしが、手まりをつきたいだけ」なのだと話しています。
理をもって分かろうとしても分からないことなのかもしれません。
かつて私はブログで次のように書きました。
--ここから
長年、修行を積んで禅の悟りを得た良寛和尚は、実父の死に際し、蔵王権現の心を知って、さらに一段高い悟りを得、円周上を動く点が360度回って元に戻るごとく、穢れなき童(わらべ)のような心に「還っ」たのでしょう。
--ここまで
良寛和尚の手まりつきの謎についても、現在の私は、このように考えています。
しかし、明磧先生が、今日の引用の最後に「ところが、その謎(なぞ)を解く二つの文献がある」と述べられています。これは期待できますね!
次回のブログに続きます。
《辞書を読む》
『国語大辞典』(小学館1988)及び『新漢語林 二版』(大修館書店2013)
ごごんし【五言詩】
=ごごん(五言)
ごごん【五言】
(「言」はことば。漢字一字は、一語を表わすところから)一句が五字からできている漢詩の句。また、その詩、あるいはその詩体。五言詩。
せいよう(‥ヤウ)【青陽】
(五行説で「青」は春にあたるところから)
1 春の異称。初春にいう場合が多い。《季・春》
2 春の陽光。
3 春の景色。
ぶっしょく【物色】
1 物の色。また、景色や風物。
※2~5(略)
稍やくの「稍」⇒やや【稍・漸】
〔副〕(副詞「や(弥)」を重ねてできた語)
1 ある物事が少しずつ進むさまを表す語。徐々に。次第に。順を追って。だんだん。*天理本金剛般若経集験記平安初期点「念誦すること稍(ヤヤ)勤むるに」
※2~3(略)
う【盂】
〔接尾〕鉢、椀、またそのような形をしたものを数えるのに用いる。「一盂の水」
鄽 部首:邑(阝)
部首内画数:15画
総画数:18画
1-9284|―|6650
《音訓》テン
廛と同字。
廛 部首:广
部首内画数:12画
総画数:15画
5505|9C44|―
《音訓》テン・デン先chán
【異体字】
鄽同字
【異体字】
壥俗字
①みせ。店舗。「廛肆(テンシ)」
②周代、店から取った税金。店舗税。
③すまい。やしき。一家が住まいする二畝半(ニホハン)(四・五五アール)の宅地。
于 部首:二
部首内画数:1画
総画数:3画
4818|98B0|―
《音訓》ウ虞yú
《音訓》ク
【異体字】
本字
①ここ-に。お-いて。
※以下(略)
きんぜん【欣然】
〔形動タリ〕よろこぶさま。
こうじん(カウ‥)【行人】
Ⅰ
1 道を行く人。また、旅をしている人。
2 使者。
3 賓客の接待をつかさどる官の中国風の呼び名。
4 出征兵士。
Ⅱ 小説。夏目漱石作。大正元年~二年発表。互いに相手を理解しえない夫婦生活を通して、主人公の孤独な魂の苦悩を描く。
這 部首:辵(辶・)
部首内画数:7画
総画数:11画
3971|9487|―
《音訓》ゲン・ゴン願yàn
《音訓》シャ馬zhè,zhèi
【異体字】
俗字
【異体字】
俗字
むかえる(迎)。
これ。こ-の。
は-う(はふ)。
はらばう。
虫がはって歩く。
蔓(つる)などがまつわりつたって行く。
これ・ちか
這這(ほうほう)・這田(ほうだ)・這柏槇(はいびゃくしん)
形声。辶(辵)+言。