火縄銃に限らず鉄砲の銃身は,お尻を塞いだ鉄のパイプだ。そのお尻を溶接したり鍛接したりしただけでは,火薬の燃焼による爆発力に耐えられず破裂してしまう。だから,銃身のお尻にネジ穴を切ってネジで塞ぐのである。このネジのことを尾栓と呼んでいる。
古い火縄銃を安全に撃てるようにするためには,この尾栓ネジを外さねばならない。錆で尾栓が固着した火縄銃で射撃するのは危険なのだ。錆でボロボロになった尾栓が火薬の燃焼エネルギーに耐えられず,暴発して射手を傷つける危険性が大きいからだ。この鉄砲の尾栓を外すのには,かなり手を焼いた。
銃身に目当て(照準器)が4つも付いている珍品。
『目当て3』は,イボ状の銀象嵌なので,この写真では見えていません。
問題の鉄砲に錆取り剤を流し込み一週間ほど放置。その後二週間ばかり油漬けにし,毎日木槌で200回以上ぶったたくのだ。尾栓抜きのコツは,尾栓と銃身の間に付着した錆を粉砕することにある。機械油を錆に浸透させ,油がすっかり錆に回りきれば,錆は泥状になり尾栓が抜けるという寸法だ。しかし,この鉄砲はかなり頑固で,尾栓は回るようで回らない。錆取り剤の放置や油漬けを何度も繰り返し,二か月以上もかけて,やっと尾栓を抜くことが出来た。
やっと抜けた尾栓
ところがだ。苦労をして抜いた尾栓は,錆でズサズサに腐食してすっかりやせ細っていた。この尾栓を銃身に回し入れてみたところ,かなりユルユルだった。これでは尾栓としての役割を果たせない。
抜けたてホヤホヤの火縄銃の尾栓
抜けたての尾栓 研磨後の尾栓
汚れを落とし,ワイヤーブラシで磨くとこうなります。
だが心配することはない。やせ細った尾栓ネジに熱した銅管を被せてネジ山に沿ってタガネでたたき込んでいけば,元通り肉厚の尾栓ネジに復元することができるのだ。
銅管を被せた尾栓ネジ




