ちひろを車で送った翌日

守屋は周の仕事部屋を訪れると、デスクの上に自作の請求書を叩きつけた

「昨日の経費、ガソリン代に深夜手当と精神的慰謝料も上乗せさせてもらったよ」

周はデスクの上のパソコンを見つめたまま、微動だにせず「了解」とだけつぶやいた

「“了解”じゃねえわ、最初から説明してもらおうか?」

守屋は椅子を逆向きにして跨いで座ると、人差し指で眼鏡を押し上げ周に迫った

「説明って?」

「まさかと思うが未成年じゃないよな、あの小娘?アンタがやらかしたら、うちの会社は潰れるぞ」

周はキーボードを叩くのを止め、上目遣いに守屋を睨んだ

「小娘じゃない…ちひろだ、ちひろ。21歳、学生証で確認したから間違いない。会社が潰れる?俺を買いかぶりすぎだろう」

「ちひろ」という部分だけ、響きが甘いことに気づいた守屋が天を仰ぐ

「学生!?いったいなんの冗談だよ?あんなガキに手え出すなんて。ああいう真面目そうなタイプは思い詰めたら何するかわからんだろ」

「ちひろはそんな馬鹿な子じゃない」

周はデスクチェアの背もたれに寄りかかり、所在なげに窓の外に目をやった

「恋愛したことないやつは、これだから」

守屋は吐き捨てるように言って立ち上がり、周の視界に入り込む

「なに言ってんだ?俺はユリと…」

「中学からの腐れ縁なんか、まともな恋愛とは言わねえよ」

「おまえの地元では初恋を腐れ縁というのか、品がないな」

「ふざけてないで正直に言え!あの小娘と一緒になりたいとか思ってるわけ?」

「そんなこと、出来るわけないだろう」

周は自分に言い聞かせるように、大きく息を吸ってからつぶやいた

「だったらなんで!?冗談抜きで、刺されても知らんぞ」

「そんな深刻な関係じゃない。なんていうか、仕事に生かせればと思ってね」

「へえ、仕事…ね。鏡、見てねえの?目がうさぎみたいに真っ赤だぜ」

守屋に言われ、周は慌てて瞳を伏せる

「…自分が思ってる以上に、設定が穴だらけなのに早く気づけよ。小娘だからって甘く見てると、そのうち痛い目にあうからな」


つづく↓