ひと月ほどが経った頃

「いらっしゃいませ」

男は再び、ちひろが働くカクテルバーに現れた

「えっ!?」

驚きのあまり、ちひろが言葉を失っていると

「久しぶり…今夜も終わるの待ってるね」

注文したギムレットに口をつけながら、男はカウンター越しにそっと囁く

暗闇に光る獣の瞳にも似たその眼差しに、ちひろは再び捕らえられた


2時間後


バイトが終わり、ふたりはあの日と同じホテルへ向かう

最上階の部屋に着くなり

「会いたかった」

男はちひろをきつく抱きしめ、すでに硬くなった自身の欲望を押しつけた

「んっ!」

重ねた唇に舌を差し入れ、ダブルベッドに沈めた女の感触を指先で楽しんでいると

「あの…」

ちひろが男のベルトに両手をかけ、上気した顔で口を開いた

「なに?」

すでにワンピースのファスナーを下ろし、キャミソール越しに胸を愛撫していた男が尋ねると

「口…でしてもいいですか?」

微かに聞き取れるくらいの小さな声でそう言った

前回抱かれた時、ちひろはされるがままになっていたため、そういった行為はしなかったのだが

「したい?」

「はい」

彼自身を愛してみたい衝動が抑えきれない

「じゃあ、シャワー浴びてから…」

男が一旦体を離すと、お腹のあたりに体温を感じてドキッとした

彼女の細い指先は下着の中の熱い塊を捉えて引き出し、妖しい動きを見せ始めている

「ダメだ、って」

9月に入り蒸し暑さはだいぶ和らいだとはいえ、1日スーツで過ごした体はそれなりに汗もかいているため男は焦った

「このままでいいです」

言い終わるより先に、ちひろの小さな口に男の部分が飲み込まれていく

「くっ…」

最初に抱かれた夜も今夜も、ちひろは男の匂いに惹かれていた

口の中いっぱいに頬張った男のものに夢中になって舌を這わせていると、自身の中心も湿り気を帯びていくのがわかる

「もういい、えーっと」

危うく口の中で達しそうになった男がちひろを止めた時、まだお互いのことをなにも知らないことに気がついた

「名前は?」

「ちひろ、森崎ちひろです」

濡れた口元を手の甲で拭いながら、彼女はためらうことなく本名を名乗った



つづく↓