前回分
ある場所で……
「あの~寿老人様~~、彼はどうなるのですか?」
寿老人と共にいる牡鹿が尋ねる。
寿老人は岳生から貰った酒を飲みながら、
「……どうなるも何も九尾がさすがに気づいて、取り戻しに来るじゃろうな」
と陽気になっていた。
「じゃあ、彼はただでは済まないと……」
牡鹿は心配気に言う。
「一応、わしは忠告したのだぞ、10までにしておけとな」
「それならば、最初から10に分ければ良かったのになぜ2本目の尻尾まで使ったんですか?」
牡鹿は更に尋ねた。
「そうしないと、黒九尾はわしのところへ来てしまうだろうて……
寝ている間に尻尾の手入れをしてやろうなんてウソまでついてしまったわけだし、尻尾が無くなったことに気づいたら、わしが責められるだろう?」
「待ってください、何で黒九尾さんは尻尾1本丸々無くなっても気づかなかったんですか?」
「それはこれじゃ」
寿老人は懐からひょうたんを見せた。
「それは不死の霊薬……」
「そうじゃ、この霊薬は不死の力以外にも、かりそめだが実際にないものもさもあるようにも見せられる力も秘めておる」
「その霊薬で、つまり黒九尾さんの尻尾をカモフラージュしていたってことですか!」
「そういうことじゃ、ただし大してもたんのだがな」
「それで自分が責任逃れをする為に、残りの飴を彼に渡して、使いきったら責任は彼に行くように仕向けたと……」
「そうじゃ」
「残酷ですね、仮にも七福神の1柱でもあるあなた様が……」
牡鹿は嘆く。
「……わしはたくさんの人間の願いをさんざん聞いてきたのじゃ、
たまには自分の願いを聞いて貰ってもいいではないかと思うてな」
「ええ~~?」
牡鹿は不服そうな声を出す。
寿老人はそう言うが、人間の願いごとは殆ど聞き流しており、ほんのまれにそして気まぐれで叶える程度だった。
「わしは人間の貨幣を持たない。
だからして、酒は人間から貰わないと飲めないのだ、仕方ないであろう。
一応、また言うが忠告はしたのだぞ、残りのブラック飴を置いていけとな」
「まーそうですけど……」
牡鹿はあきれていた。
そして、
「彼はあれからどうなったんですか?」
岳生の安否を尋ねた。
「あやつは神社で倒れているのを、通りすがりの人から救急車を呼んで貰ったようじゃな……
皆、仰天したろうて、いろんな体の部分が抜け落ちた人間が転がっていたのじゃからな。
そして彼は病院に運ばれて……ああ~~!」
「何ですか!? 突然、大きい声を出して」
牡鹿は戸惑うと、
「不死の霊薬を九尾の尻尾に塗っていたのだから、ブラック飴にも当然入っているということで、
したがって岳生なる男はあのまま永遠に生き続けてしまうことになる!」
「ええっ!? ……じゃあ、例え、死んだと間違えられて火葬場で燃やされても……もしかして?」
「死なんな……」
牡鹿はその後は何も言えなくなってしまった。
そしてまた数ヶ月後、とある神社で、
「そこの奥さん、こちらのピンク飴はいかがかな?」
飴売りのおじいさんは今度は女性に声をかけて……
【完】
はじめから


