この雲の上の世界には、雷神以外にも風神がいました。
風神の風は株式会社タツ&マキで製造されています。
言っておきますが、スナック名ではありません。
風の製造会社です。
タツ&マキのタツは旦那さん、マキはタツの奥さんの名前でした。
単純ではありますが、特殊な白い袋に風を詰め込む作業をしています。
風神以外の風神族の弟子達はタツ&マキの製造業で働いているらしいです。
なので現場で突風以上の風を吹かす仕事は風神のみで行われており、花形な仕事でした。
それでもそよ風ぐらいでしたら、風神候補生が担うらしいとか……
ある日の午後、ナリゾウがある雲の上を歩いていたところに、ひとりの風神さんに出会いました。
「風神さん、こんにちは」
ナリゾウは風神さんに声をかけます。
風神さんはあぐらをかきながら、白い袋から風を地上に放出しているところでした。
「お、お前はあの黒鬼カミナリのところの……」
風を吹かせながら風神さんは、ナリゾウに気付きました。
「ナリゾウです」
ナリゾウは名乗ります。
「おお、ナリゾウかー、お前、いろいろやらかしているらしいな~」
どうやら、風神さんのもとまでナリゾウの噂は知れ渡っているようでした。
「ええ~、何のことですか~?」
ナリゾウはとぼけます。
「知ってるも何も……お前んとこの親方が浅草の雷門にド派手に落ちて、雷おこししちまったってな。
でもそれが最近では、類を見ない雷おこしだったとかで、なかなかな雷組織委員会からは好評価だったらしいじゃねーか」
どうやら地上で、なかなかな話題なニュースになったことが幸いしたらしいです。
まさか車のマフラーを付けたら、こんな大事件…いや話題性になるとは……
「どうしてお前は、そんなことばっかりするんだ?」
風神さんはナリゾウに尋ねます。
「……だってさ、何か面白いことしないとつまんねーじゃん、ただ雨を降らすだけなんて誰でも出来て退屈だしさ。
うちにいれば、父ちゃんや母ちゃんは弟達のことばっかりでさ、構ってくれねーしさー、
お前は長男だからって無理矢理修行に出されただけだしさー……」
ナリゾウはなんと! 長男だということが発覚!
「ナリゾウ……それが風神、雷神の宿命ってもんだ、退屈だからってみんなに迷惑をかけたらいけねーだろう?
地道でもちゃんとしーねとなー、そうしたらきっと報われる、だからお前ももっと……」
風神さんは黒鬼のカミナリ親方とは違い、優しく諭していましたが……
その時、
「あ、風神さん、ごめん」
「ん? 何だ?」
すると、ナリゾウはニヤニヤしながら、
「こんな間近で風神さんの風袋を見たことなかったからついつい、そこにあった木の棒で突っついたら……
穴が空いちゃった! ごめんよ!」
ナリゾウは風袋を指さすと、すう~~となんと風神さんの持っていた風袋から風が漏れてだして!
次の時は袋に入っていた風の勢いは一気に増して、風船みたいに風神の手から離れてビュルルーーンと凄い勢いですっ飛んでしまいました!
「あ~~! 風袋が~!」
風神さんは慌てて、どこへ飛んで行くか予測不能な風袋を回収するべく、雲に乗って追いかけていきました!
ナリゾウはケラケラと笑い転げて、全く風神さんの話を聞いていませんでした。
その日の地上のニュースでは、
『突然、◯◯県◯市の上空で巨大な竜巻が発生しました……』
と大々的に報道されてしまいました。
温厚な風神さんはとうとうナリゾウに激怒してしまい、後で黒鬼カミナリ親方からも大目玉を食らいました。
あーあ、やっちゃったね、ナリゾウくん。
本日はここまで。
