「この間は誰とは言わんが、とんだ失態になったからな…」
ここはいつものカミナリさん達の雲の上の世界。
黒鬼のカミナリ親方がそう言った途端、小鬼達は一斉にナリゾウを見ました。
「な、何だよ、止めろよ~、オレを見んなよテレるだろう!?」
ナリゾウはこの刺さるような視線にさえ、何とも思わずニヤニヤと笑いました。
それどころか、他の小鬼の背中をバンバン叩きます。
何というポジティブなんでしょう!
かえって一同あきれ返りました。
親方は咳払いをすると、
「とにかくあの後、ナリゾウに片付けを任せたワシが悪かったらしくてなあ。
置きっぱにしたワシのドラムセットを、他のもっと幼い小鬼達がやってきて勝手に鳴らし始めてしまったらしい!」
親方の話では、どうやらナリゾウは片付けをサボってしまったようでした。
「マジかー」
自分のせいなのに、ナリゾウは吹き出しそうになるのを必死でこらえます。
「雨が全く降っておらんのに雷鳴ばかりで、カミナリの無駄遣いだったと雷組織委員会から苦情が来てしまったぞ!
今度、このような失態があった場合はしばらくカミナリの仕事は停止処分、このままだと雨のタンクの支給もなしだ!
だからお前ら気合いを入れてやるんだぞ!」
おおー!! と小鬼達は声をあげました。
尚一層、声を高らかにあげたのはナリゾウです。
全く調子が良いです。
そして雨のタンクをそれぞれ小鬼達は背負いました。
今回はナリゾウもマジメにタンクを背負い、滞りなく雨を地上に降らします。
なにごとも起きないかと思った時でした。
「お、順調だな、そろそろ準備をするかあ」
と黒鬼のカミナリ親方は、いつものように自分の雲に乗って移動をしようとしました。
その時です!
親方の雲がヴォォォン……と低音が聞こえて…!?
ヴォォン! と親方の雲がなんと吹かし込みました。
次の瞬間、ヴォォ…………ンッ!
凄い音が親方の雲からしたら、親方を乗せた雲は凄い勢いで吹っ飛んでいきます!
「うわ~~~!! 誰だあ! ワシの風来坊に細工をしたばかもんはぁぁ~~!!」
親方は凄いスピードと凄い音を出した雲、どうやら雲の名前は風来坊というらしく、風来坊から落ちそうになりながら必死にしがみついています!
「わわっ! た、大変! 親方が!」
小鬼達はどよめきます。
が勢いはおさまるどころか、暴走車のような雲は右往左往していました。
そしてとうとう耐えきれなくなり、親方は風来坊から落ちてしまいました!
「あー! 親方!」
「カミナリがっ」
落ちたーーー!!
ドラムセットも丁度積んでいたので、黒鬼のカミナリ親方と一緒に。
ガラガラ……ピシャーーーン!!
と落ちてしまいました。
小鬼達は雲の上から慌てて、地上をのぞき込みます。
親方を探します。
小鬼達は口々に、
「あの辺りってスカイツリーかな?」
「バカだな~、スカイツリーは避雷針だぞ! 誰かカミナリ仕様の望遠鏡を」
言います。
誰かが持ってきた望遠鏡をのぞくと、黒鬼のカミナリ親方はなんと、
「親方いたーー!!」
「どこに?」
「雷門だー!」
どうやら親方は浅草に落ちてしまったみたいでした。
「カミナリだけに浅草の雷門かよ~~!」
ナリゾウだけが爆笑してヒイヒイ笑っていました。
しかも、
「これが本当の雷おこしじゃん!」
と更に笑い死にそうになっていたナリゾウでした。
そうです、親方の移動用の雲、風来坊に人間界から持ち込んできた車のマフラーをナリゾウは勝手に仕込んでいたのです。
どうやら、いつもこってりしぼられる腹いせにいたずらをしたようでした。
それにしてもナリゾウは、まさかの雲の風来坊に人間界のマフラーをつけると、こんなに威力が増すとは夢にも思いもしませんでした。
「あーすっきりした」
ナリゾウ、マジでとんでもないヤツ。
浅草の雷門から帰って来た親方は、
「おみやげだ」
と言ってまさかの雷おこしを、みんなに買ってきたらしいとか。
でも、もちろん、ナリゾウの分はありませんでした。
これが本当の雷が落ちると雷おこしの由来です。
嘘です。
本日はここまで。
