若い頃はナイフみたいな…
とぼけている人たちが
半径5m以内に入ったら
いきなり切りつけるみたいな
厳しい人だった父。
しかも、どこまでも正しく
逃げ道塞いで理責めするから
相手は立ち上がれなくなる。
父を見て、正しさって
諸刃の剣だなぁって
感じてたっけ。
歳を重ねて、どんどん丸くなり
柔らかくなって来たとはいえ、
とにかく洞察力が高くて
色々感じ取って先読みをするから
周りを圧倒することはあるのよね。
そんな父は、もう何十年も
同じ教会に通っている
敬虔なクリスチャンで、
長老・聖歌隊の指揮者・
滅多にいない理系技術者として
教会を支えて来たんだ。
退職してからは特に
教会の仕事が多くて、
片道1時間半掛かるのに
呼び出されて行くこともあって
大変そうだなぁとは思ってた。
そんな中で最近、
礼拝の途中でトラブルがあって
全体が戸惑うことになりそうだから
最もシンプルで有効な方法で
彼が対処したんだけど、
それを、出過ぎた真似だと
叩かれたらしいの。
彼は思った。
あぁ、もうこの教会での
自分の役目は終わった、と。
私に話してくれた父は
とても穏やかな表情だった。
彼は、何か問題があると
気付いてしまったら、
そこを改善したくなる人で、
ずっと戦う姿勢で
頑張って来たんだよね。
自ら出る釘になって
打たれてもビクともしない。
そんな生き方をしてきた。
会社でも、教会でも。
結果的に周囲が
頼ってくれることも多くて
それは嬉しいことだけど、
あまりに負担が大きい。
一人で全て請け負うやり方を
もうそろそろやめようと思う。
と言ったの。
調べてみたら、家から
程遠くないところに、
良さそうな教会も見つかった。
もう前に出て踏ん張るんじゃなく
みんなの中に静かに混ざり
穏やかに、ただ祈りたい。
そんな想いでいることを知って
私は、父の偉大さを感じたんだ。
今の自分を冷静に見つめて
自分のために新しい選択をする。
それって、簡単なことじゃない。
年老いた人なら尚更。
でも父は、もう、自分を
楽にさせてあげたい。
そんな風に思って
階段を降りることを決めて、
でも残された人たちが
困らないように、
一年ほど掛けて引き継ぎや
クロージングをしようとしている。
父は、優しい。
優しすぎたのかもしれない。
人のために頑張ってきて…
今、75歳にして
その優しさを自分に注ごうと
決めたんだなぁ。
素敵だなぁって
心から感じた。
この人の娘で良かったなぁ。
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