最後の滝を見に行くと、そこは廃墟に囲まれていました。
町営の学生寮。
旅館が3棟。
何かしらの体験学習ができた施設。
木工クラフトの建物。
どれも、何年も人の手が入ってない状態で
ただ建物だけが残されていました。
滝は国道の下のゴツゴツとした岩から流れ落ちて
また岩と岩の間を通って消えていきます。
なんとも言えない寂寥感。
その重い空気を払拭しようと、近くにあるらしい吊橋へ移動しました。
先ほどの場所よりは大分と開けていて明る・・・くても良いはずですが
陽が傾いたのも手伝ってか、やはり寂しい雰囲気です。
吊橋の向こう側には、これといって何も見るところはなさそうでしたが
とにかく渡ってみようと歩き出したその時です。
対岸に、奇妙な図柄を発見しました。

白と黒の・・・等高線のような・・・ムンクの叫びを思わせる形。
思わず「あれは何!?」と声を上げて、足取りが軽くなりました。
いつだって私たちは「秘密」や「不思議」が大好きなのです。
端を渡りきったところに、女性4人のグループがいました。
何かの建物の跡地でしょうか、コンクリートの土台の上に
四隅だけブロックが置かれた四畳半ほどのスペースに
ブルーシートを広げ、何か食べ物などを持ち寄っているようです。
そこからは川が見える位置ではないし、周りには枯れ木しかなく、
楽しい場所のようには思えず、とても不思議な光景です。
こんにちはと声を掛けようとしたら、
心なしか私たちの目を避けるようにさらに輪を小さくします。
放っておいて欲しいのかな、と解釈して私は彼女たちを横目にその模様へ近づきました。
近づいて見ても、やはり不思議な模様です。

水溜りが凍っているだけ、なのですが、周囲の他の水溜りは普通に一面が白く
このような模様になっているのは、この大きな部分と、
すぐ近くに1/5ほどの小さな水溜りの二箇所だけでした。
見ていると、子どもの頃のようなファンタジーの世界がもくもくと動き出します。
「これ、宇宙人からのメッセージだよ。」
「埋蔵金のありかを示した地図じゃない?」
「いや、国家機密で・・・あの女の子たちが実は監視してるに違いない。」
あれこれと想像が膨らみ、盛り上がります。
一人が大きな水溜りの上に立ってみようと足を乗せました。
ピキっと音がなり、中に空気の泡が動くのが見えました。
「危ないよ!」と引っ張り上げたのですが、すぐにまた
小さな水溜りの氷の上に足を乗せました。
すると、いっきにバリっと表面の氷が割れたのです。
中から出てきたのは・・・

無造作に放り投げられたように見える、薄い氷の板のかけらたちでした。
枯れ葉と一緒にかなり沢山入っています。
そのまたかなり下の方に、水があるのが分かりました。
この後、私たちは、あーだこーだとまた想像を膨らませて楽しみ、
「重要なものを壊してしまったから国際警察のブラックリストに乗っちゃった!」
「逃げろ~!」
などと言いながらその場から離れました。
*****
その、奇妙な模様の氷の下にあった、
すかすかの空間に入っていた氷の薄い板のかけらたちの映像が
なぜかその後もずっと私の中に残っていました。
思い出すと懐かしい感じと切ない感じが胸にやってきます。
それは一体なんなのかというと
つい最近まで、心理療法を学ぶまでの、私の状態を重ねていたようです。
表面は、人の興味を引く不思議な形、奇抜な格好。
でもエゴで固められていて、脆く傷つきやすい。
内側には今までしてきた「過去の栄光」のかけらが詰まってる。
それ自体はもうスカスカな、実態の無いものなのに
壊れやすい表面の化粧版の下に大事に大事にしまっていて、
その下の、ありのままの豊かで自由な本当の自分は見えなくなっている。
切ないのは、その状態で奥のほうへ追いやられていた本当の自分の声が聴こえるから。
「過去の残像の中に、私はいないよ。 ちゃんと私を見てよ。 私はここにいるよ。」と。
今でもクセで、何かが「ウマく行った」と思うと
その時の自分を、後から再現し続けようとするところがある私です。
結果、今の瞬間瞬間の自分を見ることができなくなり、苦しくなるのです。
割れた氷も、何層にもなった氷のかけらも、
その下にある水に落とし込めば、ゆっくりと溶けて一体となります。
まずは、水の存在に気付き、まっすぐに見つめること。
私も今、ゆっくりと一体になる、長いプロセスの途中にいます。
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