「飛行機の売上の8割以上は、
ファーストクラスや
ビジネスクラスなどの
プレミアムシートから生まれている」
「エコノミークラスの売上だけでは
飛行機は飛ばせず赤字になる」
「つまり、お金持ちが
高い料金を払ってくれるから、
それ以外の人たちは
安く飛行機に乗ることができる」
こんな話を見かけたことある人は
いるかな?
この話は、
キングコングの西野亮廣さんが
自身の「VIP戦略」や
高単価商品の重要性を説明する際にも、
わかりやすい例えとして
繰り返し使われている。
要するに、
「私たちが安く飛行機に乗れるのは、
お金持ちのおかげ」
という話だ。
西野さんのように影響力のある人が、
具体的な数字を使って
「VIP客に高いお金を払ってもらい、
全体を成立させる」
というビジネスモデルを解説すると、
なるほどと妙な説得力を感じてしまう。
確かにファーストクラスや
ビジネスクラスは高い。
でも何かがおかしい!
そう直感した私は、
本当に飛行機の売上の8割以上を、
そうした人たちが払っているかを
事実ベースで調べてみた。
4つのAIを駆使し、
ソースとなったらしき
記事やYouTube動画のまとめを見たりして
こんなことがわかった。
数字に興味のない人は
☆じるしのところまで飛んで
結論を見てね。
まず、実際の航空業界の
数字から見てみよう。
IATA(国際航空運送協会)
の統計によると、
2024年の国際線では、
ファーストクラスや
ビジネスクラスを利用した人は
全体の約6%だった。
では、この少数の人たちが、
ものすごい金額を払って
全体を支えているのか?
確かに、人数の割には
かなり大きな売上を作っている。
IATAの資料では、
コロナ前の2011〜2019年平均で、
プレミアムクラスが生み出した
旅客収入は全体の約20%。
国際線だけを見ると、
2019年には約30%を占めた
というデータもある。
これは十分に大きい。
しかし、ここでちょっと
考えてみてほしい。
プレミアム客が30%なら、
それ以外の客が70%。
20%なら、
それ以外の客が80%だ。
つまり実際の航空業界全体では、
旅客収入の大部分を生み出しているのは、
プレミアム客以外なのだ。
「飛行機の売上の8割以上を
お金持ちが払っている」
という話とは、
ほぼ逆である。
では、この「8割」という数字は、
まったくのデタラメなのだろうか。
調べていくと、
そういうわけでもなかった。
ここが、この話の
面白いところだ。
ビジネス客の多い
長距離国際線では、
プレミアムクラスの売上が
非常に大きくなることがある。
航空業界を分析しているMcKinseyが、
ロンドン―ニューヨーク便を例に
試算している。
エコノミーは173人乗って
売上約6万9000ドル。
一方、ビジネスクラスは
わずか22人なのに
売上約6万6000ドル。
つまり、22人のビジネス客が、
173人のエコノミー客と
ほぼ同じ売上を作る。
だから
「少数のプレミアム客が
航空会社の売上や利益に大きく貢献する」
という話そのものは正しい。
さらに調べてみたら、
西野さんが使っている
「8割」という数字の元ネタらしきものも
見つかった。
2017年、海外のYouTubeチャンネル
Wendover Productionsが、
ブリティッシュ・エアウェイズの
長距離便を例に試算している。
ロンドン発の
ボーイング777を使って、
「もし全224席が、
その時の航空券価格ですべて売れたら?」
と計算した。
すると、エコノミー以外の
座席が生み出す売上が、
約84%になった。
なるほど、
「8割」という数字には
ちゃんと元ネタがあったわけだ。
ただし、ここには
非常に重要な点がある。
まず、この84%には
ファーストとビジネスだけではなく、
プレミアムエコノミーまで含まれている。
ファースト+ビジネスだけなら
約68%になる。
そして何より、
これは航空業界全体の統計ではない。
「特定の航空会社の、
特定の長距離路線を取り出して、
全席満席だった場合を計算した
シミュレーション」
なのだ。
つまり、
「ある特殊な条件の飛行機を計算したら
約84%になった」
という話が、いつの間にか
「飛行機の売上の8割以上は
プレミアム客が払っている」
という航空業界全体の話に
変わってしまったようなのだ。
☆そして、この数字を
日本のビジネス・自己啓発の文脈に持ち込んで
大きく広めたのが、
前述の西野さんだ。
西野さんの著書『夢と金』は
発行部数23万部を突破し、
楽天ビジネス書、
オリコンの自己啓発書、
年間ランキングで
ともに1位を獲得している。
それだけの数の読者が、
この本を通じて
「8割」説に触れたことになる。
数字の出どころは
2017年の海外動画だったとしても、
それを日本のビジネス界隈に
広く定着させたのは、
間違いなく彼の発信力だ。
さらに、もう一つ
考えて見ると、
ファーストやビジネスの客は、
エコノミーと同じ商品に
何倍ものお金を払っているわけではない。
そもそも席の広さが違う。
大型長距離機を例に単純計算すると、
ビジネス1席で
エコノミー約3〜4席分、
ファーストなら
約7席分程度のスペースを使う場合もある。
ラウンジや高価な座席設備、
食事や酒にもお金がかかる。
つまり、高い料金を払っているが、
その分、高価な商品を買っている
ということでもある。
それでも利益率が高いのだから、
航空会社にとって
プレミアム客が重要なのは間違いない。
問題は、その次だ。
「プレミアム客は
航空会社の利益に大きく貢献している」
から、
「一般の人は、
お金持ちのおかげで飛行機に乗れている」
と言う結論づけた。
これは話が飛んじゃって飛んじゃって、
欽ちゃん二郎さんもびっくりだ。
なぜなら、世界には
ファーストクラスも
ビジネスクラスもほとんど置かず、
ほぼエコノミーだけで利益を出している
LCC(格安航空会社)が
たくさんあるからだ。
つまり、エコノミー客だけでも、
飛行機を飛ばすビジネスは普通に成立する。
航空会社には、
広い席を少数の人に
高く売って利益を出したい会社もあれば、
狭い席をたくさんの人に安く売って
利益を出す会社もある。
【追記】
コメント欄でご指摘いただいたので追記すると、
旅客機は人だけでなく、
客室の下で商業貨物も運んでいます。
McKinseyが試算した
ロンドン―ニューヨーク便では、
貨物収入は一便の総収入の約4%。
路線によって割合は大きく違いますが、
これも航空会社にとって大事な収入源の一つです。
だから
「プレミアム客が
航空会社の利益に大きく貢献する」
ことと、
「プレミアム客が
一般客の飛行機代を払ってあげている」
は、全く別の話なのだ。
西野さんの語る
「VIP戦略」という
ビジネスの考え方自体は
まあ面白いし、
というか今では
よくある話なのだが、
高価格帯の商品を作って
利益率を上げるという視点は、
商売としてとても理にかなっている。
複雑なマーケティング理論を
身近な例えでわかりやすく伝える
プレゼン力も、
さすがだと思う。
ただ、その説得力を強めるために
事実とは言えないことを
広めるのはいかがなものか、
と私は思う。
そして!!!!!!
それより気になったのは、
『なぜ、ほとんどの私たちは庶民なのに、
「金持ちのおかげで安く飛行機に乗れている」
みたいなストーリーを、好んでしまうのか』
と言うか、
『簡単に乗ってしまうんだろう?』
ということだ。
ここでまた考えるのが私。
なんでだろう?
なんでだろう?
両手をくねくねと交差させながら、
心理的にいくつかの理由を考えてみた。
一つ目は、
成功している人の話は、
内容そのものよりも
「誰が言ったか」で
信じられやすいということだ。
西野さんのように
結果を出している人が
自信満々に数字を出すと、
「この人はビジネスで
結果を出しているんだから、
この話も正しいはずだ」
という気持ちが働く。
これは心理学で
「ハロー効果」と呼ばれるもので、
ある分野で優れている人は、
他の分野の発言も
無条件に信頼してしまう、
という現象だ。
西野さんは
エンタメやビジネスで
実績があるからこそ、
彼が語る「業界の裏側」も、
つい真実のように受け取ってしまう。
二つ目は、
単純に、複雑な話より
単純な話の方が
気持ちいいからだと思う。
「航空業界の収益構造は
路線や会社によって全然違って、
平均すると2〜3割くらいが
プレミアム客の貢献で……」
みたいな話は、正確だけど、
正直あまり面白くない。
それに比べて
「金持ちのおかげで
安く乗れてるんだよ」は、
一言で終わるし、
驚きもあるし、
人に話したくなる。
人は、正確さより
「話しやすさ」を優先して
物語を選んでしまうことがある。
酒飲み話にしても面白い。
三つ目は、
多分いちばん厄介なやつで、
「自分もいつか
そっち側に行きたい」
という願望だ。
金持ちを批判するより、
金持ちの理屈に乗っかって
「なるほど、
VIPってすごいんだな」
と感心する方が、
心理的には自分が
その世界に近づいたような気になれる。
庶民の立場から
金持ちを妬むより、
金持ちの視点を借りて
自分を賢く見せる方が、
居心地がいいのかもしれない。
「8割です」と
具体的な数字を出されると、
なんだか科学的な根拠があるように
聞こえてしまう。
ビジネスの裏側を
知ったような気持ちになれるし、
そうやって素直に
物語を信じられる人が、
その勢いのまま成功することも
あるのかもしれない。
ただ、実際に
人より抜きん出ていた人たちというのは、
素直にこういうことを信じて
努力した人たちもいなくはないと思うが、
いちいち偉い人の言うことを鵜呑みにせず、
「自分の頭で考える人」か、
『大衆が信じやすい
こういう「わかりやすい物語」を
自分のビジネスのために利用すること』
に罪悪感がない人か、
だいたい、
そのどちらかかな、
って思ったけど、
そこにはデータはない。
私の肌感ね。
はじめてビジネスクラスに乗った人が
嬉しそうにこの話を投稿してて、
その純粋さを可愛らしく
よかったね、と言う気持ちになりつつも、
待って!
それおかしくない?
って言いたくなっちゃう私なのよね。
まだコロラドにいます。
例の自称大作(笑)は
できてなくてこれからよ。
待っててね。
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時々お返事しています。
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