わがお散歩仲間の毒舌夫人に
夕食会に招かれました。
毒舌夫人は
『悲しみを調理で癒す』派
だそうです。
毒舌夫人の古くからの
ご友人もいらっしゃるというので
粗相のないようおめかしなどして、
あとほら、こちらのこういう
パーティー文化では
当たり障りのない『話題』を
準備していくのが
マナーではないですか。
私は例の『森で迷って
気がついたら
今回披露させていただき
それなりに好評を博したのですが、
夕食会に参加していたお客の一人が
「私は以前ファルカークに
住んでいたのだけれど、
あそこらへんがそんなに有名な
UFO目撃地域とは知らなかったよ」
「あ、そういうものですか?
ネットには『ファルカークの
三角地帯』とか
書いてあったんですけど」
するとここで毒舌夫人が
「あら、ファルカークの
UFOは有名よ。
私は若い頃『ファルカーク・
トライアングル』の端っこで
働いていたけど、夜とかよく
空にUFOが飛んでいたもの」
「・・・待って。奥様、待って。
今さりげなく
すごいことを告白なさった?」
「えっ・・・やだ、
Norizoはついこの間まで
都会に住んでいたから
知らないでしょうけど、
田舎に住んでいたら
UFOとか普通に目にするわよ」
いや、それは普通じゃない、と
その場にいた全員が奥様に反論、
しかし『ファルカークのUFO』が
一部で有名なのは事実らしく
「UFOを見るために3週間
ファルカークのホテルに
泊まりこんでいた人とかいたわよ。
ちなみにアメリカ人」
その米国人観光客氏は
昼間はずっと部屋で寝ていて
夕方になると起き出して来て
暗くなると外に出かけて
ひたすら夜空を眺めていたそうで
「私の知り合いに
趣味と実益を兼ねた釣り人がいて、
その人もよくUFOを見ていたのよ。
あそこらへん、見る人は
普通にそういうのを見るのよ。
で、その話をしたら
そのアメリカの
お客さんは大喜びしちゃって」
毒舌夫人は仲介の労を取り、
米国人UFO探索者は
凄腕の案内人を雇うことに成功、
案内人は案内人で
お小遣い稼ぎに成功、
双方大喜びの
マッチメイキングで
あったそうです。
なおこちらの米国人氏は
とうとうUFOには
邂逅できなかったらしいのですが、
その後毒舌夫人の職場では
時々話題に上る人気者となり
「その翌年あたりだったかしら、
私が当時采配していた食堂で
その話題になってね、わっと
お客様が盛り上がったところで
・・・食堂には南向きに
大きな窓があったんだけど、
その窓からね、その場にいた
全員が空を変な物体が
飛んでいるのを目にしたのよ」
その変な物体は光を発し、
空を真横に進んだかと思うと
垂直に下降、また横に進み
真っすぐ下に高度を下げ、
だんだんと奥様達の
窓に近づいてきて、
しかしある一点で突如
速度を上げて真上に移動を開始、
そのまま見えなくなったそうな。
「食堂には地元の人や
ロンドンから来た人、
アメリカ人とあと
ドイツ人もいたわね、
全員が同じものを見たわよ。
だから言ってるでしょ?
あそこらへんじゃUFOは
別に珍しくないのよ」
ちなみに奥様の考え方としては
「UFOは普通に空を飛んでいる」
ものではあるけれども
ファルカークで目撃情報が多いのは
「あそこは港湾産業都市
グレンジマウスが近いでしょ?
グレンジマウスは夜になっても
灯りを落とさない場所だから。
余剰ガスを焼却する炎が
曇り空に反射して、それを
UFOと勘違いしたんじゃない?」
そんな理論派の毒舌夫人は
「ここらへんでも
時々UFOを見るわよ。
えっ、Norizoはまだ
見たことがないの?あなた
夜空を見上げる習慣がない人?」
・・・そう言われたら・・・
確かにそんな習慣はないかも・・・
己の生活習慣を
振り返っておりましたら
お客の一人が真面目な顔で
「しかしこれでNorizo君も
ここらでUFOを目撃したら
・・・それはもしかすると
ここらの地価を
上げるんじゃないかね?」
幽霊の出る物件は
売値が上がる国、それが英国。
「確かにそうですね!
『裏窓からUFOを目撃した
報告があります』の一文で
不動産価値は高まるかも!」
「きっとそういうのが好きな
アメリカ人のお金持ちが
別荘として買ってくれるわ!」
以来、意識的に
空を見上げている私です。
UFOよりも恐ろしいのは
生きている人間の金銭欲
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