以前どこかで
世界三大危険スポーツは
ラグビーと乗馬と
アメリカン・チアリーディング、と
聞いたことがあり、まあ
『危険』をどう定義するのか、
という話にもなるんですけど、
つまりこの3つは頸部に
深刻な損傷を負ってしまう
可能性が非常に高いという。
久々にラグビーを観ると
なるほどこれは
恐ろしい競技であるな、と
・・・あれ、無傷で試合を
終えている選手は
たぶん一人もいませんよね?
「衝撃を最小限に抑えるために
盾としての筋肉も
鍛えてはあるんだろうけど
加速のついた重量120キロに
密集状態で首を踏まれる
可能性がゼロではない時点で
洒落にならない競技だよなあ」
感嘆する私に横から夫(英国人)が
「踏まれるといえば先日
僕の父が牛に胸を踏まれましたよ」
「・・・そういえば数日前に
そういう電話をもらったよな、
あれちょっと待てよ・・・牛って
ラグビー選手より重いよな」
「そうですね、牛の
種類にもよりますけど
うちの父の飼育している牛は
小柄な雌でも
500キロはありますね」
「・・・500キロに胸を踏まれて、
で、お義父様はその後
大丈夫なんだっけ?」
「この間の電話では父も
踏まれた直後でとても不機嫌で
あんまり詳しく状況を
聞いていないんですが、
とりあえず内出血していなければ
命は助かる、みたい話らしいです」
「・・・もし内出血があったら?」
「命にかかわるそうです」
「頼むから今夜お義父様に
もう一度電話して
容体を確認してもらえるかな?」
結果、義父は現時点では
それなりに生活を
送れているらしいのですが、
そもそも何故牛に
胸を踏まれたのかというと、
ある日飼育している
牛のうちの1頭が
牧草地のすみっこに
2列に並べておいた乾草の
その『2列』の隙間に
入り込んでしまったそうで。
隙間の片側は大牛が堂々と
入場できる幅があるものの
反対側は先細りになっていて、
で、結果、牛は途中で
立ち往生してしまったらしいのです。
身動きが取れなくなって
狼狽する牛を見たわが義父は
「牛の正面、隙間の
先細りした方から
自分が入って行って
牛の鼻先で杖を振れば
牛は後退りするに違いない」と
杖を片手に牛に対峙したそうな。
最初のうちは義父の思惑通り
雌牛はおずおずと
後退したとのことですが
体の左右に
少し余裕が出たあたりで
この大牛500キロちゃんは
突然興奮・激高し、義父に対し
前脚で殴りかかろうとしたそうな。
しかし義父もそこは慣れたもの、
杖で身を守りつつ牛と距離を取り
・・・そこまでは問題はなかった、
しかし次の瞬間、牛は何を思ったか
その狭い隙間で斜め正面に大跳躍。
つまり義父の側面にあの巨体が
空から降ってくる形になり
・・・牛は枯草の列の片側に
頭と前脚を乗せた状態のまま
たけり狂って後脚でたたらを踏み、
で、その後脚の置かれた箇所が
仰向けに倒れ込んだわが義父の
胸部、肺と心臓のあたりであったと。
ドースドスドスと500キロの重みを
胸板ひとつで支えた義父はその時
「ああ、これが私の人生の
最期の30秒の経験か」と思い、
そして遠くから義父のことを
見守っていたわが義母も
「ああ、私、今、自分の夫の
最期の30秒を目撃しているわ」
と心から信じたそうでございます。
が、そこから何がどうなったのか
気がつけばわが義父は
その状況から逃れ出ることが
出来ていたらしいのですが
そして雌牛も無事『隙間』から
出ることが出来たらしいのですが
・・・えーと、どうしてわが義父は
結果『無傷』で済んだのかしら・・・?
いやなんか出血とか
ゼロだったらしいんですよ、
だからお医者も内出血を
懸念したみたいなんですが。
私、今度ジムに行ったら
真面目に
胸部の筋トレをするんだ・・・!
胸筋はね、やっぱり大事、
だって呼吸器と心臓を
あの筋肉が
守ってくれているんだよ・・・!
ともあれ義父は今も
「呼吸するたび胸が痛い」
「朝、布団から一人では
起き上がれない」らしいのですが
それ以外では特に普段と変わりなく
生活が送れていると
いうんだから恐ろしい。
いや、それで私が何を
申し上げたいかと言うとですね、
ラグビーもそりゃ
恐ろしいスポーツですけどね、
『牛飼い』もよく考えると
あれはかなり恐るべき職業ですよ。
義父が牛に怪我をさせられたのは
これが初めてじゃありませんし、
わが夫も若い頃に一度
雌牛に去勢されかけたと申しますし、
近所の牛飼い氏は興奮した牛に
前脚で蹴り下げられて蹄で
胸の下のところから
足首まで一直線に抉られて
大怪我をしましたし、
また別の牛飼い氏は
牛に突き飛ばされ
尻餅をついたところを
他の牛にさらに蹴り飛ばされ
6か月間超強力な痛み止めが
手放せない体になっていましたし
・・・言葉の通じる重量120キロと
道理の通じない500キロ、
夜道でばったり出会いたいのは
いったいどちらか、みたいな。
ともあれわが義父には
早いところ深呼吸が出来る体に
復活してもらいたいものでございます。
いや、かなり本気で
心配は心配なんですけど
「CTを撮りに救急病院に行け」
という医師の言葉を
「だって救急病院に行ったら
下手したら1日中待合室で
待たされるじゃないか」
とするっと無視した方のことを
心配するだけ無駄かしら、
みたいな気持ちもどこかにあり・・・
不自由な体で『普通に使える
お風呂がない生活』は大変だろう、
と思いつつも、いや待てよ、
それはあの方の自業自得、とも
考えてしまうこの己の心の黒さよ
まあ打撲の後は入浴を
控えたほうがいいとも言いますしね
あ、ところで本日
温室で採れたトマトがこちら
なんとハート型
牛にも人にもあまり踏まれず
生きていきたいものでございます
の1クリックを
↓
