わが夏場の主戦場、前庭における
草むしり闘争において
私の戦友が『シャベル』であることは
もう疑問の余地がないのですが
そうなると『メンドリ』の存在とは何なのか。
応援要員?
あ、友軍?
同盟国軍・・・みたいな?
そんなわけでシャベル片手に
庭にうずくまる私の隣には
今日もメンドリ白黒夫人がいるのです。
雄鶏閣下在位中は決して私の近くに
寄ってこなかった彼女ですが
(常に1メートルは距離があった)
寡婦となり考え方も変わったのでしょうか
それとも私を閣下に代わる
『ミミズ掘り出し要員』とでも
認定したのでしょうか
・・・私と彼女は今とても近しい関係です、
いや本当これは比喩ではなく物理的に。
昨日はクロスグリが育っている
区画の雑草を集中的に抜いたのですが、
あそこらの虫は
格別美味でもあったのでしょうか、
白黒夫人、文字通り私に密着。
どんな小さなミミズも見逃すまいと
シャベルを握る私の右手に
その頬を添えてスタンバイという感じ。
「そういう姿勢はは愛らしいし、
いじらしくもあるとは思うけどさ、
しかしちょっと危ないよ雌鶏ちゃん」
一応警告は発した私ですが
目先のミミズ欲には勝てないのか
それとも所詮人間の言葉はわからないのか
白黒夫人、完全に私の諫言を無視。
仕方ないので雌鶏に気を配りながら
シャベルを操っていた私ですが
ちょっと大きめの雑草(ドック、和名:スイバ)を
てこの原理を使って引き抜いた瞬間
・・・シャベルの刃の部分が雌鶏の
クチバシにあたってしまってですね。
声もなく後方に飛び退る白黒夫人と
まさかの事故に動きの止まる私。
「・・・ほら、言っただろう、危ないって!
地面からミミズが出てきたらちゃんと
君に渡しているんだから、何もそんなに
がっついて近づいてくる必要はないんだよ!」
気を取り直して雌鶏にそう語りかけたのですが
どうやらこれが白黒夫人のお気に召さなかったらしく
・・・彼女ったら私の前方0.5メートルのところに
直立不動で立ちはだかって、無言のまま
正面から私の顔を睨みあげてきたんです・・・!
「何だよ。そうだよ、最初からそれくらい
私から離れて立っていればよかったんだよ。
ニワトリにとってクチバシは命、万一あれで
欠けでもしたらどうするつもりだったのよ」
「・・・」
「・・・いや、だから欠けなくてよかったけど、
私はシャベルとか使うわけだからさ、危ないでしょ?
私だって気を付けているけど現場には常に
万が一の事故の危険性があるわけだしさ、
やっぱり君のほうも気を付けるべきだと思うのよ」
「・・・」
「いや、だからさ・・・わかったよ!
私が悪かったよ!ごめん!これから気を付けるから!
だからそう黙り込んで私を睨むのは止めてよ!」
私の謝罪を聞いて白黒夫人は気が済んだのか
私の手元からゆっくりと肘の近くに移動し
・・・うむ、そこならばシャベルの直撃はない。
君も君で防災意識に目覚めたと言うことか。
しかし雑草取りを再開しますと
やはりミミズには抗しがたい魅力があるのでしょう、
どんどん私の手元ににじり寄ってしまう白黒夫人。
「ちょっと。危ない。君は今シャベルの
真後ろに顔を出している、それは危ない」
そもそも地べたにしゃがみ込んでいる
私の膝と腕の間に入り込んでいること自体
ニワトリとしてちょっと危機感が無さ過ぎる。
というかメンドリのお尻に隠れて手元が見えず、
このままじゃ私、これ以上雑草を抜けないんですけど!
仕方ないので指で雌鶏の背中を突くも
白黒夫人としたら動じもせず。
仕方ないので結構強めに
指でその尾羽の付け根を押したら
白黒夫人は憤然たる抗議の声を上げて
私の腕の輪の中から飛び出し、
こちらの背後に回り込みました。
よしよし、これで明瞭な視界とともに
私は草むしりに集中できる、と
前傾姿勢をさらに低くしたところ
・・・完全に無防備な私の腰の部分に
白黒婦人たら5連続クチバシ突き攻撃
(突貫声・羽ばたき音つき)
(つまり完全に『懲罰』目的)。
「あたたたた!君ねえ!」
しかしこの暴力で彼女も気が済んだのか
そこからの我々はお互いに良い距離を保ちながら
合同雑草および虫除去作業に取り組んだのでした。
・・・本気でこれは我々の間に
友情が芽生え始めているのでしょうか。
拳で語り合うのは
男たちの特権ではなかったのか・・・!
まあこの場合はクチバシとシャベルで
語り合ってしまったかもしれないんですが
しかし案外メンドリというのは
気位が高くていらっしゃる
そんな白黒夫人に首を垂れつつも
よく太ったミミズが土中から現れると
こっそり埋め戻している私です
だって!ミミズは、益虫なのよ!
メンドリ派のあなたも
ミミズ派のあなたも
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