※文中に『尿』とか『氷嚢』とか
 そういう単語が出てきますご注意ください

※氷嚢・・・?


我が家に同居することになった羊たちは
経験と実績を誇る中年種牡羊、
お食事マナーがちょっと悪くても
(仰向けに寝っころがって首だけ捻って
近くの草を齧る)気にしない気にしない。

歩き方がちょっと不格好なのもですね、
これは職業病なんです、仕方ない。

『いい種牡羊』の条件の一つは
『生まれてくる仔羊の肉付きがいいこと』
なわけですが、それはつまり
種牡羊からの遺伝によるところが大きく、
つまり彼らは基本的に
そこらの一般的な牡羊よりも
格段に体格がいい。

そうした立派な体格を支えるのは足。
しかもさらに現場仕事(繁殖行動)の際は
その重めの体を後足だけで支えなくてはならない。

そりゃ膝に来ますって!

「身を犠牲にして働いた結果だ、
私はそうした勤労精神には敬意を払いたい」
「早く後足の状態がよくなるといいですよね」

彼らへの敬愛を込めてそんな会話を交わす
私と夫(英国人)の前で
羊たちは幸せそうに放尿を開始。

何見とん


うん、まあ・・・

生理的欲求は仕方ないよね・・・

「・・・お通じが順調なのはいいことだよ、なあ」
「君、自分に言い聞かせていますね」

しかしこういう時に
相手をじっと見つめるのも失礼かと
我々は静かにその場を離れて
切り株のそばに一頭きりで佇む
羊の様子を見に行ったところ
・・・羊は無心の表情で股間の氷嚢を
切り株に擦り付けておりましてね。

「・・・なんだかなあ、この子は別に
悪いことをやっているわけじゃないんだがなあ、
でも私はこれまでこういう生き物と
お近づきになったことがなくてなあ、
そういう意味でちょっと戸惑っている面はある」

いや、だって皆様、
近所から居候を預かることになったら
その居候が中年男で
食事を出したら立膝握り箸口開け食いで
ゴミをそこらへんに散らかして
縁側で悪気なく股間を掻きむしっていたら
それは・・・ちょっと・・・ってなるでしょ?

しかもこの羊たち・・・

なんだか加齢臭めいた香りがするんです・・・!

「あ、君も気が付きましたか?
この子たち、臭いますよね」

「羊ってこんな臭いがする生き物だったか?
一般的なフンの臭いとは違う臭いだろ、これ」

「僕が思うに、これは彼らの
フェロモン臭の一種ではないでしょうか」

うーむ、確かに彼らは職業的に
世間の娘羊にモテモテな立場。

そうするとこれはアレか、
家に帰るとだらしない中年男だが
一歩外に出ると仕事はできて
世間的な評価と異性人気が
非常に高いタイプという・・・

納得いかんな、それも・・・

「だってこの子たち、日本語で言えば
純粋に『おっさん』じゃないか」
「『オッサン』?」

「あ、ごめん、これは
あんまりよくない日本語だ。
君はこれまで聞いたこともないだろう。
忘れてくれたまえ」
「いえ、わかります。理解できます」

「え、誰かにそんなことを君は
日本で言われたことがあるのか」
「いえ、ないですけど、直感的にわかります」

「わかるのか?」
「つまり、マナーが悪くて、だらしなくて、
みっともない、いい年をした男のことでしょう?
それが『おっさん』という言葉の意味でしょう?」

「・・・うん、そうだな」
「なんて的確な意味と響きの言葉でしょう!
そう、僕らの放牧地にいるこの子たちは
『おっさん』、まごうことなき『おっさん』です!」

以来、わが夫は羊たちに対して
「おっさーん!」
と呼びかけるようになったのでした。

それも・・・どうなのか・・・


ちなみにその後夫に真顔で
「ところで僕も『おっさん』でしょうか」
と尋ねられてしまった私の心境を
200字以内で述べよ

いきなり何の試験ですか
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